「私の胸をつかむのはやめてください」
グラミー賞ノミネートシンガーであるケラーニは、2022年の英公演で、群衆をかきわけて移動中に何者かに下着のなかに手を入れられて性器を触られたとSNSで報告。その後インスタグラムのストーリーズを更新したケラーニは、例え自分のパフォーマンスが性的要素の強いものに見えたとしても「あなた方に境界線を越える権利はありません」と批判。性暴力サバイバーであるケラーニは、このような件は悪い記憶を呼び起こす「トリガー」になるとも語った。
ビリー・アイリッシュも10代の頃から胸を触られる加害をたびたび受けている。ビリーはファンと距離の近い交流で知られるのだが、オンライン上では、ビリーが近づいてきたときに胸付近に手が伸びる様子を収めた動画が複数あがっている。このような行為はライブ前のミート&グリートでも起きているよう。ビリーはそのような不適切行為をいつも笑顔のままスルーしているが、2019年5月にインスタグラムで「私の胸をつかむのはやめてください。たいしたことないように振舞っているけど、実際はそうじゃない」と訴えた。この時、ビリーは17歳。
セクシャル・ハラスメントはからだに限ったことではない。2019年にグラミー賞新人賞候補となったマギー・ロジャーズは、2019年の米公演中に、複数の観客から「脱げ!」「君かわいいからね!」という言葉が飛んだことをSNSで報告。「この場を借りてはっきりと言わせてください。私の公演では、ハラスメント、無礼、他人の品位を落とす行為は許されません」と綴った。
男性シンガーへの加害も報告されている。2019年にはニック・ジョナスがパフォーマンス中に、背後にいたファンから股間やお尻を触られて、手を振り払ったり後ろを振り向いてやめるよう促したりする動画がSNS上で拡散。2014年にはカントリーシンガーのティム・マグロウが股間を触ってきたファンを殴る騒動があった。
今回紹介した実例はごく一部。いつもは「たいしたことないように振舞っている」と明かしたビリーのように、性加害を受けている事実を黙っているアーティストは非常に多いと見られている。
さらに音楽界では、観客が観客に触るという性加害も多く起きている。カリフォルニア州インディオで開催される音楽フェスのコーチェラ(6日間のフェス)とステージコーチ(3日間のフェス)では、性加害への対処を強く求める声を受けて「Every One」というキャンペーンを導入。会場内に訓練を受けたアンバサダーを配置するなどしている。ただ、キャンペーン立ち上げ後の2019年のDesert Sunの調査では、6人に1人の女性が通りすがりにお尻や胸を触られるといった性的ハラスメントを受けたと回答。また、3分の2がEvery Oneキャンペーンの存在を知らなかったという。