「ずっと私たちと一緒に暮らしていて、何の問題もなかった」
米テネシー州中央部に位置するモーリー群で月1で行なわれている評議員会で、公立図書館でのLGBTQ+に関連した本の所蔵や、郡内におけるLGBTQ+コミュニティに関するディスプレイについて議論が行なわれ、そこで、4人の子どもを育てる母親が“ブチギレスピーチ”を行ない、LGBTQ+の住民たちを擁護した。
この日は、評議員会でモーリー群の公立図書館の責任者であるザッカリー・フォックス氏の辞任が認められた日だった。フォックス氏は図書館でLGBTQ+コミュニティに関する本の展示を行なったことに対して保守派から強い反発があったため、プレッシャーを感じて辞任を決意。この件に関して住民の間で意見がぶつかりあったのだが、そのなかでとくに部屋から拍手喝采を受けたのが、4人の子どもを持つ母親ジェシー・グラハムさんがマイクを持ったとき。
グラハムさんは2022年からモーリー群の委員に就任したアーロン・ミラーの名前を出し、「ミラーがやってくるまでは、この町には、これほどくだらないホモフォビック(同性愛嫌悪)な動きはありませんでした。私はうんざりしています」とはじめたグラハムさんは、背後にいたLGBTQ+の住民を指さしてこう熱く語った。
「この人たちは今までずっと私たちと一緒に暮らしてきましたが、何の問題も起きたことはありませんでした。あの人(※ミラー委員)や彼の変な取り巻きが言うような、下品で不快なことは一度もしていません。
私はドラァグショーで性的暴行を受けたことはないですが、教会ではありますよ。2回も!そして教会の男性たちは、私に非があると言いました。
このシナリオは言論の自由があるアメリカ合衆国で止められるべきでしたが、そうはなりませんでした。皮肉なことに、彼(※ミラー委員)は私たちにその自由を保証する役割にある軍に所属していました。
彼は別の土地からここにやってきて、私たちが愛し、共感し、友と思い、一緒に働く(LBGTQ+)コミュニティは危険だと言うのです。そんなのでたらめです。彼らは何もしていないですし、子どもを守らなくてはいけないというキリスト教の奇妙で信心ぶった戯言を聞くのはもううんざりです。
イエス・キリストはどこかに出向いて人々を非難するようなことはしませんでした。ただそこに存在したい人間に、憎しみや嘘を吐いて、彼らを完全に抹殺するようなことは決してしませんでした。
私が育てた4人の子どもたちの誰かがこの(LGBTQ+)コミュニティの一員であるならば、彼らは(私の家庭に生まれたことが)幸運でしょう。なぜなら、自分の子どもを無条件に愛せる家族が少ないようですから。その(無条件で愛される)機会を子どもから奪うなんて、それは児童虐待です。自分の居場所がないと感じる子どもに、あなたはおかしいとすぐに言うこともそうです。コンバージョン・セラピーは児童虐待です。道徳心がなくても、(その行動が)他人を瞬時に傷つける場合は、それは間違っていると認識できるはずです。
では、なぜ私たちはここにいるのでしょうか?なぜヘイトを主張する機会を与えるのでしょうか?私は、食物連鎖のトップにいながら誰かに狙われているフリをしている異性愛者の白人のクリスチャンの男性にうんざりしています。アーロン(・ミラー)、彼ら(※LGBTQ+コミュニティの人々)はただ存在したいだけなのです。平和的に言います。彼らを放っておいて。以上です」
まさに“ブチギレ”と言えるパッションと共に、委員たちを叱責するようなトーンで行なわれたグラハムさんのスピーチは部屋の住民たちから拍手や歓声で迎えられたが、この時の動画がSNSに公開されると、瞬く間に拡散。スピーチはニュース番組にも取り上げられて全米で話題になり、ホワイトハウスの元報道官ジェン・サキが「ジェシー・グラハム、言ってやって」とツイートしたほか、俳優のソフィア・ブッシュが「このジェシーという女性は私のヒーロー。この!言葉!すべて!」とツイートするなど、著名人の間でも反響が大きい。
�� MUST-WATCH: “I’ve never been sexually assaulted at a drag show, but I have been at church. TWICE! The men told me it was MY fault.”
— The Tennessee Holler (@TheTNHoller) October 27, 2022
MAURY COUNTY library board - local mom rips homophobe County Commissioner Aaron Miller, whose ignorant hate chased out the library director� pic.twitter.com/D6HrzugANN
アメリカでは、多様性や、人種問題、権利の話を扱った一部の本を図書館や学校から取り除こうとする動きが保守派の間で活発だが、PEN Americaによると、2021年~2022年度の禁止本の41%以上が、LGBTQ+コミュニティの人々やクィアなテーマを扱った本だという。
こういったアクションを起こす保守派は、LGBTQ+に関する書籍の展示や所蔵は“子どもたちにジェンダーやセクシャリティの価値観を押しつけている”と主張している。そしてその結果、図書館に置く本をストレートのシスジェンダーの人々の本のみに限定しようとしている。どちらの方が価値観を“押しつけている”かは、今一度考えなおした方が良いかもしれない。
※アイキャッチ画像はイメージです。
(フロントロウ編集部)