メンタルヘルスの健康を、身体的な健康と同じように扱いたい。アメリカの高校生が法律を変えた。(フロントロウ編集部)

メンタルの健康が軽視される社会で高校生が動いた

 アメリカのオレゴン州で、病欠と同じようにメンタルヘルスでの休みを取る権利を学生に与えた法律が2019年に可決された。オレゴン州に続いて、11の州がそれに近い法律を可決し、4つの州が審議中となっている。オレゴン州でこの法律が制定されるように活動していたのが、ヘイリー・ハードキャッスル。現在はオレゴン大学に通う大学生で、当時は高校生だった。

 「メンタルの健康と身体的な健康を同じように扱いたいんです」

 そんな彼女の言葉は的を射ている。風邪をひいたり、ケガをしたりすれば、休みを取るのは当たり前。でもメンタルヘルスとなると、なぜか休みを取りづらく、深刻な状態になるまで休まない人は多い。ヘイリーはTEDxで、社会が抱える問題を分かりやすく指摘している。

 「心肺蘇生法を考えてみてください。もし心肺蘇生法をしなければならない状況になった時、何をすべきか少しは知っていますか?多くの人は“はい”と答えるでしょう。なぜなら、多くの学校や職場、はたまたオンラインで心肺蘇生法の訓練は受けるからです。では、メンタルヘルスのケアはどうでしょうか?私は7年生の頃に保健の授業で心肺蘇生法を訓練しました。7年生の頃に、もしメンタルヘルスの扱い方や、他の人のメンテナンスの問題にどう対処するかを訓練できていたら?」

 メンタルヘルスの問題は、差別や格差といった社会問題が原因であることも多く、その場合は社会を変えるために行動していかなければ根本的な解決には繋がらない。でも、闘うなかでこそメンタルヘルスのケアは必要なうえ、人間関係といった普遍的な問題は誰しもが抱えるもの。

 なのになぜ、私たちはメンタルヘルスのケアの仕方を知らないのだろう? 

母から娘へ、そして娘から社会へ

 ヘイリーが自分のメンタルヘルスと向き合うことになったのは、6歳で受けた性的虐待が原因だった。様々な場面でパニック発作や不安感に悩む彼女を見て、母親のサラはあるシステムを導入。それは、各学期中に3日までのメンタルヘルスデーという休みを取れるというもの。ヘイリーは米Peopleのインタビューで、休みを取れるということだけでなく、母親に相談できる環境というのが助けになったと語る。

 ヘイリーとサラ。

 幼い頃からメンタルヘルスの問題について話しあってきた彼女は、高校生の頃には自分のメンタルヘルスとの付き合い方は分かるようになっていたそう。しかし一方で、中学校以上の環境では、他の生徒たちがメンタルヘルスの問題を抱えるようになり、自殺という問題も出てくるようになっていった。そのためヘイリーは他の生徒たちに、自分が母親と決めたメンタルヘルスデーについて伝え始め、そのなかで、それを法律にしようと行動を起こすことに。

 身体的・精神的に関係なく勝手に休めば良いと考える人、メンタルヘルスが休む理由だと言いづらいという人もいるだろう。しかし、言いづらいという時点でスティグマがあり、メンタルヘルスデーはそれを緩和していけるかもしれないこと、理由が明確になることで生徒には助けが必要だと分かることなどは、考えたい点。

 ヘイリーがTEDxで話したところによると、メンタルヘルスデーがあることによって、学校が生徒のメンタルヘルス休暇数を記録に残すことができ、休みが多い生徒にはスクールカウンセラーと話す機会が与えられる。また、1つの学校でメンタルヘルスデーを取る生徒が多ければ、より大きな対策が可能になることもあるはず。

 メンタルヘルスの問題に取り組む若い世代は多く、シンガーのダヴ・キャメロンもその1人。ダヴは、メンタルヘルスについて話せるようにはなっているものの、結局だからと言って休みが取れやすいといったことにはなっていないと指摘していた。そういった現状を考えると、ヘイリーの取り組みは10代の学校生活で適用されるものだが、それでも大きなもの。

 国立成育医療研究センターが子ども924人と保護者3,705人の計4,629人を対象に行なった「コロナ×こどもアンケート」の第4回調査では、中等度以上のうつ症状がある割合が、高校生で30%、中学生で24%、小学4~6年生で15%にのぼった。

 メンタルヘルスの健康に取り組むには、様々な方法があるが、若い世代がより生きやすい社会を作っていっていることは希望。

(フロントロウ編集部)

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