性的暴行疑惑のアーミー・ハマー、検察が起訴を見送る
映画『君の名前で僕を呼んで』などの出演作で知られる俳優のアーミー・ハマーが、2016年から2020年の約4年間にわたって不倫関係にあった女性からレイプ被害を告発された件で、ロサンゼルス郡地方検事局が証拠不十分でアーミーを不起訴にしたことがわかった。
被害届を受理したロサンゼルス市警は約9ヵ月間にわたって捜査を行なったが、2021年12月にすべての捜査を終了し、事件をロサンゼルス郡地方検事局に送致し、最終的な判断を委ねた。
今回の決定について検事局の広報担当者は、「性的暴行事件は立証が困難な場合が多いため、最も経験豊富な検察官を審査にあたらせています。今回のケースでは、担当の検察官が極めて綿密な検討を行いましたが、現時点では、ハマー氏を罪に問うには証拠が不十分であると判断しました」、「私たちは、女性が性的暴行を報告することが難しいことを知っています。起訴に踏み切れない場合でも、当局の被害者支援サービスを希望される方には、担当者が対応させていただきます。関係の複雑さから、非合意かつ強制的な性的経験を証明することができず、合理的な疑いを超えて事件を証明することができませんでした」と米Page Sixに語った。
検事局の担当が語るように、性暴力事件は起訴が非常に難しいことで知られる。アメリカでの調査では、レイプ告発が虚偽である確率は2~10%というデータがあるが、米最大の性暴力撲滅団体RAINNによると、逮捕に至る事件は全体の5.7%、重罪として有罪判決にいたるのは0.7%、投獄にいたるのは0.6%だという。検察側が徹底的に捜査をした場合であっても、目撃者がいないケースが多いため裁判で同意のうえだったと主張できること、時間が経っていて証拠が乏しいケースが多いことなどから、レイプ事件は起訴が難しい。アーミーが女性に性的暴行を加えたとされるのは2017年で、警察による捜査は2021年から始まった。
今回の報道が出たあと、アーミーはインスタグラムを通じて、「今回、私を助けてくれたすべての人に、心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。前向きにいきましょう」、「地検が徹底的な調査を行い、私がずっと支持してきた“犯罪はなかった”という結論に至ったことにとても感謝しています。汚名が晴れたことで、これから自分の人生を取り戻すための、長く困難なプロセスが始まることを楽しみにしています」とコメント。
一方、被害者の女性はロサンゼルス郡地方検事局の決定に対して、「アーミー・ハマーを起訴しないというロサンゼルス郡地方検事の決定に失望しています。私は、アーミーが私に与えたすべての被害とトラウマの責任を追及するため、また他の女性が同様の虐待を経験しないように守るために、声を上げ、報告書を提出する義務があると感じました」、「アーミーの虐待に対して声を上げ、被害届を提出したことで、私は大きな犠牲を払うことになりました。(声を上げて以来)私は殺害予告、レイプ予告、数え切れないほどの攻撃、非道で絶え間ない嫌がらせを受けています。アーミーの被害者の多くは、名乗り出ることを恐れていたのだと思います。私の願いは、いつかレイプ犯が逃げられなくなることです」と失望をあらわにしている。(フロントロウ編集部)