子役出身であるスカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマンは、ともに性的な視線を向けられるという経験をしてきた。そして、その環境で自分を守るためにスカーレットは軽い女の子のフリ、ナタリーは堅物のフリを選んだ。(フロントロウ編集部)

同じ経験を共有、スカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマン

 9歳(※)でスクリーンデビューし、これまでに『真珠の耳飾りの少女』や『マリッジ・ストーリー』、『ブラック・ウィドウ』など数多くのヒット作に出演してきたスカーレット・ヨハンソン。ソフィア・コッポラ監督による東京を舞台にした2003年の映画『ロスト・イン・トランスレーション』では、アンニュイでどこか大人な雰囲気があったが、撮影時にはまだ17歳だった。
 ※スカーレットによると、撮影時は7歳。

画像: ©FOCUS FEATURES / SATO, YOSHIO

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 だからこそ、幼い頃から性的な視線を向けられることがあったという。これは、子役としてデビューした女性俳優たちの多くが声をあげてきたこと。米ポッドキャスト番組『Armchair Expert』に出演したスカーレットによると、「みんな私が(実年齢より)年上だと思ってたし、俳優歴も長かったから、変なハイパーセクシャライゼーション(※)の対象に分類されてしまった」という。
 ※誰かを性的なモノとして描くこと。女性・少女が対象となることが主。

 最近ではしっかりした/強い/自立した女性というイメージがあるスカーレットだが、昔は“セックスシンボル”として扱われ、エレベーターの中でセックスしたという嘘が拡散されたこともある。幼い頃から大人に囲まれて育つなかで、母親は彼女を「守ることがとても上手だった」が、「すべての物事でそうできるわけではなかった」という。

 そんなスカーレットは、2008年の映画『ブーリン家の姉妹』で共演したナタリー・ポートマンと、その経験を通して思いをシェアしていたそう。ナタリーは、彼女が13歳の頃に公開された映画『レオン』によって、子どもであるにもかかわらず性的な視線を向けられた苦悩をたびたび口にしている。

 スカーレットは、「ナタリーもそれは自分を傷つけたと言ってました。自分はそういうタイプじゃないからって。彼女は気取ってもいないし、堅物でもなかった」と語った。

画像: 2019年に再会したスカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマン。

2019年に再会したスカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマン。

スカーレットは軽い女の子のフリ、ナタリーは堅物のフリを選んだ

 そして、同じ経験をした女性2人がその後、環境を生き抜くうえで逆の選択をしたことは興味深く、多くの少女や女性が理解し、共感できることでもある。2018年のウィメンズ・マーチでは、スカーレットもナタリーも、ゲストとしてスピーチ

画像1: スカーレットは軽い女の子のフリ、ナタリーは堅物のフリを選んだ

 スカーレットはそこで、「力関係が片方(男性側)に非常に傾いている関係性は、私生活でも、キャリアの場でも多く経験してきました」と話し、人生で「めんどくさくない女の子」を演じてきたと語っている。

 「気がねなく一緒に過ごせる“めんどくさくない女の子”だという物語を作り出さなくてはいけませんでした。それは、時には自分が正しいと思うことを妥協しなくてはいけないということでした。そして(当時は)自分自身にもそれが大丈夫なことに思えていました。相手が意図的だったかどうかは別として、自分の意見を妥協し、自分自身を見えなくし、劣っている者としていたんです」

画像2: スカーレットは軽い女の子のフリ、ナタリーは堅物のフリを選んだ

 一方のナタリーは、13歳で経験したことについて、「ドキドキしながら開けた初めてのファンレターには、男性のレイプの空想が書かれていました。あるラジオ局では、私と合法的に性向ができる年として、私の18歳の誕生日へのカウントダウンを始めました。ある映画評論家は、レビューで私の『大きくなり始めた胸』について書きました」と辛い告白。続けて、「自分が少しでもセクシャルの部分を見せれば、安全ではなくなり、男性が私の体について物かのように話してもいいと思ってしまう。13歳の私がそれに気づくのに時間はかかりませんでした」と話し、その環境で闘ってきたため、自分には「お堅い女」のイメージがついたと語った

 「自分の体を守り、意見を聞いてもらいたいと思ってした選択のおかげで、私は、お堅い女、古風で、オタクっぽくてマジメすぎるというイメージをつけられてしまいました」

 男性社会で上手く生きているようにも見えたであろう「めんどくさくない女の子」。男性社会で自分を守った「お堅い女」。そう生きざるをえなかった2人が、元々は同じ経験からその選択をしていた。2人の姿からは、女性たちが生きるこの社会を考えされられる。さらに、その2人が現在フェミニストとして女性の人権のために熱心に声をあげている2人であることには心が動かされる。

 スカーレットは、現在は若手女性俳優たちの環境が改善されていると感じているようで、ポッドキャスト番組で「20代の若い俳優たちを見ていると、私たちとは異なることがさせてもらえていると感じます。俳優をジャンル分けすることすら、もう許されていない」と話した。

(フロントロウ編集部)

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