自伝『Pageboy(ペイジボーイ)』を出版した俳優のエリオット・ペイジが、アメリカ議会図書館が開催したブックフェスティバルのトークイベントに登壇した。(フロントロウ編集部)

「トランスの人の経験は直線ではない」

 2020年12月にトランスジェンダーであることをカミングアウトしたエリオット・ペイジ。この日のトークイベントでは、ジェンダー移行やテストステロン投与についての話題に触れた。

 ジェンダー移行について、「自分のウェルビーイング(※心とからだの健康、安心感、満足感)を向上させて、自分が長いこと感じていた永遠の不快感を解消する手助けとなる」と思っていたというエリオットだが、実際に移行してみて「ここまで違う気持ちになれるなんて、ここまで落ち着けて、今を生きられて、刺激を受けてクリエイティブになれる余裕ができるなんて、まったく想像していなかった」と、自身でも驚いたことを明かした。

 「27歳まで厳しくクローゼットの中にいた(※LGBTQ+であることを隠していたという意味)」そうだが、過去の自分に対して言えることとしては、「あなたが感じている恥は、あなたが抱えている恥は、あなたのものではありません」「自分自身になることはすごく怖いことだし、圧倒されるかもしれないけど、本当にそれをする価値がある」とコメント。

 エリオットは今年、自身の道のりを綴った自伝『Pageboy』を出版した。同書は時系列では書かれていないのだが、これは、「クィアやトランスの人の経験は直線ではないからです。我々は(真の自分に)近づくときもあれば、離れることもある」からだと説明。

 同書では、トランスジェンダーであるとカミングアウトした時に、勘違いではないか誤認ではないかというリアクションを友人からも受けたことが明かされている。これはトランス男性がよく受ける言葉だそうだが、本人は日々受ける偏見について、「もう慣れたと言うのはあまりよくありませんかね」と笑い、「前に比べると、ほかの人の発言や考えが気にならなかったところに今はいます」と語った。

 「今の私は本質的にずっと良い状態で、今を生きられていて、もっと幸せ」だからこそ、俳優としての仕事に「著しい変化を与えた」と明かしたエリオット。「もしもトランスだとカミングアウトして仕事を失っていたとしたら、それはそれでいい。私は自分の人生を生きたいのです。正直な形で」と付け加えた。

 その後の質問タイムでは、トランスだとカミングアウトした人の思いを尊重しない人に何と言うかと聞かれると、「それは誰? その人の電話番号を教えてよ」とジョーク。「信じられないほど無神経で、優しくないと言ってやりますね。自分がそのようなことを言ったときに他の人が自分に対してそのような反応をすることを望むのかと。そういう人は、もう少し考える時間を取り、トランスの人たちについてもっと学ぶべきかと思います」と続けた。

 次に、話題がテストステロンの話になると、「2年ちょっと前からテストステロン投与を受けています。その経験はそれぞれで異なるもので、求めているものや身体との関係はそれぞれ違います。私自身の話で言うと、人生に劇的に良い変化がありました」と回答。

 そして、自身にとってのトランス・ジョイ(※トランスジェンダーの人々が経験する幸福や喜び)に触れると、「自分には、素晴らしいトランスの友達がいます。みんなで一緒に集まってカラオケに行ったりするとき、みんなでその瞬間を楽しんでいて、みんな一緒で、自由を感じていて...そういうコミュニティを感じられる瞬間はスペシャルな経験です」とした。

画像: ©Elliot Page/Instagram

©Elliot Page/Instagram

 エリオットは今年5月には、上半身裸で太陽を浴びる写真をインスタグラムにアップ。「以前は夏は性別違和がひどくなる時期でした」としたうえで、「今、太陽の光を浴びることがとても気持ちいい。自分の身体で感じる喜びを、こんなにも経験できるとは思っていませんでした。ジェンダー・アファーミング・ケアが私に与えてくれたものにとても感謝しています」と明かした。

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