EVに特化した新たなブランド発信拠点がオープン
ボルボが世界で展開する「Volvo Studio」が世界で初めてEVに特化して展開する、新たな発信拠点「Volvo Studio Tokyo」が東京・青山に誕生。オープンにともない、クルマ好きのフロントロウ編集長の大柳が、ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長に同スタジオの魅力について話を伺う機会をいただいた。
ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長 マーティン・パーソン氏
スウェーデン出身。1999年ボルボ・ジャパンに入社。キャリアを積み、2008年にスウェーデン本社ボルボ・カー・コーポレーションに異動。グローバル アフターセールス責任者、ボルボ・カー・ロシア社長を経て、2020年より現職に就任。
五感でボルボを体感する「Volvo Studio Tokyo」
「Volvo Studio Tokyo」は、世界6か国で展開しているボルボスタジオとしては世界初となるEV専門施設で、展示するのはすべてEV。ボルボは2030年までにグローバルで販売するすべての新車をEVにするという高い目標を掲げており、このスタジオは、EVに特化したショールームとしても国内最大級の広さを誇る。
しかし、本スタジオがユニークな点はそれだけではない。「Volvo Studio Tokyo」では、いわゆる一般的なショールームのような車の販売は行なっていない。もちろんセールストークもない。
その一方で、AR技術を使ったアクティビティやバーチャルドライブ、特別なインテリア、スウェーデンのカフェ文化「フィーカ」などの体験が用意され、五感を通してボルボを知れるスタジオになっている。
ボルボの購入を考えている人から通りすがりの人までが気軽に立ち寄れるスポットとして、その扉は広く開かれている。このスタジオでは、一体どんな体験ができるのだろうか。
ボルボ体験1:専用アプリで体験するAR技術デジタルアクティビティ
入口に設置されているQRコードから専用アプリをダウンロードし、ARを使った様々なデジタルアクティビティを楽しめるのが最初の体験スポット。
フロアや各スペースに配置されたマーカーをスマートフォンでスキャンすると、AR空間にアイコンが浮かぶ。それをタップすると、ボルボの歴史やこれまで行なってきた取り組みなどのトリビアが、ゲーム形式で知れるという仕組みになっている。
マーティン社長はスタジオコンセプトについて、「まずは明るくオープンで入りやすい場所にしたかった。幅広い世代に来てもらいたいが、デジタルネイティブ世代も視野に入れている。アプリをダウンロードしてスタジオの中を動き、デジタル体験をして欲しい。それは、プロダクトの事だけ理解してもらうのではなく、リラックスして楽しみながらボルボブランドの理解も深めてもらえるような場所を目指した」と話す。
ボルボといえば「世界一安全な車」と呼ばれているのを知っているだろうか? 世界中の自動車メーカーの中でも安全性に定評があり、車の安全性開発において長く世界をリードし続けてきた。そんなブランドレガシーを次世代にも知ってもらうため趣向を凝らしたという。
マーティン社長は、「年齢が高い方は、ボルボの車はセーフティにこだわっているという認識はあるが、若い方は知らない人も多い。例えば、ボルボが世界で初めて3点式シートベルトを開発し、他メーカーにも無償で提供していることなど、ボルボをまったく知らない新しい方にも、簡単にブランドが知れるようなゲーム形式にしている」と、次世代に向けてARなどの現代的なアプローチを取り入れたと説明した。
ボルボ体験2:ストックホルムを走る「バーチャルドライブ」
ARを楽しんだ後にはバーチャルドライブ体験を。巨大なスクリーンの前に展示されたEVに乗り込むと、ボルボ創業の地スウェーデンの首都ストックホルムのストリートや名所をめぐる臨場感のあるバーチャルドライブが体験できる。
約7分間のお楽しみドライブについてはあえて多くは語らないが、ぜひとも体験してほしい。体験後には、施設の地下に用意された試乗用EVに空きがあれば、そのまま実車の試乗も可能だという。バーチャルからリアルへのシフトが、なんともエキサイティング。
気軽にテストドライブできる約30分のショートコース*や、ネットで事前予約することで約90分のロングコースの試乗ができるほか、運転に自信がない人も歓迎で、専門のドライバーによる助手席試乗も用意されているという。これは何かと便利ではないだろうか。「初めてのボルボは緊張してしまう」、「今日はハイヒールを履いているので、運転はしにくい」なんていうときには助手席試乗で歓迎とのこと。*当日予約での試乗は平日のみ
しかしマーティン社長は、「カスタマーが望めばテストドライブを提供しているが、望まなかったら立ち寄るだけでいい。こちらから押し付けるようなことはしないし、自由に体験してほしい」とハードルの低さを強調する。セールストークもないこのスタジオでは、ふらっと立ち寄った人でもウェルカムだという。
ディーラー訪問や新型のテストドライブは楽しいものだが、やはり購入しないとなると販売員の方に申し訳ない気持ちがあり、“気軽に”とはなかなかいかない。そのハードルを払拭し、ブランドとユーザーが知り合うための場を本気で作っているのだから、なんて素晴らしい試みなのだろうと感動した。
ボルボ体験3:スカンジナビアのモダンラグジュアリーなインテリア
スタジオには、北欧スウェーデンの洗練されたインテリア・家具を取り揃えているのも見どころ。そこに込められたブランドメッセージは、デザインだけではない。
同スタジオは、2017年開設のボルボのショールーム「Volvo Studio Aoyama」を継承するかたちでオープンしたが、マーティン社長は、「インテリアは壁の装飾を含め、新スタジオの約40%が昔のスタジオのものをリユースしている。それはブランドのサステナビリティやリユースの考えに一致するものだ」と語り、ボルボの環境問題に対する意欲的な姿勢が、スタジオ中にちりばめられている。
ボルボがサステナビリティの活動において注力し始めたのは、なんと世界が環境問題を意識するはるか前の1940年代。
何十年も早くから環境意識を持ち、再生交換部品の製造・提供などに取り組んできた実績を持つことでも知られる。「すべてのEVのフロアカーペットやインテリアには、ペットボトルから再生された繊維や、リサイクル素材、本革を使用しない“レザーフリー”を採用している。スタジオではボルボの未来をお見せしたかった。ボルボの未来はよりEVに特化し、より今よりもサステナブルになるということを強調している」と、マーティン社長は展示してある「C40 Recharge」のインテリアを見ながら熱く説明してくれた。
ボルボ体験4:コーヒーを飲んで、スウェーデンの文化「フィーカ」を楽しむ
最後はスウェーデンで愛され、生活の一部とも言えるカフェタイム“フィーカ”体験。スウェーデンではプライベートはもちろん、多くの企業が勤務時間中にフィーカを設けていて、忙しい中でもコミュニケーションを取るために大切にされている。
そんな大切な文化“フィーカ”を体験してもらおうと、「Volvo Studio Tokyo」ではスウェーデンのスペシャルなコーヒーを提供する。
マーティン社長は「コーヒーマシーンのカウンターにスタッフがずっと立っているというわけでもない。皆さんがやりたい事を選んで、自由にリラックスして楽しめるようになっている」と、どこまでもフリースタイルなスタジオのコンセプトを主張した。
スタジオ中にちりばめられたAR、ストックホルムの街を走るバーチャルドライブ、資源を大切にするサステナブルなインテリア、人と人の生活を想いやるフィーカ。
「Volvo Studio Tokyo」を体験し、ボルボのこだわり抜いた世界観の一面を知ることができ、さらにはマーティン社長自身の言葉で一貫性のある揺るぎないメッセージを聞くことにより、EVをはじめ未来の環境を守るためのサステナブルな企業理念にも感銘を受けながら、ボルボブランドへの愛着が一層に沸いた1日となった。
「Volvo Studio Tokyo」は、クルマに興味がある人も、まだ無い人も、クルマを所有する予定はなくても、青山界隈のショッピング等の通りすがりに立ち寄ったり、EVやサステナブルに興味があったり、または待ち合わせ場所として利用することもできる、新たな“お出かけスポット”としても気軽に訪れてほしい場所。訪れればきっと、ボルボの魅力を感じることができるから。
「Volvo Studio Tokyo」概要
所在地:東京都港区南青山3丁目1-34 「3rd MINAMI AOYAMA」1F(青山通り沿いに位置)
営業時間:月曜~金曜12:00〜19:00/土曜・日曜・祝日10:00〜19:00
定休日:毎週水曜日、第1・第3火曜日
電話番号:03-6773-1353
(フロントロウ編集長:大柳葵理絵 撮影:早坂直人)