取材のハイライト
- 他人に聴かせていいのかというほどパーソナルなアルバム
- 父親との思い出
- 自分を気づかってくれる“チームメイト”との出会い
- 乗馬セラピーと会話が助けになっている
- お気に入り&おソロいのタトゥーを公開
- 宮崎駿監督との対面が強く記憶に残っている
- 来日する場合は同伴したい兄弟がいる
―アルバム『ザ・ハーデスト・パート』について教えてください
ノア:すごくパーソナルなアルバム。聴いてもらったら、本当は他人に聴かせるはずではなくて、私が私のためだけに作ったアルバムではないのかと思う。音楽的にも、歌詞的にも、感情的にも、精神的にも、私の魂が入っている作品なの。
このアルバムの曲をパフォーマンスするのは驚きの連続。だって、たくさんの人が“I Burned LA Down”や“Mr. Percocet”や” Ready to Go”といった曲を知っていて共感してくれているのだから。あまりにパーソナルな作品すぎて共感してもらえないんじゃないかと思ったこともあるけど、みんながアルバムとつながりを感じてくれていることで、私自身、自分の声を聞いてもらえて、独りじゃないと思わされている。
- 「I Burned LA Down」—リードシングル。温暖化が起因となりカリフォルニア州で起きた大規模な山火事を、破局の哀しみと重ねた曲。
- 「Mr. Percocet」—セカンドシングル。薬物乱用が原因の精神不安や混乱が、自分や他人との関係に与えている様子を歌った曲。
- 「Ready to Go」—サードシングル。相手に溺れるほど夢中になってしまっている時に、いかに関係を手放すことが難しいかを歌った曲。
―『ザ・ハーデスト・パート』はいつどのように制作が始まったのでしょう? 方向性に自信が持てた曲はありますか?
ノア:何年もかけて書き溜めた曲があったから、音調が異なる曲をひとつにまとめてくれる人が必要だったの。そこで話に行った相手が、以前から私がファンだったマイク・クロッシー。実際に会ってみたらすぐに意気投合できた。彼が最初に強く共感してくれたのが、“Noah (Stand Still)”だったの。だからアルバムのプロダクションはこの曲から始まって、この曲が持つオーガニックなサウンドでいくことになったの。
そして、アルバムが完成したと感じた曲が“I Burned LA Down”。ストーリー、プロダクション、歌詞のビジュアルと、ソングライターとして誇りに思える部分がたくさんある曲で、聴いたときに、アルバムや音の方向性に自信が持てた。すごくワクワクしたし、ほかの曲への刺激を書き立ててくれる曲でもあったよ。
- 「Noah (Stand Still)」— “行き先を見失ってしまったら立ち止まれ”という家訓がもとになった曲。父ビリー・レイ・サイラスをフィーチャリングしたバージョンも発表している。
―「Noah (Stand Still)」をはじめ、アルバムにはお父さんのビリー・レイ・サイラスの存在が感じられますよね。
ノア:私をはじめ兄弟全員が父の影響で音楽と触れている。私のお気に入りの曲は今でも、私が幼いころに父が車でかけていた曲だし、記憶がある中で最初に覚えている曲は(父がかけていた)テリー・ジャックスの「シーズン・イン・ザ・サン」。それに加え、親としても、友人としても、私に強く与えてくれていて、このアルバムでも多くのインスピレーションになっている。“Noah (Stand Still)”はナッシュビルの丘での父との会話がもとになっているし、”The Hardest Part”は2019年か2020年に父と一緒に過ごした日がもとになっている。このアルバムには、父との深い思い出があこちこに散りばめられているの。
- 「Hardest Part」—「家に帰って一番つらいのは/年を取ったと実感すること」と、懐かしい頃からはずいぶん遠い場所まで来たことを歌った曲。
―非常にパーソナルなアルバムなだけに、歌うのが難しい曲はあるのでしょうか?
ノア:聴くのが一番つらいのは"My Side of the Bed"。ある人とのすごく特定のある瞬間が歌われていることに加えて、ちょうどこの頃は、人生において一番つらい時期だった。でも同時に、すごくすごく恋をしていた時期でもあるの。この曲を聴くと、まるでタイムマシーンに乗ったかのようにその瞬間に連れ戻される。
- 「My Side of the Bed」—愛する人との間の溝を感じ、相手が自分のもとを去るだろうという悲しみを歌った曲。
―パーソナルな問題から立ち直るうえで現在のマネージャーが大きな役割を果たしたと最近おっしゃっていましたが、どのような面で助けられたのでしょうか?
ノア:キャリアにおいてはじめて、私をアーティストとしてだけでなく、ひとりの人間として気にかけてくれる人に出会えたの。(新しいマネージャーは)私が作りたい音楽を作れて、なりたい自分になれるように、安全な場所を用意してくれる。自分の納得する条件のもと自分の音楽を世に送り出し、自分の運命を支配できるように手助けしてくれる。私の人間性を変えようとしないし、私が薬物乱用とうつ病の過去を持つことを理解してくれている。そういったことを考慮したうえでメンタルヘルスに気を配ってくれる人にはなかなか出会えない。アーティストとしての私、そして人間としての私を支えるための努力と愛情と心遣いにすごく感謝している。私たちはチームメイトであるということが強く実感できている。
―メンタルヘルスを整えるためにファンに勧めることはありますか?
ノア:アウトプットができるなら何でもいいと思う。セラピーは良いけど場合によっては高いでしょ。悩みに適したリソースもあるかもしれないから、ネットで検索してみて。とにかく、助けを得て、会話をするところから始めるのをお勧めする。胸にしまい込んだものを打ち明けて、体や頭の中から解放して、感情をアウトプットする方法を模索すると良いと思う。
―音楽以外ですと、どのようなことに情熱を捧げていますか?
ノア:昔から乗馬が私のパッション。時間があるときはよく馬と過ごしている。祖父がよく言っていたの。『外に出て馬に乗ることは人間を内から癒す』とね。Equine Therapy(馬セラピー)の分野での活動にはすごく感銘している。馬は癒しの動物だと信じているし、私にとってはずっとそういう存在だった。だから、外に出て馬に乗ることは私の情熱のひとつだね。あと、情熱というのはおかしいけど、セラピーにもしっかり取り組んでいるよ。馬と触れ合うことと合わせて、健康でいるよう心がけているの。
―ちなみに、タトゥーがたくさん見えていますがすごくかわいいですね。何個くらい入っているんですか?
ノア:すごくたくさん! お気に入りは、オーヴィル・ペックのタトゥーだよ。私の親友のカントリーアーティストなの。あとは、父との曲名である“stand still”というタトゥーがここに入っている。父にも同じタトゥーが入っているんだよ。
―ノアさんと日本と言えば、やはりジブリ映画『崖の上のポニョ』でポニョ役の英語声優を務めたことがありますが、当時のことは覚えていますか?
ノア:覚えている! レッドカーペットで宮崎(駿)監督に会って写真を撮ったのが一番強い記憶として残っている。映画に関われてすごくワクワクしたのを覚えているんだけど、正直言うと、当時は8歳か9歳くらいで、ポニョという役の偉大さを十分理解できていなかった。その後、ジブリ映画を色々と見て大ファンになったから、逆に今の方がこの話題は興奮する(笑)。ポニョは海水面の上昇とか、背景にある話もいいよね。そういうことも当時は理解していなかった。でもとにかくあの映画は本当に素晴らしくてビューティフルな映画で、大好きすぎる。
―ほかに声優を務めてみたい作品はありますか? そもそもアニメは観ますか?
ノア:私はアニメガールだよ! とくにこれがお気に入りってのはないんだけど、音楽を作るときにアニメを流しておくのが好きなの。アニメはすごくアーティスティックで、色彩とか景観が本当に美しいと思う。アニメのシュールレアリズム(超現実主義)的なところも好き。すごくインスパイアされるから、音楽を作るときと相性が良いの。
―ノアさんは来日したことがないですが、ノアさんをはじめサイラス家は日本でも有名なので、未だに来日していないことは意外です。
ノア:(兄の)トレイスがメトロ・ステーションとして来日したことなかったっけ? トレイスはいつもツアーに出ているんだけど、確か前に日本に行っていた気がする(※2009年に来日公演を行なっている)。でも、もし行ってなかったら、ぜひ私がサイラス家初の来日者になりたいな。(兄の)ブレイズンは日本が大好きなんだよ。日本で行きたい店や場所を決めていて、あと、日本のお菓子が箱いっぱいに入って毎月送られてくるサービスにも登録しているの。毎月、日本のポテトチップスとかスイーツが家に届くんだよ。だから彼には、私がもしツアーで日本に行けることがあったら、絶対一緒に行こうねって言ってる。本当に本当に行きたいらしいから、ぜひ実現したいね。
―サイラス家での来日、お待ちしています! 最後に、日本のファンにメッセージを頂けますか?
ノア:日本にすごくすごく行きたいです! ずっと長いことサポートしてくれてありがとう。ぜひ日本に行って、パフォーマンスしたいし、日本のファンに会って長年の応援に直接ありがとうを言いたいと思っている。
<作品情報>
Noah Cyrus|ノア・サイラス
デビューアルバム
『The Hardest Part | ザ・ハーデスト・パート』
発売中
全10曲収録
1. Noah (Stand Still) | ノア(スタンド・スティル)
2. Ready To Go | レディ・トゥ・ゴー
3. Mr. Percocet | ミスター・パーコセット
4. Every Beginning Ends (feat. Ben Gibbard) | エヴリ・ビギニング・エンズ(feat. ベンジャミン・ギバード)
5. Hardest Part | ハーデスト・パート
6. I Just Want A Lover | アイ・ジャスト・ウォント・ア・ラバー
7. Unfinished | アンフィニッシュド
8. My Side Of The Bed | マイ・サイド・オブ・ザ・ベッド
9. I Burned LA Down | アイ・バーンド・LA・ダウン」
10. Loretta’s Song | ロレッタズ・ソング