アメリカ最高裁が同性カップルへのサービス拒否は“表現の自由”であると判断したことを受けて、俳優のマイケル・インペリオリが怒りのコメントをした。最高裁の新たな判断とは? オバマ元大統領夫妻らのコメント全訳と共に紹介。(フロントロウ編集部)

マイケル・インペリオリが同性カップルへのサービス拒否を批判

 ドラマ『ザ・ソプラノズ』や『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』、映画『グッドフェローズ』で知られるマイケル・インペリオリが米時間7月1日に公式インスタグラムを更新して、こう宣言した。

 「偏見を持つ人や同性愛嫌悪者が、『ザ・ソプラノズ』や『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』、『グッドフェローズ』、あるいは私が出演したいかなる映画やテレビ番組を観ることを禁じることにしました。最高裁さん、私が同意しない人や私が反対している人を差別して排除することを許してくれてありがとう。USA!USA!」

 マイケルのこの発言は、ウェブデザイナーが信仰上の理由から同性カップルへのサービス提供を拒否できるかどうかを争った裁判で、米最高裁がサービス拒否は“表現の自由”にあたると判断したことに対する皮肉を込めた反応。

 アメリカ最高裁は現在、トランプ米大統領政権時代に3人の保守派判事が任命されたことで、保守派6人・リベラル派3人という状態にある。リベラル派の判事3人は今回の判断に反対しており、その1人であるソニア・ソトマイヨール判事は、「残念なことに、これは覚えのあることです。公民権運動や女性の権利運動が公共生活における平等を求めたとき、一部の公共施設はそれを拒否しました。なかには、宗教的信念に基づいて、差別する憲法上の権利を主張する者さえいました。そのような主張を、かつてこの法廷に座っていた勇敢な判事たちが退けたのです」と語った。

 マイケルのコメント欄には、最高裁の判断を支持する派からのコメントが一部見られたが、それを受けてマイケルは、「ヘイトと無知は正当な見解ではありません」「それは(相手を)人間として扱っていないということです」というコメントを追加した。

 また、今回の件には、ドラマ『マンダロリアン』のペドロ・パスカルも反応。インスタグラムのストーリーに米最高裁の判事9人が並ぶ写真をアップしたペドロは、ウェブデザイナー側の主張を支持した6人の判事の上にプライドフラッグやトランスジェンダーフラッグを置いて、無言ながらも、彼らの判断に対する反発を示した。

画像: マイケル・インペリオリが同性カップルへのサービス拒否を批判

アファーマティブ・アクションへの判断にも著名人からコメント

 さらに米最高裁は、「学生ローンの免除措置」と「大学でのアファーマティブ・アクション」についても判決を出して物議を醸している。

画像1: アファーマティブ・アクションへの判断にも著名人からコメント

 学生ローンの免除措置では、“年収12万5,000ドル(約1,800万円)以下の人の学生ローン残高から最大2万ドル(約290万円)を免除する”としたバイデン政権の措置が「無効」とされた。

 一方、大学のアファーマティブ・アクションについては、ハーバード大学などが人種を選考基準のひとつとしているのは「違憲」だとされた。アファーマティブ・アクションはもともと、長年の白人優位な状況を少しでも是正するための措置として取り入れられたもの。大学側は社会の多様性を反映した優秀な学生たちが集まるキャンパスを作るために、成績や学生時代の活動といったアカデミックな分野のほか、人種も判断項目のひとつとしてきたが、保守派の判事6人は、これを法の下の平等を定めた憲法に違反しているとした。うち1人であるクラレンス・トーマス判事は、「憲法はカラーブラインド(※色盲=皮膚の色で差別・区別しない)」と語った。

 しかし“カラーブラインド”を主張することは、人種によって差別・偏見を受けているコミュニティの現実を無視する危険性がある。現実にアメリカの名門大学では、アファーマティブ・アクションが取り入れられた後でも、白人優位な合格制度が問題視されてきた。アメリカの名門大学ではレガシー・アドミッション(※卒業生の家族を優先的に合格させる措置)が広く行なわれており、Guardianによると、レガシー学生の合格率は33%で、そうでない学生の6%を大きく上回る。このレガシー・アドミッションは白人生徒に優位だとされており、例えばハーバード大学では、43%の白人生徒が、レガシー・アドミッションによる学生、スポーツ推薦を受けた学生、教職員の子弟、あるいは両親や親戚がハーバード大学に寄付をしている学生であることが、2019年の調査で分かった。この数字は、黒人・ラテン系・アジア系では16%まで下がった。格差がないならばアファーマティブ・アクションはいらないが、未だにこのような格差が根強いなかでアファーマティブ・アクションを取り除くことは格差をさらに広げるとして反対する声が多い。

画像2: アファーマティブ・アクションへの判断にも著名人からコメント

ミシェル・オバマ

「大学時代、私はキャンパスで数少ない黒人学生の一人でした。そんななか、自分はアファーマティブ・アクションのおかげで入学できたと思われているのではないかと思うこともありました。その疑念が外から来るものであれ、自分の心の中にあるものであれ、私のような学生には拭い去れない影だったのです。しかし、事実はこうでした。私はそこの一員であるに値した。そして、半世紀以上にわたって、学期ごとに、10年ごとに、私のような数え切れないほどの学生が、自分もその一員であることを証明してきました。そして、その恩恵を受けたのは有色人種の子どもたちだけではないです。自分たちが出会ったことのないような視点を聞いたり、思い込みを覆されたり、心や心を開かれたりしたすべての生徒が、同様に多くのものを得たのです。(アファーマティブ・アクションは)完璧なものではなかったですが、私たちの歴史の中で、あまりに頻繁に、自分がどれだけ速く登れるかを示す機会を否定されてきた人々に、新たな機会のはしごを提供する一助となったことは間違いないです。

もちろん、私のキャンパスの学生も、そして全米の数え切れないほど多くの学生も、入学に関して特別な配慮を与えられてきましたし、今も与えられています。同じ学校を卒業した両親を持つ生徒もいる。また、より速く走ったり、より強くボールを打ったりするためのコーチを雇う余裕のある家庭の生徒もいる。また、大学入試で高得点を取るために、家庭教師や大規模な統一テスト対策のための潤沢な資金を持つ高校に通う者もいる。私たちは通常、そのような生徒が在学しているかどうかを問うことはありません。お金、権力、特権がアファーマティブ・アクションとして完全に正当化される一方で、私のように育った子どもたちは、地面が平らでないところで競争することを期待されているのです。

だから今日、自分の将来はどうなるのだろう、どんなチャンスがあるのだろうと考えている若者のことを思うと、胸が張り裂ける思いです。私は、同じはしごを登るために、いつももう少し汗を流さなければならなかった子どもたちの内側にある強さと気概を知っている一方で、残りの私たちも少し汗を流すことを望みますし、そう祈ります。今日、私たちは、公平と公正という私たちの価値観を反映した政策を制定するだけでなく、学校、職場、そして近隣のすべての場所で、その価値観を真に実現するための仕事をしなければならないことを思い知らされました」

バラク・オバマ元米大統領

「アファーマティブ・アクションは、より公正な社会を目指すための完全な答えでは決してありませんでした。しかし、アメリカの主要な教育機関のほとんどから組織的に排除されてきた何世代もの学生たちにとって、それは、私たちがテーブルに座るに十二分に値する存在であることを示すチャンスを与えてくれたのです。最高裁の最近の判決を受けた今こそ、私たちは努力を倍加させる時です」

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス

「もし最高裁が意味不明な"カラーブラインドネス"という主張を本気でしているならば、レガシー・アドミッションという別名、特権階級のためのアファーマティブ・アクションを廃止しているはずです。ハーバード大学のレガシー入学志願者の70%は白人です。連邦準備制度理事会はこの問題に触れませんでした」

ウーピー・ゴールドバーグ

「憲法修正第14条は平等な保護を約束することになっていますが、もしすべての人が実際に平等に扱われていたら、アファーマティブ・アクションを導入する必要はなかったでしょう。人々は、デモ行進をしたり、懇願したり、放水されたりする必要はなかったでしょう。この国で起こっている他のすべてのこととのバランスをとるために、いろいろする必要はなかったでしょう」

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