【記録】『ルネッサンス』が達成した「史上初」や「1位」
ビヨンセの6年ぶり・7枚目のアルバム『ルネッサンス』が発売された7月29日、世界は“ビヨンセ祭り”となった。ツイッターではこの日、「Beyonce」が世界で最もツイートされた言葉となり、「Beyonce」と「RENAISSANCE」が最も長くトレンド入りした言葉の1位、2位に。Spotifyではビヨンセのキャリア最速で2億回再生を突破したアルバムとなり、米アルバムチャートでは史上初めて7作連続で初登場1位を獲得した女性アーティストとなった。合計13か国で初登場1位となった『ルネッサンス』は、すでにアメリカで2022年の女性アーティスト最高のセールスを達成している。
【テーマ】『ルネッサンス』はクィア・コミュニティと70年代へのラブレター
アルバムアートでは70年代のディスコカルチャーに影響を受けたファッションを披露しており、こちらは、有名クラブ「スタジオ 54」にインスパイアされた、Giannina Azarによるカスタムルック。©Giannina Azar
ビヨンセは『ルネッサンス』で、オーディエンスを70年代のクラブカルチャーにタイムスリップさせる。アルバムを通してセレブレートされるのは、自己愛、解放と自由、セックス、不屈の精神といった、当時のクラブに充満していた独特のエネルギー。ハウスミュージックを基盤とした全16曲はシームレスに繋がっており、オーディエンスは“クラブ・ビヨンセ”へと吸い込まれ、約1時間後に聴き終わったときにはビヨンセが放つエネルギーを全身にまとったかのような光悦とした体験ができる。「私の目的は、安全で、裁きとは無縁の、完璧主義ではない、考えすぎることのない場所を作ることだった。大声で叫び、解放され、自由を感じる場所」とするビヨンセ。このアルバムは、約3年に及ぶコロナ禍に加え、人権や環境が侵されるニュースの連続でストレス過多になっている私たちに贈られた音楽セラピーなのだろう。
原石の発掘も続けるビヨンセ。このボディスーツをデザインした豪デザイナーのBethany Cordwellは、起用をきっかけに世界各国のVogue誌に掲載されている。©Bethany Cordwell
そしてこのアルバムは、黒人LGBTQ+コミュニティへのラブレターでもある。ゲイ男性は70年代のディスコやダンスミュージック・シーンの中心的存在だった。とくに、ハウスミュージックは70年代のアンダーグラウンドなクラブシーンで誕生したと言われており、その中心にいたのが、社会での差別・偏見がゆえにアンダーグラウンドのクラブに集まり愛や自由を謳歌していた黒人のゲイアイコンたち。ビヨンセ自身、ゲイ男性でありエイズ危機のさなかに亡くなった“叔父のジョニー（※）”こそ「このアルバムのインスピレーションとなる多くの音楽と文化に触れるきっかけをくれた人」だとしており、「長い間その貢献が認識されなかった、今はもういない仲間たち。これはあなたたちのための祝典よ」と、社会や文化への貢献が見過ごされてきた黒人クィア・アイコンたちを本作でトリビュートしている。
「（ジョニー叔父さんは）自分の真実を生きた人でした。この国が寛容ではなかった時代に、勇敢に、そして堂々とした態度でいたのです。彼のHIVとの闘いを目の当たりにしたことは、私がこれまで生きてきた中で最も辛い経験の一つでした。彼の闘病が、他の若者たちがより自由に生きるための道を開く一助となったことを、私は願っています。LGBTQIAの権利は人権です」―ビヨンセ、2019年に夫のジェイ・Zと共にGLAAD（中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟）から特別賞を贈られたときのスピーチより。母がレズビアンであるジェイと共に、LGBTQ+の権利活動への貢献が認められた。
※実際は「いとこ」という関係だが、ビヨンセは以前から「Uncle（叔父）」と呼んでいる。
【注目曲】全16曲のうち、人気スターのお気に入り曲はどれ？
セレブ界にも“信者”が多いビヨンセだけに、トップアーティストたちも『ルネッサンス』はチェック済み。そんな人気スターたちが、SNSにわざわざ投稿するほど気に入った曲はどれ？
オバマ元米大統領夫妻のお気に入り
「ブレイク・マイ・ソウル」
ストレスや怒りや責任をすべて「手放して、解放して」とアルバムのメッセージを幕開けた先行シングルは、バラク・オバマ元米大統領が夏のプレイリストに選曲し、ミシェル・オバマ元大統領夫人も「これは私たちが今必要としている曲。聴きながら一緒に踊ったり歌ったりせずにはいられない」とツイッターで称えた曲。
Spotifyでは2022年に1日で最も聞かれたシングルに認定され、この曲で、20曲の全米シングル・チャートTOP10入りを果たした歴代3番目のソロ・アーティストとなったビヨンセ。リミックス版「ブレイク・マイ・ソウル（ザ・クイーン・リミックス）」ではクィアアイコンであるマドンナと初コラボ。LGBTQ+コミュニティへのトリビュート精神をここでも色濃く出しながら、同時に、総勢20名以上の黒人アーティストの名前をシャウトして女性たちとの連帯を示した。
ブルーノ・マーズのお気に入り
「カフ・イット」
ビヨンセが米Rolling Stone誌に“現存する最高のエンターテイナー”と認定されたことに同意するように、それに関するツイートをインスタグラム・ストーリーで引用し、「ビヨンセ、『ルネッサンス』のリリースおめでとう」と祝福したブルーノ・マーズ。その時に彼がBGMとして選曲したのが、解放的なセックスを高らかにセレブレートするこの曲。
レディー・ガガ、リル・ナズ・Xのお気に入り
「エイリアン・スーパースター」
先行シングル「ブレイク・マイ・ソウル」をリリース後すぐにSNS投稿のBGMに使用するなど、クイーン・ビーへの支持をはっきりと表明していたレディー・ガガ。アルバム解禁後には、「エイリアン・スーパースター」を使用したTikTok投稿のコメント欄に「大好き」と書き込んでいた。一方、『ルネッサンス』は「僕の人生を変えた」と投稿したリル・ナズ・Xは、「ヒーティッド」「オール・アップ・イン・ユア・マインド」「チャーチ・ガール」などをお気に入り曲と挙げるなかで、「『エイリアン・スーパースター』はクレイジーすぎる。（やばすぎて）彼女は相当長いあいだ刑務所に入れられるべきだよ」と冗談交じりにコメントした。
カニエ・ウェストのお気に入り
「チャーチ・ガール 」
カニエ・ウェストが「ビヨンセのアルバムのなかで一番好きな曲」と言って公開したのが、『ルネッサンス』のなかでも、バウンシーなゴスペル調R&Bという異色のスタイルを持つ曲「チャーチ・ガール」。翌朝には教会に行く予定のグッドガールたちに、すべてを解放して踊りましょうとビヨンセが号令をかけるこの曲。カニエは相当好きなようで、ストーリーではなく本投稿で紹介していた。
ヘイリー・ビーバーのお気に入り
「エナジー feat. ビーム 」
ビヨンセのブランドの広告塔に起用されたり、誕生日にはビヨンセからお祝いメッセージをもらったりと、ビヨンセと仲良しなヘイリー・ビーバーは、バウンス界の人気LGBTQ+ラッパー、ビッグ・フリーディアが“Energy”と繰り返す「エナジー feat. ビーム」を聴いていることをインスタグラム・ストーリーで公開。ドナルド・トランプ氏を第45代大統領の座から引きずりおろそうと歌う「Votin' out 45」や、白人を中心としたトランプ支持者による2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を揶揄した「Karens just turned into terrorists」といった歌詞が登場する、『ルネッサンス』で最も政治色が強い曲。
【予想】『ルネッサンス』にはビジュアル・サプライズが待っている？
過去2作のアルバム『レモネード』と『ビヨンセ』はビジュアルアルバムだったが、『ルネッサンス』では逆に、“音楽だけをピュアに楽しんでほしい”という思いから、ミュージックビデオは未だに1本も発表されていない。
8月13日には「アイム・ザット・ガール 」のティザー映像が公開されたが、映像内でビヨンセが着ているルックが、アルバム解禁と共に公開された写真でビヨンセが身に着けているルックの一部であることから、すでに公開されている写真は、これから解禁されるビジュアル映像からのカットとうことなのでは。つまり、ビヨンセのルネッサンス時代はこれから繁栄期を迎える予感がする。日本盤は9月14日よりリリースされている。
また、10月1日（土）からは、暗闇フィットネス®のパイオニア「FEELCYCLE（フィールサイクル）」を運営する株式会社FEEL CONNECTIONとコラボレーションした、ビヨンセのスペシャルプログラムがスタートすることが決定！ 今作『ルネッサンス』に収録された楽曲を中心に構成されたスペシャルプログラムとなっており、本日からコラボレーションプレイリストが公開中。また、自宅でもFEELCYCLEのレッスンを楽しめる、オンラインフィットネスのFEEL ANYWHEREでも、同時にレッスン提供を開始する。
＜リリース情報＞
アルバム『 RENAISSANCE｜ルネッサンス』
国内盤 発売中（9月14日発売）
SICP-6483 価格：2,500円（税抜）｜2,750円（税込）
全16曲収録、紙ジャケット仕様、28Pブックレット、両面ポスター
【日本限定】作品解説、楽曲解説、ビヨンセのメッセージ訳、歌詞・対訳
【初回仕様限定特典】アルバム・ジャケット写真絵柄＜マウスパッド・ステッカー＞封入
音源再生・購入リンク：https://smji.lnk.to/BeyonceRenaissanceFT
【収録曲】
１．I’M THAT GIRL｜アイム・ザット・ガール
２．COZY｜コージー
３．ALIEN SUPERSTAR｜エイリアン・スーパースター
４．CUFF IT｜カフ・イット
５．ENERGY feat. Beam｜エナジー feat. ビーム
６．BREAK MY SOUL｜ブレイク・マイ・ソウル
７．CHURCH GIRL｜チャーチ・ガール
８．PLASTIC OFF THE SOFA｜プラスティック・オフ・ザ・ソファ
９．VIGRO’S GROOVE｜ヴァーゴーズ・グルーヴ
１０．MOVE feat. Grace Jones, Tems｜ムーヴ feat. グレイス・ジョーンズ,Tems
１１．HEATED｜ヒーティッド
１２．THIQUE｜シック
１３．ALL UP IN YOUR MIND｜オール・アップ・イン・ユア・マインド
１４．AMERICA HAS A PROBLEM｜アメリカ・ハズ・ア・プロブレム
１５．PURE/HONEY｜ピュア/ハニー
１６．SUMMER RENAISSANCE｜サマー・ルネッサンス
【FEELCYCLE：Beyoncé（ビヨンセ）スペシャルプログラム概要】
レッスン名：BB2 BEYONCÉ
レッスン予約開始日時：2022年9月16日（金）20時頃
レッスン提供期間：2022年10月1日（土）～11月30日（水）
特設サイト：https://www.feelcycle.com/collaboration/Beyonce/
Apple Musicプレイリスト：https://music.apple.com/jp/playlist/bb2-beyonce/pl.484bc55e932943bfaacec54098b45bbb
（フロントロウ編集部）
