「娘に毎日読み聞かせしている絵本、男の子が主人公のものが多い…かな?」。娘が2歳のときにふと抱いた思いをきっかけに、娘に読む絵本のジェンダーを調査し始めた。これを3歳まで続けてみた結果は?(フロントロウ編集部)

女の子が主人公で、ジェンダー規範が強くない国内の絵本は111冊中4冊

 今回の調査の対象にしたのは、“生活しているなかで自然と出会う絵本”のみ。①書店・図書館・児童館でおすすめ(平置き)されている本、②図書館の返却コーナーに置かれている本、③「〇歳 絵本 おすすめ」とグーグル検索して上位に表示されたサイトでおすすめされている本を対象にした。自分で探して手にした本などは除外した。

 その結果、合計111冊中、男の子・男性が主人公のものは58冊、女の子・女性が主人公のものは17冊だった。つまり、男の子の主人公が登場する絵本は女の子の主人公が登場する絵本の約3.5倍。

 そのほかは、男女が主人公のものが5冊、ジェンダーフリーなものが13冊、多数のキャラクターが登場して明確な主人公がいないものが18冊だった。

画像1: 女の子が主人公で、ジェンダー規範が強くない国内の絵本は111冊中4冊

 そして、女の子が主人公の絵本は17冊あったが、うち4冊は主人公の女の子が料理やお手伝いをしている内容で、2冊が男性や男の子に助けてもらう内容だったため、女の子が主人公の絵本でジェンダー規範が強くない内容のものに限ると11冊という結果になった。うち国内の絵本は4冊。

 料理やお手伝いが悪いわけでも、他者に助けてもらうのが悪いわけでもない。ただ、割合としてそこが大きくなると、家庭の仕事は女性の仕事、女性よりも男性の方が優れている、という誤ったステレオタイプを植え付けてしまうことになる。

画像2: 女の子が主人公で、ジェンダー規範が強くない国内の絵本は111冊中4冊

 また、明確な主人公がいない絵本でも、男女差は見受けられた。多数のキャラクターが登場する絵本18冊中8冊で、唯一登場する人間のキャラクターが男児だったか、唯一登場する一人称が男性のものだった(例:たくさんの動物が登場して、うち一匹が「おいら」と言う)。

 また、海外の絵本の翻訳にも気になるところがあった。今回は139冊が海外の絵本の和訳版だったが、うち3冊で、原作ではジェンダーが明記されていないのに日本語版では男児として表現されていた。英語の“we”、“I”、“it”といったジェンダーのない言葉が「僕」「僕ら」「おいら」という一人称で表現されていたのだ。

ジェンダーを示す必要がないキャラクターでも「僕」

 ちなみに、絵本の主人公のジェンダーが不均一という問題は日本に限ったことではない。今回の調査対象となった海外の絵本の和訳版39冊のうち、女の子が主人公の絵本は7冊で、男の子が主人公のものは3倍の21冊。

 2017年にイギリスで最も人気だった絵本100冊を対象とした英調査では、男性キャラクターが主人公である割合は女性の2倍だったことがわかり、この調査の対象にもなったベストセラー絵本『グラファロ―もりでいちばんつよいのは?』の著者ジュリア・ドナルドソンは、とくにジェンダーを示す必要のないキャラクターを含め、無意識のうちに男性のキャラクターを多く登場させていたと、2020年にSydney Morning Heraldに語った。

 “とくにジェンダーを示す必要のないキャラクター”というのは大事な点である。子どもの絵本のキャラクターには動物やモンスターが登場することが多い。さらに、人間であっても幼い子どもは大人に比べて性差が大きくないため、一見では男女の見分けがつかない場合が少なくない。そういった絵本では、「息子」や「兄」といった関係性を示す必要がない限り、「私」という表現を使えば男女どちらにでも捉えられるが、「僕」という表現が選ばれる傾向にある。

画像: イギリスの著名な絵本作家ジュリア・ドナルドソンも、無意識のうちに男の子・男性のキャラクターを多く登場させていたという。

イギリスの著名な絵本作家ジュリア・ドナルドソンも、無意識のうちに男の子・男性のキャラクターを多く登場させていたという。

 絵本の主人公の性差のような、曖昧かつ微妙な形で存在する性差別はカジュアル・セクシズム(カジュアルな性差別)と呼ばれる。些細なことのように見えるので見過ごされがちだが、こういったカジュアル・セクシズムの積み重ねがバイアス(偏見)を作っていく。

 考えて欲しい。女の子よりも男の子が挑戦したり失敗したり様々な形で活躍しているストーリーを何年も読み続けた女の子たちは、女の子と男の子は平等に活躍できる能力を持っていると考えられるだろうか?

 2017年に米Scienceに発表された研究では、子どもたちは5歳の時点では「すごくすごく賢い」という言葉に男女差を示さなかったものの、6歳になると、男の子は男の子を「すごくすごく賢い」とした一方、女の子は女の子よりも男の子を「すごくすごく賢い」として挙げる子が増えるという結果となったという。

 そうなる要因は多々あるだろうが、ジェンダーバイアスを生み出す原因は少しでも減らすのは良いこと。とくに絵本は子どもが毎日触れるもの。子どもの可能性を狭めないためにも、多様なストーリーに自然と出会えるような環境が作られてほしいと願う。

※調査では、男性の一人称(僕・俺・おいら等)を使用しているキャラクター、男性名がついたキャラクター、ひげのような男性の身体的特徴が明確であるキャラクターを男性・男の子と判断した。

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