ファーストアルバム『フォース・ウォール(4th Wall)』を引っ下げ、ルエルがおよそ4年ぶりとなる来日公演を5月23日に渋谷WWW Xで開催した。ソールドアウトとなった本公演のライブレポートが到着。(フロントロウ編集部)

ルエルの来日公演をレポート

 始まった今回のツアーも“4th Wall World Tour”と題され、セットは、過去6年間に送り出してきたお馴染みの曲の数々を挿みつつ、アルバムの収録曲をほぼ全て網羅。映画にインスパイアされた作品とあって、エレクトロニック・ノイズを背景に、“こちらはフォース・ウォール当局、逃亡者を捜索中。20歳の男性、身長は6フィート5インチ、髪はブロンド、目はグリーン……”とアナウンスが聞こえ、SF映画のワンシーンを模したイントロでショウはスタートした。

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 こじんまりした会場にぎゅうぎゅう詰めになって、そんな“お尋ね者”を迎え入れたオーディエンスは、一斉に悲鳴に似た歓声を上げる。そしてグリーンとパープルのライトに照らされたステージで彼は、アルバムのオープニング曲である「Go On Without Me」以下、早速『フォース・ウォール』から3曲をプレイ。もちろんオーディエンスはアルバムも予習済みで、ルエルの声に自分たちの声を重ねて、彼も「この調子で行こう!」と満面の笑みを浮かべて初期の代表曲「Dazed & Confused」へ。さすが長く愛されている曲だけに、サビは全部オーディエンスが引き受ける。

 思えばルエルは、デビュー当初はこの曲に代表されるようにR&B/ソウル的なサウンドを志向し、『フォース・ウォール』ではオルタナティヴ・ロック寄りに音楽性を大きくシフトさせたわけだが、キーボード奏者とドラマーだけのバッキングでシンプルにアレンジした今回のライヴ・パフォーマンスでは、ふたつの世界が自然に同居している。それはやはり、時折エレクトリック/アコースティックのギターを抱えて歌う彼のヴォーカルそのものパワーがあってこそ。繊細なファルセットもソウルフルな低音も、微妙な揺らぎが幅広いエモーションを送り届け、すべてをルエルの色で包み込んでしまう。

 また、東京だけのスペシャルな気配りもあった。例えば「Face To Face」では、「Strolling the streets back in Rome」という歌詞の「ローマ」を「東京」に変えて会場を湧かせ、恐らく他の公演地では歌っていない「Japanese Whiskey」も披露。MCによると、日中に東京のウィスキー・バーで「Japanese Whiskey」のPVを撮影したのだとか。

 ほかにも、無数の携帯電話のライトが煌めく中で歌ったワン・ダイレクションの「Night Changes」のカヴァーから、ディスコのビートで踊らせた「Flames」(ルエルがヴォーカルを担当したSGルイスのシングル)、途中でフロアに降りてきてオーディエンスを騒然とさせた「Younger」、そして巨大な黄色いバルーンをみんなでパスし合った「Painkiller」に至るまでハイライトは枚挙に暇なく、ラストを飾ったのは、再びグリーンとパープルのライトを浴びて、アコギを弾きながら歌った「End Scene」。アルバムのフィナーレでもある曲だ。

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 その後またもやエレクトロニック・ノイズが響き渡り、まさに“end scene(結末の場面)”に続いて映画のエンド・クレジットが流れているみたいな気分が醸され、ここでも『フォース・ウォール』のコンセプトに準じたこだわりの演出で楽しませる。

 でも、まだショウは終わってはいない。アルバム・ジャケットで着用しているものと同じトップスに着替えてステージに戻ってきたルエルは、「I Don’t Wanna Be Like You」をアンコールに用意していた。オーラスとあって「Go f**k yourself and all of your friends!」と、キャッチーな決めフレーズを会場がひとつになってシャウトして、フラストレーションを発散。放送禁止用語を含んでいることもお構いなしに。そんなことも許されてしまう、色んな意味で非日常な時間を彼は満喫させてくれた。(文:新谷洋子,編集:フロントロウ編集部)

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