海外で映画史を塗り替える大ヒットとなっている、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。4月28日の日本公開での収益が加われば、ものすごい結果になるのではないかと言われている。本作の勝因とは? 1993年にハリウッドで映画化されて失敗に終わった『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の失敗と比較しながら、予告編以上のネタバレは無しでレビューする。(フロントロウ編集部)

原作から離れすぎるというミスを犯さなかった

 1993年の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の最大の失敗は、“これのどこがマリオ?”と観客を困らせるほど、世界観やキャラ設定を改変しすぎたこと。舞台はゲームとは関係ないディストピア世界で、クッパはカメ要素ゼロの人間、クリボーも高身長の怪物だった。しかし『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を作ったのは、ミニオンズやロラックスなどの生みの親で、キャラクターを重要視するスタジオとして知られるイルミネーション。そんな裏切り行為はしない。

画像: 原作から離れすぎるというミスを犯さなかった

 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では、マリオ、ルイージ、クッパ、ピーチ姫、クリボー、ノコノコ、パックンフラワーといったお馴染みのキャラクターたちが、カラフルで楽しいキノピオ王国や、マグマがドロドロしているクッパが支配するダークランドを走り回る。ゲームで登場するアイテムや、ゲーム中に使用された効果音など、原作へのリスペクトが随所にあり、『スーパーマリオブラザーズ』だけでなく、『マリオカート』にインスパイアされたカーシーンや、『大乱闘スマッシュブラザーズ』さながらのバトルシーンなど、任天度が誇る膨大なIP(知的財産)へのオマージュで溢れている。

 一方でもちろん、オリジナルからの改変もある。マリオと言えば、「マンマミーア!」や「レッツゴー!」が口グセであること以外の素性はあまり知られていないが、本作では性格・家族構成・人生における問題などが細かく描かれている。つまり、等身大のキャラクターになっているのだ。そうするなかで、本作の勝因は、それぞれの“らしさ”を増幅させるようにキャラクターを構築したことにある。独自のストーリーを展開して、ファンにとって新鮮な驚きを提供しながらも、オリジナルの世界観を大切にしているから、納得できる。

 キャラクターたちの中で最も変わったのは、アクションシーンも多いピーチ姫かもしれないが、そんな彼女だってピーチ姫の要素は失っていない。これは、ピノキオでも、クッパでも、ルイージでも一緒。イルミネーションは、全キャラの特性やらしさに軸足を置いて、それをより輝かせることで、まるで本当にそこにいるかのようなリアリティをキャラクターに吹き込むことに成功している。

ターゲット・オーディエンスが誰なのか認識し、作品に一貫性があった

 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のメガヒットに貢献しているのが、大人のほか、多くのファミリー層の人々が劇場へ足を運んだことだと言われている。

 1993年の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』も大人と子どもをターゲットにしようとしたのだが、仕上がった作品は、家族向けの明るいトーンのユーモアとダークで大人向けのテーマが混在した一貫性のないものとなってしまい、どちらにもウケないというトホホな結果になってしまった。

画像: ターゲット・オーディエンスが誰なのか認識し、作品に一貫性があった

 一方、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、明るくポップなユーモア、カラフルで飽きない世界観、好きにならずにはいられないキャラクター設定、そして実写並のCG映像による圧倒的な迫力で、世代・性別・人種に関係なく楽しめる作品に仕上がっている。

 ちなみに、子どもにもウケると言うと陳腐なユーモアを想像して“自分には合わない”と思う人もいるかもしれないが、大人の業界関係者ばかりだった試写会ではあちこちから笑い声が挙がっていたことだけ言っておこう。

制作陣がワンハートで結束していた作品を生み出した

 『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』は、制作陣の不和が失敗に繋がったとも言われている。ロッキー・モートンとアナベル・ヤンケル監督はプロデューサーたちとの対立がウワサされ、マリオとルイージを演じたボブ・ホスキンズとジョン・レグイザモも、製作中のトラブルや不和についてのちに不満を漏らす結果となった。

画像: 制作陣がワンハートで結束していた作品を生み出した

 一方の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では、イルミネーションの創業者であり最高経営責任のクリス・メレダンドリ氏とマリオの生みの親として有名な、任天堂の代表取締役フェローである宮本茂氏が6年にわたり密に協議を重ね、最高の映画を届けるために一枚岩で動いた。

 彼らに共通したのは、モノづくりへのマジメな姿勢と、オリジナルゲームへの敬意。ファンが望むのはどんなシーンか、膨大なキャラクターの中から誰を登場させるかと、様々なテーマで協議を重ね、監督にもゲームのファンであるアーロン・ホーヴァスを起用し、世界中の老若男女に愛される任天堂の世界観と、世界最高レベルであるイルミネーションの技術を合体させ、今あるエンターテイメント・ムービーを誕生させた。

コラボマーケ連発で、社会にスーパーマリオの世界観をあふれさせた

 予告編で、映画の方向性やオリジナルゲームとの関係が伝えられず、マーケティングは失敗に終わったとされた1993年の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』。

 一方、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は「世界にマリオ旋風! カルチャー現象化する『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』」でお伝えしたとおり、劇場の外でもマリオ・フィーバーを起こしている。

画像: ナチュラルコスメブランドのLUSHと『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の限定コラボ。 front-row.jp

ナチュラルコスメブランドのLUSHと『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の限定コラボ。

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 米公開の直前にハリウッドにオープンした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」は最大3時間待ち。さらに、ユニクロ、シェイクシャック、ラッシュ、マテル、森永乳業など、多種多様なブランドとのコラボがすでに発表されている。このカルチャー的な盛り上がりが、劇場でのチケットセールスに貢献していることは言うまでもない。

 4月28日(金)に日本公開される映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。ゴールデンウィーク中にどれだけ来場者数を伸ばし、最終的にどこまで収益を持って行けるか。期待大だ。(フロントロウ編集部)

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