映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のサラ・ポーリー監督が、性暴力を題材とした本作で明るさを重視したことについて、思いを語った。(フロントロウ編集部)

性暴力が題材の映画で重要だったユーモア

 2000年代にボリビアでキリスト教の教派メノナイトの女性100名以上が数年にわたりレイプされていた事実が発覚。女性たちは動物用精神安定剤などを調合したスプレーをまかれていたため、被害を受けた時の記憶がなかったり、宗教コミュニティ内において女性の発言を男性が軽視したりしたことで、事件が明るみに出るまでに時間がかかった。

 そんな実際に遭った事件をベースにしたミリアム・トウズの小説『ウーマン・トーキング』を、サラ・ポーリー監督が映画化。『アウェイ・フロム・ハー君を想う』で知られる監督の10年ぶりの新作は、アカデミー賞作品賞にノミネートされるほど高い評価を得ている。

 宗教、女性、性暴力という要素が組み合わさったシリアスなテーマを取り扱った本作だが、すでに作品を見た人からは、本作が含むユーモアが効果的だという評判が多い。英Digital Spyは、本作のユーモアは「“泣く代わりの笑い”ではなく、本物の笑い」だとしている。そして、本作のテイストがそうなったことには、ポーリー監督が制作時に大事にしていた考えがあった。

画像: 性暴力が題材の映画で重要だったユーモア

 「究極的にはこの映画は、前に進み、物事を良くし、前に進むための道は何なのかとコミュニティで考えていくことについてです。非常に異なる視点を持った人々がグループとなり、一緒に取り組む。なので私にとって、この映画の前提となることは助けになりましたし、笑いや解放があることは非常に重要でした。
 動けないほど落ち込む映画は、私にとっては効果的だったことがありません。この映画についてのアイディアはいつでも、ただ恐怖を検証するのではなく、会話を挑発し、前に進むための2つのアイディアを提示することでした。

 また、キャストのケイト・ハレットは米Colliderのインタビューで、「本作のような映画では軽いシーンもあることによって、暗いシーンがより感情に訴えかけ、よりインパクトのあるものになるため、本当に重要だと思っています」と話しており、各シーンの間でコントラストを生み出すためにも効果的だったと分析。

 さらに、監督は実際にメノナイトの女性たちと会っていたことを明かし、「メノナイトの女性たちは、あの部屋でユーモアと笑いがあることは重要だと、非常に明確にしました。メノナイトの女性たちは男性がいない時に集まると、たくさん笑い、おたがいに触れ合うことも多かったそうです。サラはその事実に光を当てたかったし、本当に素晴らしい仕事をしたと思います」と、実際に起こった事件や実在の人物をベースにして、本作を制作した監督の手腕を称賛した。

(フロントロウ編集部)

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