革新的だった『ベッカムに恋して』
イギリス映画『ベッカムに恋して』は、サッカーの才能があるインド系イギリス人の少女ジェスを主人公に、スポーツに打ち込む少女たちや、複数の文化が存在する社会を描く作品。最近では、移民家族が描かれる作品、女性たちがジェンダーに縛られずに活躍する作品は増えているが、本作が公開されたのが21年前の2002年だと考えると、先進的な映画だったといえる。
とはいえ、そういった作品を求めている人はずっといた。本作も大ヒットを記録し、ジェスを見つけてチームに引き入れたジュールズを演じたキーラ・ナイトレイも人気若手俳優となった。
本作は、イギリスの元天才サッカー選手であるデビッド・ベッカムが現役時代に公開されており、ベッカムが超絶カーブのキックを得意としていたことから、タイトルも「Bend It Like Beckham(ベッカムのように蹴れ)」というものになっている。ちなみに、タイトルにおける日本語の訳し方に関しては、「ベッカムのように蹴れ」という意味の原題が、邦題では女性は男性選手に憧れるのではなく恋するというステレオタイプを含む『ベッカムに恋して』となったことが批判されてきた。
しかし、結果として大ヒットとなった本作だが、公開前には否定的な見方をされていたという。米トーク番組『The Tonight Show』に出演したキーラが、当時の経験を明かした。
「それをやるとみんなに話して、『Bend It Like Beckham』だという名前だと伝えた時に、“あぁ。それは恥ずかしいことだよ”と言われたことを覚えてるんです。そして、“でも心配いらないね。誰も見ないよ。だから大丈夫”とも言われました。当時女性のサッカーは大きなものではなくて、(映画の)アイディアはバカげたもののように思えたのです」
彼女が「誰も見ないよ」と言われていたことには、司会者のジミー・ファロンも驚き。しかし、そんなネガティブな予想を跳ね返し、製作された映画が今でも愛される作品となっていることを、キーラは嬉しく思っているという。「もし誰かが私のところに来て、私の出演作について話しかけてくれるとしたら、今でもあの作品なんです。感激します。あの映画はとても愛されていて、本当に素晴らしい」と話した。
女子サッカーについては、現在でも男子選手と女性選手の間で労働環境や賃金で巨大な格差があり、改善されていないという問題があるが、少なくとも、サッカーをしたい少女たちが自分のしたいことを楽しめるようになっているのには、本作が社会に与えた影響もあるだろう。
(フロントロウ編集部)