『バビロン』のメロディを見つけるのに2年かかった
映画『バビロン』では1920年代のサイレント映画から1930年代のトーキー映画へと移ろうとするハリウッドを舞台に、豪華なファッション、ド派手なパーティー、熱狂的な音楽、美しさと欠点のあるキャラクターたちで、ハリウッドの光と闇を伝える。
“夢と音楽のエンタテイメント”と称されている『バビロン』の核となるメロディを見つけるのに要した時間は、なんと、約2年! そして繰り返すが、この2年はあくまで“核となるメロディ”を見つけるのにかかった時間。前述のように、この後にスコアを作っていくことになるので実際に音楽が完成するまではまだまだ時間がかかるということ。
ただチャゼル監督は、そこまで時間をかける理由があると念押しする。
「そこまですることで、ストーリーボード(※絵コンテ)を作っているときに音楽が助けになり、ショットリスト(※ワンシーンで起こるすべてのことを、映画の中の各ショットの説明によってマッピングした文書のこと)を作っているときに音楽が助けになり、リハーサルや撮影中も音楽が助けになる。(『バビロンの』)エディターのトム・クロスが最初の編集作業をしているときも音楽が助けになるのです」
ちなみに、『バビロン』では衣装、ヘアメイク、そして音楽でも、時代に忠実でありながら時代劇にはしないと誓っていたチャゼル監督。例えば『バビロン』のメインキャストに、20年代の作品では定番であるウェーブのかかったショートヘアの女性は登場しない。代わりに登場するのは、私たちが思う“20年代らしい”とは異なるが、実際には存在していたヘアスタイルをした女性たち。このように、音楽でも20年代の楽器で20年代とはギャップのある音楽を演奏する、というような“ハイブリッド音楽”を目指したという。
「モダンで古風で、異なる年代や文化の融合。時代に忠実ながらも、タイムレスでモダンでエキサイティングでアグレッシブで肉食的で映画を前へプッシュする力がある音楽」と監督が評する『バビロン』の音楽は、ジャズ、クラシック、ハウス・ミュージック、オペラ、ラテン、アフリカンなど、異文化の音楽のサーカスのような出来で、映画のトーンをしっかりと定めている。
音楽のマジックを映画に吹き込むデイミアン・チャゼル監督の最新映画『バビロン』は2月10日より全国公開。(フロントロウ編集部)