8月11日(金)公開の映画『バービー』。ラストシーンはなぜ“あの場所”で終わったのか? グロリアの2分強のスピーチが次世代にもたらす可能性とは? あとついでにケンのことも。グレタ・ガーウィグ監督がフロントロウ編集部に語った。(フロントロウ編集部)

※この記事に映画『バービー』のネタバレが含まれます。

グロリアの2分超のスピーチ、「束縛から解放されるきっかけに」

画像: 『バービー』には、アメリカ・フェレーラ(右)演じるグロリアとアリアナ・グリーンブラット(中央)演じる娘サーシャが人間として登場する。

『バービー』には、アメリカ・フェレーラ(右)演じるグロリアとアリアナ・グリーンブラット(中央)演じる娘サーシャが人間として登場する。

 『バービー』ではクライマックスにさしかかる頃に、アメリカ・フェレーラ演じるグロリアが女性の本音をぶちまけるセリフが、文字数にして約1400文字、長さにして2分強ある。スカッとする決めシーンであり、心に突き刺さる感動シーンでもあるが、アメリカが女性としてしたこのスピーチの場に、アリアナ・グリーンブラット演じる娘サーシャがいたことは大切なことだと監督は話す。

 「私は生涯を通じて、同世代の女性、下の世代の女性、上の世代の女性から常に助けられてきたと感じています。そして、自分より上のグループから学ぶこともあれば、下のグループから学ぶこともあります。さらに、世代を超えて人と人とが語り合うことはとてもパワフルなことだと思っています。サーシャは非常に頭が良く、思慮深く、博識で、自分の主張を明確にすることができる人です。そんな彼女が、母親が抱える矛盾をすべて聞くことは、彼女が母親の抱える束縛から解放されるきっかけになるかもしれない」

 さらに監督は、世代を超えた関係のなかでも、『バービー』のグロリアとサーシャや『レディ・バード』のマリオンとレディ・バードのような“母と娘”の関係に強く惹かれるとして、その理由をこう明かした。

 「私にとって、母と娘は非常に興味深い題材です。だって、『お母さんとはどのような関係にありますか?』と聞いて、『すごくシンプルです』と言う人はいないですよね。そんなこと言ったことある人、今までいたことはない。多くの感情が渦巻く関係だからこそ、強く興味を惹かれるのです」

バービーのエンディングに込められた思い

画像: バービーのエンディングに込められた思い

 そしてラストシーンのジョークも強烈な記憶に残る。人間界での生活をはじめたバービー(マーゴット・ロビー)が、婦人科に行って「婦人科検診に来ました!」と言って映画は終わる。バービーには女性器がないことは劇中でもジョークになっていたため、最後も“バービーいじり”で締めたわけだが、なぜ婦人科なのか?

 「(あの終わり方は)面白いと思いました。私自身笑ってしまいましたし、平凡だからこそ痛快だと思いました。企業のCEOになるだとか、バービーが非凡なことを成し遂げた!という終わりにはしたくなかったのです。普通なことだからこそ素晴らしく感じました。マーゴットもこのアイディアを興奮して受け入れてくれましたね。面白いと思ってくれた。でも、あのセリフを言うときの彼女の嬉しそうで誇らしそうな言い方ですよね。あれをあんなに嬉しそうに言う女性を見たことがないので、すごく面白いと思いました。平凡なことが偉業になれるなんて素晴らしいじゃないですか」

 女性にとって婦人科通院は平凡なこと。それは逆に言うと、女性の人生とは切り離せないインパクトの大きいことでもある。それを大作映画に登場させたこと、しかも大トリのラストジョークとして最後までエンターテイメントを忘れずに描いたことは、さすがガーウィグ監督だ。

 ちなみ『バービー』の公開後には、テレメディシン(遠隔医療)サービスを展開する米Zocdocが、より多くの女性が婦人科を受診することを奨励することを目的とした約14億円のイニシアティブをローンチ。Zocdocを通して婦人科の予約が行なわれるたびに、マテル社の名前がついたUCLAマテル小児病院に25ドルが寄付されるという。

 また、余談だが、エンディングのシーンは実は最後に撮影されたもの。「エンディングを最後に撮るなんて、映画製作ではなかなかありません。本当は3テイク目でもう良しとはなっていたのですが、どうしてもなごりおしくて、さらに10回くらいやらせて、全部で13回くらい演じてもらいました」と監督は笑う。

ケンには雄たけびをあげるシーンが必要だった

画像: ケンには雄たけびをあげるシーンが必要だった

 劇中のバービーランドではジェンダーのパワーバランスが現実世界と逆なため、社会はバービーたちが仕切っており、ケンたちの扱いは雑。女性のサポート役を喜んで引き受け、ファッションや美容に本気でこだわるケンたちは、そういったことを“男らしくない”と嘲笑するような男らしさの呪縛から解放されている。一方で、自分の存在意義に悩んで“暴れ”はじめるわけだが、監督はそんなケンにも触れた。

 「ケン人形はバービーが誕生した2年後に誕生しました。だから彼はいつも後回しにされているような存在で、バービーにとっては車ほどにも価値のない存在なのかもしれないし、仕事も住むところもない。それって本当に悲しいことですよね。でも、ケンの視点から映画を考え始めたとき、ああ、これは彼にとっては悲劇なんだと気づいたのです。だから、とても面白くありながら心動かされることだった。バービーランドはある意味で現実世界に対して逆転した世界だから、彼はケンにとっての“I am woman, hear me roar(私は女)”の瞬間を見つけなくてはいけないという気がしたのです」

 “I am woman, hear me roar(私は女、私の雄たけびを聞いて)”は、第二派フェミニズム運動の賛歌として支持された、オーストラリア人歌手ヘレン・レディの1971年の楽曲「私は女(原題:I Am Woman)」に登場する歌詞。ケンは『バービー』のなかで、“バービーのボーイフレンド”という自他共の認識から飛び出し、自身が持つべき権利を強く求めるために雄たけびをあげるシーンが必要だったというわけだ。

 映画『バービー』は8月11日(金)公開。

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