実写化計画の始まりは2009年…『バービー』映画化までの長い道のり
公開が待たれるこの夏大注目の映画『バービー』は、世界で最も有名なファッションドールであるバービーの世界を初めて実写映画化した、最強のドリームファンタジー映画。主演のマーゴット・ロビーは今作のプロデューサーも担当し、グレタ・ガーウィグ監督と共に『バービー』の制作に携わったが、実はバービーが映画化されるまでには様々な人物を巻き込んだ長い道のりがあった。
バービーの映画化は、2009年にユニバーサル・ピクチャーズによって初めて発表された。その後2014年にソニー・ピクチャーズが映画化権を取得したが、企画・制作段階で何度も脚本家や監督が変更され具体的に進まないまま何年も過ぎていった。出演者については、コメディアンのエイミー・シューマーや女優のアン・ハサウェイなどがバービー役の候補にあがっていたとされている。
お蔵入り版『バービー』の主演や脚本家が明かした降板理由とは
エイミーはアメリカのテレビ番組『Watch What Happens Live with Andy Cohen』で、バービー役を降板した理由について聞かれると、「ただのクリエイティブな相違に過ぎなかった」と明かし、近日公開される映画については「とてもフェミニスト的でクール」なので楽しみにしているとコメント。自身が出演を辞退したソニー版の『バービー』は「フェミニスト的でクールではなかったということ?」と聞かれると「そういうことです」と答えた。
また、ソニー版の『バービー』には、映画『JUNO/ジュノ』で第80回アカデミー賞の脚本賞を受賞した脚本家のディアブロ・コーディも、2018年に制作段階でソニー版の『バービー』から降板している。ディアブロはGQのインタビューで、プロジェクトについて振り返った。
「今TikTokで”バービー”と検索すると、女性らしさを称賛する素晴らしいサブカルチャーが存在しますが、当時この痩せた金髪の白い人形をヒロインにするのは至難の業でした」と、今でこそ、様々なルックスや職業の女性がフェミニズムの一員であるという考えが広がっているが、当時のフェミニズムは“強い女性”や“俗に言う女性らしさに反発する女性”が前面に出たものだったため、金髪の白人女性であるバービーとフェミニズムをリンクさせることは難しかったと振り返った。
さらにディアブロは、バービーらしさに「忠実なものを書く自由はなかった」と明かし、制作サイドが「バービー人形にガールボス(※)的なひねりを加えたかったのですが、私にはそれが理解できませんでした。なぜならそれはバービー人形ではないからです」と、作品の方向性に賛同できなかった理由も明かした。
※ガールボス:ビジネスで成功した女性のこと。アパレルサイトNastyGalを成功させたソフィア・アモルーソの自伝『ガールボス』から誕生した言葉。特定の女性のみに焦点を当てたフェミニズムだとして批判も強い。ちなみにアン・ハサウェイが『マイ・インターン』で演じた役は、ソフィアから少なからずインスピレーションを得ていることが明かされている。
またディアブロは、当時の企画には、同じくおもちゃが題材となっていた2014年のアニメーション映画『LEGO®ムービー』の影響が大きく影響したと回想している。この作品は批評家からも高評価を受け、全世界で4億6,800万ドルの興行収入をあげて大ヒットとなった。
『LEGO®ムービー』の大成功は製作チームの間でも話題になり、その成功からヒントを得ようとしていたそうだが、「それは私にとっては問題となりました。彼ら(『LEGO®ムービー』)があまりにもうまくやってのけたので。私が何か考えても、結局は二番煎じとなってしまったのです」とディアブロは振り返る。そんなディアブロは、ワーナー・ブラザース映画が製作する2023年版の『バービー』にも触れて、「でも今は、(『レゴ・ムービー』で敵役だった)ウィル・フェレルを実写版のバービー映画の敵役に起用しても、誰も気にしないくらい時間が経っています」と付け加えた。
紆余曲折の末、ついに完成した映画『バービー』
その後2018年にワーナー・ブラザース映画に映画化権が譲渡され、2019年にマーゴットが主演、グレタ・ガーウィグが監督として発表された。映画化までに紆余曲折あった映画『バービー』。今の時代に、バービー像がどのように描かれているのか期待が高まる。
2023年7月21日にアメリカで公開、日本では8月11日に公開予定。