世界中を震え上がらせた“リトビネンコ事件”の10年間に及ぶ捜査の全貌を完全映像化したドラマ『リトビネンコ暗殺』より、毒殺されたリトビネンコ氏の妻マリーナ役を演じたマルガリータ・レヴィエヴァのインタビューが到着した。(フロントロウ編集部)

マリーナは、夫が毒殺され、精神的に病んでいたわけではないことを周囲に納得させなければならなかったのですか?

マルガリータ:理解しがたいことです。自分がその立場になったらと思うと。自分の配偶者が毒殺されただけでなく、今度は自分も夫も信じてもらわなければならない。彼らに起きたことが現実離れしていますからね。ロンドンの路上で誰がイギリス人を毒殺するんだ?誰がそんなことを?サーシャの最後の声明についてマリーナと話したのは興味深かったです。彼が生前に口述し死後に読み上げられたもので、ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンを非難するものだった。そしてプーチンは、「リトビネンコ氏は残念ながらラザロではない」と言って、サーシャの言葉の真実性を疑わせたのです。その話が出るたびに、マリーナは「でも彼はラザロなんだ」と言う。ここにいなくても、彼はあそこでプーチンを告発し、自分の事件を語り、正義を勝ち取るのです。このドラマでは、マリーナがずっとやってきたこと、つまり彼の話をし、真実を伝えるということをすることができるんです。

サーシャはいつもこの人たちが自分を殺すと言っていた。だからロシアを離れたんです。刑務所で死んだり殺されたりするのは嫌だった。それが彼の日常だった。毒を盛られた直後、マリーナは彼が生き延びられると信じていました。だからこそ、最後の数日間は、警察の取り調べを受ける時間が長く、耐え難いものになったのです。2人の時間は短くなったのだから。彼らはイギリスなら安全だと感じていたし、マリーナは今でもそう思っている。プーチンとその政権にとって裏切りには報復がつきものだから、サーシャは殺されたのだと考えています。これ以上何ができるというのでしょう。彼らは自分たちを裏切った人間を殺したのです。

画像3: 注目俳優マルガリータ・レヴィエヴァが、話題作の裏側を明かす

病院のシーンの撮影では、マリーナとサーシャがどう感じたかを考える時間はあったのでしょうか?

マルガリータ:振り返る瞬間はありませんでした。その場にいる間中、ずっとそうでした。監督のジム・フィールド・スミスは、この作品のためにとても尽力してくれました。彼は最初から、このドラマをドキュメンタリーのように撮りたい、と言っていました。ロケ地の多くは、これらの出来事が起こった実際の場所です。彼は、私たち全員をキャスティングしたのには理由があると言いました。私たちを登場人物として見て、お互いに交流できる空間を作りたかったのでしょう。それを聞いて、とても助かりました。彼の演出、セットデザイナー、プロダクションチーム全体が、私たちがこの物語を生きていると感じられるような環境を提供してくれたのです。みんなそれぞれ違う仕事をしています。役者も皆、それぞれのスタイルを持っています。でも私は、マリーナとして撮影現場にいるとき、これらの人々や場所の状況を生きているように感じました。

ハイゲート墓地では、アレクサンドル・リトビネンコの本物のお墓で撮影をしました。あれはとてもパワフルでした。このシーンは、物語に大きな影響を与えました。また、マリーナとサーシャの息子、アナトーリを演じたジェームズ・エズラヴとの法廷でのシーンでは、撮影中も写真やビデオを見て、物語に入り込んでいました。撮影の休憩時間に、マリーナとアナトーリが裁判所で撮った写真を見て、それを彼に見せました。私は言いました。「これは誰のためにやっているのか」ってね。こんな話をすることは滅多にないです。

アレクサンドル・リトビネンコ役のデヴィッド・テナントとの共演はどうでしたか?

マルガリータ:事前にデヴィッドと仕事をしたことのある人たちから話を聞いていたのですが、私が聞いていた通りの、それ以上の人でした。みんな、彼が非常に才能豊かであることに加えて、いかに素敵な男性であり寛大な俳優であるかを語ってくれましたが、それはすべて真実でした。病院でのシーンで、アレクサンドル役のデヴィッド・テナントが、ニール・マスケル演じる刑事ブレント・ハイアットに、正義を果たすことを約束するように言うシーンがありました。最初のリハーサルから、彼がこの言葉を口にしたとき、ベッドの周りに座っていた私たちは号泣していました。どうしたら、あのシーンを全員で泣かずにすませることができるのだろう、と。本当に集中しなければならなかった。そして、そのシーンを撮影するために、みんなで我慢しようということになりました。サーシャの話を聞いているような気分で、彼と一緒に部屋にいるような感覚でした。彼の言葉を聞いて感情的にならないなんて、人間離れしていますよ。

病院のシーンはとても凝縮されていたので、デヴィッドと私は1週間強一緒に仕事をしました。彼はサーシャを体現し、残りの撮影に必要なものを私たちに与えてくれたので、この物語を実現するのにとても役に立ちました。撮影現場で、病院での日々や、彼が警察に向かって「約束してくれ」と言うシーンを思い出すことが何度もありました。私は、「よし、約束したんだもの。彼のためにこれをやらなければならない」と思いました。デヴィッドと一緒に仕事ができたことは、本当に素晴らしいことでした。

画像4: 注目俳優マルガリータ・レヴィエヴァが、話題作の裏側を明かす

マリーナもサーシャも、イギリスの警察に絶大な信頼を寄せていましたか?

マルガリータ:刑事たちの仕事ぶりは格別でした。マリーナから実際のストーリーを聞きました。ただ彼らの仕事ぶりや献身的な姿を見たり体験したりするだけで胸を打たれるものがあったようです。警察は、自分たちがやるべき仕事を正しく行いました。サーシャと、彼が残した妻との約束を守ろうとしました。2人とも本当に英国警察を信頼していました。サーシャは英国籍であることをとても誇りに思っていた。彼にとっては、自分が壊れたり腐敗したりしていない社会体制の一部だと実感できるというのが、とても意味のあることだったのです。

ニュース性や政治を抜きにすると、これは一人の、40代前半の夫であり父親であるイギリス人がロンドンの路上で殺害された事件でもありますね

マルガリータ:役作りの一環として何度も見たインタビューには、見るたびに私の心を掴んだマリーナの発言があります。なぜこの物語を語るのか、それを思い出させてくれる言葉です。マリーナとアレックス・ゴールドファーブが本のプロモーションをしているときの初期のインタビューで、マリーナに「人前に出ることをどう感じるか」と尋ねる質問がありました。彼女は、「結局のところ、本当に善良な人間が殺されたんです。そして、私がいなければ、誰もそのことを知ることができない」という趣旨を語っていました。政治的なことをすべて取り除けば、彼は妻と息子を愛し、家族にもっと良い生活をさせたかっただけの善良な人なのです。

では、なぜプーチンへの抗議を続けるのか、と思う人もいるかもしれない。それは、亡くなったサーシャが善人であり、正義と道徳を信じたからです。彼は、このようなことが平然と行われていて、誰もそれに対して何もしないのはフェアではないと思っていたのです。マリーナは、そんな彼のことを理解していたと思います。彼にとって何が重要かを知っていた。彼女は彼を愛していた。誰も彼女を止めることはできないのです。

画像5: 注目俳優マルガリータ・レヴィエヴァが、話題作の裏側を明かす

2006年にロンドンで起きたアレクサンドル・リトビネンコの放射能汚染による殺人事件の責任はロシアにあるとする2021年9月の欧州人権裁判所の判決は、撮影中に発表されたのですか?

マルガリータ:その判決が発表されたのは、ハイゲート墓地での撮影の2日目でした。私が出勤すると、みんなが 「聞いた?」と言っていたのを覚えています。ケータリング係からPAまで、スタッフの誰もがそのニュースに興奮していました。みんなこの話に夢中になっていたんです。ドライバーであれ、裏方であれ、この話に参加できることに興奮している人に何人会ったかわからないくらいです。

自分のキャリアの中で、この役割を振り返っていかがですか?

マルガリータ:まだ記憶に新しいところです。私のキャリアの中でも、より難しく、より挑戦的な仕事のひとつであったことは間違いありません。それは、マリーナの名誉を守りたかったからです。自分の演技を心配するわがままな俳優ということではありません。話し方であれ、外見であれ、私はそれを正しく表現したかったのです。マリーナの物語に深く関わっているため、何度も感情移入しました。同時に、マリーナは常に危機に瀕しているような人物ではありません。彼女は自分をしっかり持っています。だから、それを尊重しつつ、あまり感情的にならないようにしたかったんです。彼女を称えたいという思いが強かったのです。

英国でもっと仕事をしたいです。私が尊敬する作品の多くはイギリスから発信されているので、私はイギリスでエージェントを獲得しました。その一翼を担えたらと思います。私はアメリカの女優ですが、ロシア人でもあります。だから、ヨーロッパ的な感性を持っているような気がします。このドラマは多くの人に見てもらいたいし、大きな影響力を持つものだと思います。イギリスでは、この物語はとても親しまれています。アメリカではそれほど多くの人が知っているわけではありません。もっと多くの人に知ってもらいたいですね。

 ドラマ『リトビネンコ暗殺』は字幕版と吹替版が、「スターチャンネルEX」で独占配信中、「BS10 スターチャンネル」で独占放送中。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.