ドーム5公演を史上最速でソールドアウトさせたブルーノ・マーズの来日ドームツアーより、10月27日に東京ドームで行なわれた公演をレポート。(フロントロウ編集部)

ブルーノ・マーズが史上最速のソールドアウトを記録したドームツアーを日本で開催

 ブルーノ・マーズが、日本での自身初となるドームツアーで、史上最速でドーム5公演をソールドアウトさせるという偉業を成し遂げた。2021年からは主にアンダーソン・パークとのユニットであるシルク・ソニックとして活動し、ソロとしての新作のリリースはしばらくないブルーノだが、それでも、直前に緊急的に発表された5公演が瞬く間に完売。日本においていかにブルーノ・マーズというアーティストが愛されているかを実感できた出来事だった。

画像: 東京ドームの会場には、5ドームのソールドアウトをお祝いする「5 DOMES SOLD OUT!」のサイネージも。

東京ドームの会場には、5ドームのソールドアウトをお祝いする「5 DOMES SOLD OUT!」のサイネージも。

 ブルーノは2016年から継続して米ラスベガスにあるパークMGMなどで【Bruno Mars at Park MGM】と銘打った定期公演を行なっており、今年9月には会場をボストンにあるMGMミュージック・ホールに移して3公演を実施。その後、10月に入ってからオーストラリアでいくつか公演を行なった後で来日したのが、今回のドームツアーとなっている。

 ラスベガスというエンターテイメントの聖地を中心に気心の知れたバンドメンバーたちと共に公演を行ない続け、エンターテイナーとしての実力を磨いてきたブルーノ。間違いなく楽しいエンターテイメント・ショーになることは容易に想像できたが、4年ぶりに日本のステージに立ったブルーノのステージの楽しさは、その想像を優に超えていた。10月27日に開催された東京ドーム公演のレポートをお届けする。

「24K Magic」「Treasure」次々と披露される特大ヒット曲たち

 定刻を10分弱過ぎたところで客電が落ちて、「Tokyo。ブルーノ・マーズが着陸した」というアナウンスが流れ、バックスクリーンに映し出された黄金の王冠の下に、ハワイ出身らしくアロハシャツに身を包み、頭にはハチマキを巻いたブルーノが登場。東京ドームを埋め尽くした観客たちの大歓声に迎えられながら、セカンドアルバム『アンオーソドックス・ジュークボックス』より「Moonshine」からこの日のステージをスタートさせた。

 「着陸」というアナウンスは、「マーズ=火星(mars)」という本人のステージネームとかかっていると思われるが、だからこそ、“月明かり”を意味する「Moonshine」からスタートさせるのもブルーノらしい。「ハロー」という歌詞から始まるこの曲でブルーノは観客に挨拶をして、「また君に会えて嬉しいよ」というフレーズを何度も強調。集まった観客たちを自分の世界へと迎え入れた後で、ブルーとイエローのライトでステージをラグジュアリーな雰囲気に包んで披露したのは、こちらも月にまつわるフレーズが登場する「24K Magic」

画像1: 「24K Magic」「Treasure」次々と披露される特大ヒット曲たち

 2曲目に早くもブルーノを代表するアンセムが投下されると、もちろん、観客席からはシンガロングの合唱が聞こえるし、ブルーノは“ザ・フーリガンズ”という名称で知られる、バンドメンバーたちと横一列に並んでダンスする。そう、ブルーノのチームは本人だけでなく、全員が演奏して踊れる強力なエンターテイナー集団で構成されているのだ。最後には花火が何発も噴射されるなど、2曲目から惜しみなく披露されたド派手な演出で「24K Magic」を締め括ったブルーノは、ここで「こんにちは〜東京!」と日本語で挨拶。東京ドームでやるのが夢だったと告げて、東京ドームでの2日目となるこの日は「もっと賑やかにやりたいんだ」とブルーノ。「みんなダンスしてほしいんだ。今夜はできるかい?」と続けて、みんなで一緒に踊ってほしいと呼びかけた。

 ここからは、自然と手拍子が巻き起こった「Finesse」、東京ドームがこの日最初の大合唱に包まれることとなった「Treasure」、イントロから大歓声に迎えられた「Perm」という、アップテンポな曲の3連発。右から左へステージを移動しながら圧倒的なボーカルを聴かせ続け、バンドメンバーが本領を発揮する間奏パートではダンスも披露するブルーノのパフォーマンスは、1秒も観客を飽きさせる時間がない。何よりも印象的なのは、ブルーノがずっと少年のような満面の笑みで楽しそうにしているということ。生粋のエンターテイナーである彼は、人を楽しませることが大好きで仕方がないのだろう。そして、ブルーノ・マーズのステージを観客以上に誰よりも楽しんでいるのが、ブルーノその人なのだ。「Perm」の最後には、まるでそこが自分の居場所だと言わんばかりに、吸い寄せられるようにステージの中央に移動して、ムーンウォークを披露。自分も一緒になって楽しみながら、最後の最後まで観客を魅了した。

 続けて披露されたのは、ブルーノが築き上げたキャリアに思いを馳せずにはいられない、ブルーノがブレイクするきっかけの1つとなった、「億万長者になりたい」という夢を歌う、2010年リリースのトラヴィー・マッコイとの名曲「Billionaire」。この楽曲で歌っていた多くの夢をここまでの12年で叶えてしまったブルーノは、クライマックスで一度演奏を止めて、「愛してます」と日本語で観客に愛を囁く。演奏を再開したり、もう一度止めたりを繰り返しながら、焦らすようなパフォーマンスで観客と心を通わせた。

画像2: 「24K Magic」「Treasure」次々と披露される特大ヒット曲たち

 その後、歌詞をバックスクリーンに映しながら女性ボーカルとの掛け合いが披露される「Chunky」をパフォーマンスした後で、築き上げた富を自慢する「Thats What I Like」、グッチ・メイン&コダック・ブラックとのコラボ曲「Wake Up in The Sky」、観客への簡単なダンスの指導付きでカーディ・Bとの「Please Me」という、3曲のメドレーを披露。圧巻だったのは、シームレスに楽曲から楽曲へと繋がっていたこのパフォーマンスの最中に、ブルーノのダンスや歌唱、バンドメンバーの演奏はもちろんのこと、ブルーノ&バンド全員でのダンスも、一切乱れることなく見事に繋がっていたということ。彼ら全員がいかにこのパフォーマンスを磨いてきたが伝わってきた。

 3曲のメドレーを終えると、ブルーノは一度ステージから捌けて、日系のギタリストであるマテウス・アサトによるソロパフォーマンスへ。この日はマテウスのほかにも、ブルーノの実兄でもある、“E・パンダ”ことドラマーのエリック・ヘルナンデスによるソロセクション、ピアニストであるジョン・フォッシトによるソロセクションが設けられていたが、ザ・フーリガンズのメンバーたちに光を当てるこうした構成も、バンドを大切にするブルーノらしかった。

日本語のオリジナル曲「君をとても愛してる」を披露

 ショーは後半へ。ここで披露された「Versace On The Floor」では、自然発生的に観客がスマートフォンを取り出し、暗転したステージをライトで照らして、東京ドームには幻想的な光景が広がることとなった。この曲の前半はほとんどアカペラのような形で披露されたのだが、それはまさしく、ブルーノとファンが一緒になって作り上げたようなパフォーマンスとなった。

 「東京、調子はどうだい?」と、ここで改めてファンとコミュニケーションを取ったブルーノは、この日がツアーの4公演目であることを告げた上で、覚えた日本語だという「君をとても愛してる」という言葉を伝えて、ドヤ顔をこちらに向けてみせる。これだけでもファンを歓喜させるには十分だったが、究極のエンターテイナーであるブルーノは、それ以上のファンサービスをしてくれる。なんと、そのままバンドと一緒に即席の演奏に乗せて、「君をとても愛してる」と日本語で繰り返し歌う、オリジナルソングを作り上げてしまった。ここまでやられてしまうと、もう脱帽するしかない。

 そして、ブルーノのすごいところはオリジナルソング「君をとても愛してる」も完全にセットリストの世界観に則ったものになっていたという点で、このパフォーマンスに続いて披露されたのは、この2連発に盛り上がらないわけがない、プロポーズのアンセム「Marry You」だった。多幸感に溢れたアウトロでこの曲を締め括った後は、E・パンダによるドラムソロを経て、「Runaway Baby」へ。この楽曲では、「君たちが静かにするなら、僕らも静かにするよ」と観客に“忠告”したブルーノが、本当に演奏のボリュームを下げて、観客の歓声が大きくなるまでソロで踊り続けるというパフォーマンスも。楽しませることに余念がなさすぎる。どこまでもエンターテイナーなのだ。

画像: 日本語のオリジナル曲「君をとても愛してる」を披露

 続くセクションは、ブルーノによるピアノの弾き語りのパフォーマンス。もちろん、人を楽しませることが大好きなブルーノが、ピアノを弾きながら歌うという、シンプルなパフォーマンスに終始するわけがない。ここでは、ブルーノが過去に書いた楽曲を少しずつ披露して、それを観客が当てるというゲームが行なわれた。1曲目に披露された、シーロー・グリーンに提供した「F* *K YOU」から観客のシンガロングが巻き起こったのも、ブルーノがいかにずっと日本で愛されてきたかを表していたが、1曲目からすぐに観客が正解を出したことにブルーノはご満悦の様子。

 スヌープ・ドッグ&ウィズ・カリファとの「Young, Wild and Free」でも合唱を巻き起こした後で、このセクションの3曲目に披露したのは、なんと坂本九の名曲「上を向いて歩こう」。ここでブルーノは一度演奏を止めて、「冗談だよ!僕はこの曲は書いてない」とジョークを飛ばして、満面の笑みでダブルピースをしながら、「かわいい!かわいい!」「恥ずかしい!」と、日本語でお茶目な自分の可愛さをアピールしてみせる。客席のあちこちからも「可愛い〜」という声があがったのは言うまでもない。もちろん、ブルーノが可愛かったのはこの時だけではなく、彼はずっと可愛らしい笑顔で楽しそうにパフォーマンスしていたし、誰よりも楽しそうにしている彼を見ていると、こちらまで笑顔になれるのだ。

 このセクションはその後、ソロ曲「Talking To The Moon」、B.o.Bとの「Nothin' On You」、この日唯一披露されたシルク・ソニックの楽曲である「Leave the Door Open」で締め括られ、ゲームはもちろん観客の大勝利で幕を閉じた。

ダイアモンド認定された6曲すべてをパフォーマンス

 ピアノによる弾き語りで“バラードモード”となっていたブルーノが、「この曲は書くのが最も難しかった曲で、歌うことも難しかった曲なんだ」という曲紹介から披露した「When I Was Your Man」をしっとりと聴かせて、ジョン・フォッシトがピアノソロを披露した後で、ここからショーは怒涛のクライマックスへ。

画像: ダイアモンド認定された6曲すべてをパフォーマンス

 イントロからアウトロまでタイトル通りの炎がステージから上がりまくりだった、初期の名曲である「Grenade」を披露した後は、最後に天国を表現するかのような紙吹雪が舞い散ることになった「Locked Out Of Heaven」のパフォーマンスへ。当然のように大合唱を生み出した後で、本編を締めくくったのは、“そのままの君で美しい”と歌う至極のバラード「Just The Way You Are」。バンドと一列になってお辞儀をして、この日の公演を訪れてくれたオーディエンスに感謝を伝えたブルーノは、「君の顔を見た時に/僕が変えたいと思うところは何もない」という歌詞を体現するように、「明かりをつけてくれ。みんなの顔が見たいんだ」とお願い。集まったオーディエンスの1人1人の表情を確認しながら、「Just The Way You Are」のパフォーマンスを再開して、誰もが掛け替えのない存在だとメッセージを伝えた。

 一度ステージから捌けた後で、アンコールに披露されたのはマーク・ロンソンとの「Uptown Funk」だった。10月頭には、史上初めてアメリカレコード協会に6枚のシングルがダイアモンド認定されたアーティストとなったが、この日の公演ではその6曲すべて(「Just The Way You Are」、「Locked Out of Heaven」、「Uptown Funk」、「Grenade」、「When I Was Your Man」、「That’s What I Like」)が披露され、ブルーノにしかできないヒット曲満載のステージを披露してくれた。

 けれど、ブルーノであれば必ずしも世界有数のヒット曲たちに頼らなくとも、その圧倒的なパフォーマンス力をもって、どんなセットリストでも最高のショーを届けてくれたことだろう。それは、この日のハイライトの1つとなった、来日公演のために用意された即興の楽曲「君をとても愛してる」のパフォーマンスにも象徴されていたが、この日ずっと笑顔を絶やすことなく、常に歌って踊って人々を惹きつけ続けていたブルーノは何よりも、目の前にいる人たちを楽しませることを愛しているのだ。ブルーノ・マーズというアーティストほど、“エンターテイナー”という言葉が似合う人物は世界にも限られるはず。そしてそんなブルーノのパフォーマンスに、ザ・フーリガンズというすっかり気心の知れた仲間たちによる完全にシンクロした演奏とダンスが合わさった時、どこを切り取っても楽しさしかない、究極のエンターテイメント・ショーが出来上がるのだ。(フロントロウ編集部)

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