最高裁がロー対ウェイド判決を覆す判決を下してから1年が経ったことを受けて、シンガーのデミ・ロヴァートが抗議ソング「SWINE(スワイン)」を発表。今アメリカでは、妊娠中絶へのアクセスはどのような状態にあるのか?

デミ・ロヴァートのプロテスト・ソング「SWINE」

 シンガーのデミ・ロヴァートが、6月22日に抗議ソング「SWINE(スワイン)」をリリースした。これは、米最高裁が女性の妊娠中絶の権利を認めたロー対ウェイド判決を覆してから1年が経ったことを受けて発表されたもので、デミはSNSでこう語った。

 「最高裁が安全な中絶を受ける憲法上の権利を解体すると決めてから1年が経ちました。前途は多難ですが、私たちはリプロダクティブ・ジャスティス(※)のために団結して闘い続けなければなりません。私は、選択する権利とからだの自己決定権を主張する人々の声を広く伝えるために『SWINE』を作りました。この曲が、この国で出産する人たちだけでなく、平等のために立ち上がるすべての人たちが、自分の主体性を受け入れ、自分の身体について決定する権利が尊重される世界のために闘うことへの力となることを願います」

 「SWINE」の歌詞には、「もし彼がイッたら私は母親になるってことみたい」「私が死にそうだったとしても 彼らは私が中絶するのを止めるでしょう」などと、妊娠した者の選択肢を奪い、からだの自己決定権を制限することを批判する歌詞が並ぶ。

※リプロダクティブ・ジャスティス:リプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)とソーシャル・ジャスティス(社会正義)を合わせた言葉。自分の体について自分で決める権利を持つ、子どもを持つ持たないかを自分で決めるといったリプロダクティブ・ライツを完璧に持つためには、経済的・社会的・政治的な力や手段を持つことが不可欠であるという考え。

アメリカにおける中絶の権利の現状、3人に1人が適切なアクセスがない

 アメリカでロー対ウェイド判決が覆されてから約1年、アメリカはどのような状況にあるのか?

画像: 2022年5月にロサンゼルスで催された、リプロダクティブ・ライツ(生殖の権利)を求めるデモ運動。

2022年5月にロサンゼルスで催された、リプロダクティブ・ライツ(生殖の権利)を求めるデモ運動。

 アメリカでは1973年のロー対ウェイド判決によって全州で人工妊娠中絶が合法化されたが、2022年6月に最高裁がそれを覆したことで、合法・違法の判断は州ごとに任された。そして現在、大きくわけて、①人工妊娠中絶が禁止されている州、②人工妊娠中絶が制限されている州(※例:妊娠12週以降は禁止等)、③人口妊娠中絶が合法である州が存在する。

 アムネスティ・インターナショナルによると、アメリカでは「現在、生殖年齢にある女性と女児の3人に1人が、中絶へのアクセスがまったくないか、それに近い状態にある州に住んでいる」そうで、同団体は、「中絶に関する法律が最も厳しい州は、妊産婦への支援が最も弱く、妊産婦の死亡率が高く、子どもの貧困率が高いです。そして極右団体は、中絶希望者を通報する報奨金制度や、薬による中絶へのアクセスの阻害、中絶に関する情報の制限などを通じて、中絶を犯罪化しようとし続けています」と警鐘を鳴らした。

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