少年の視点で社会を繊細に描く『アルマゲドン・タイム ある⽇々の肖像』
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部⾨に正式出品の『エヴァの告⽩、『アド・アストラ』など、社会派からSFまで精⼒的に新作を世に送り出し続けるジェームズ・グレイが製作・監督・脚本を務めた最新作『アルマゲドン・タイム ある⽇々の肖像』が5月12日に公開される。
主人公は、黒人生徒ジョニーと親しくなった、ユダヤ系アメリカ⼈の中流家庭に育つ少年ポール。ある時学校で些細な悪さを犯した2人。しかし人種や家庭環境が異なる2人の⾏く末は⼤きく分かれることとなり、ポールはアメリカの複雑な社会情勢が突きつける本当の逆境を知ることになる。
PTA会⻑を務める教育熱⼼な⺟エスターを演じるアン・ハサウェイや、ポールを優しく愛する祖⽗アーロンを演じるアンソニー・ホプキンスら賞レース常連の豪華キャストが競演し、差別と格差が根付く80年代 NYを舞台に、多感かつ繊細な12歳の少年ポールが培っていく友情、そして微妙な変化を迎える家族との関係を通して、時代を取り巻く理不尽や不公平を浮き彫りにする。
⽣きづらさのなかに滲む“理解と愛”に寄り添い、同時に、⾃分の無⼒さを噛みしめ、世の中に折り合いをつけながら⽇々を営む⼈々の姿を、変わらぬ愛と変わりゆく⾃分を通して⾒つめる、痛烈で鮮烈な作品となっている。
『アルマゲドン・タイム ある⽇々の肖像』はさらに、『ジェントルメン』や『シカゴ7裁判』で強い印象を残すジェレミー・ストロングやアカデミー賞女優のジェシカ・チャステインら⼀流キャストの競演にも注⽬が集まっている。
【独占解禁】『アルマゲドン・タイム ある⽇々の肖像』
この度、4月に11年ぶりに来日したアン・ハサウェイと、夫役で共演したジェレミー・ストロングの2ショットインタビュー映像が解禁された。
グレイ監督が⼿がけた脚本についてジェレミーは「感動したよ。物語全体を通して⼀本の川が流れてる感じだ。根底に流れるテーマや静かな痛みが伝わってくる」、アンは「最初に脚本を読んだ時“これは本物だ”と感じた」とそれぞれ絶賛。
ジェレミーは、本作のタイトルが、ザ・クラッシュが1979年にカバーした楽曲「ハルマゲドン・タイム」に由来していることにも触れ、本来は「迫りくる核戦争の影を思わせ、世界の終わりを想起される曲だ」としながら、本作では「より⼩規模な形で⽇常を揺るがす事件が起こり始める。ある少年の⼈⽣にね。この国の運命と連動するかのようだ」と、結果的に、時代を超えて、この楽曲が現代社会も揺るがす<政治分裂>や<⼈種対⽴>といった問題にも⾔及していることに触れ「監督は⾃分⾃⾝についての物語を通して歴史を描き出した。より⼤きな物語をね」と⾃⾝の⾒解を⽰した。
続けて、⾃⾝の物語を描くことによって、結果的に社会問題に光を当てた本作について「監督は別に物議と醸そうとはしてない。ただ解決されないまま放置されてきた課題を描いた、複雑に絡まった“社会問題”という結び⽬を解こうとしただけだ」と述懐。それを側で聞いたアンは「(監督は)観客が⾃分を投影できるようにしたのよ。無意識のうちに作品中に⾃分を⾒いだせるようにした。製作側からの押し付けは観客が嫌がる。でもこの映画は⾃然と⾃分を投影できるの」と補⾜。ジェレミーも「ああ、僕たちを引き⼊れてくれる。そんな映画だ」と賛同した。
映画『アルマゲドン・タイム ある⽇々の肖像』は5月12日公開。(フロントロウ編集部)