レイプ加害者の俳優ダニー・マスターソンを友人セレブたちが擁護していた件。性暴力が告発されたときに“だってあの人は良い人なのに”という誤った擁護が出ることに批判が集まるなか、加害者の処遇ばかりにスポットライトを当てずに、被害者への影響や被害者たちの経験も論じることの重要性も訴えられている。(フロントロウ編集部)

※この記事には性暴力に関する記述があります。

「素晴らしい男性」でも性暴力加害者になりえる

画像: アシュトン・カッチャー、ミラ・クニス、ダニー・マスターソン、2000年の映画『トラフィック 』プレミアにて。

アシュトン・カッチャー、ミラ・クニス、ダニー・マスターソン、2000年の映画『トラフィック 』プレミアにて。

 ハリウッドを揺るがしている、コメディ番組『ザット'70sショー』のダニー・マスターソンのレイプ加害とセレブたちによる擁護騒動。この件では、女性たちをレイプした罪で有罪判決を受けたダニーの裁判で、アシュトン・カッチャーとミラ・クニス夫妻、ジョヴァンニ・リビシなど友人セレブたちが、ダニーの人格を称える手紙を裁判官に提出していたことが後から発覚して物議を醸している。

画像: 「素晴らしい男性」でも性暴力加害者になりえる

 友人セレブたちの行動が大きく報じられたあと、俳優のクリスティーナ・リッチは、“良い人だから性加害をするわけがない”という考えをインスタグラムで次のように批判した。

 「私たちが愛し尊敬していた人たちがひどいことをすることが時にあるのです。あなたにはしなかったかもしれないし、私たちには私たちから見える相手しか知る由がないですが、その人たちがそれをしなかったことにはなりません。虐待を信用しないのは罪です。

 私たちが『素晴らしい人』だと思っている人も、捕食者や虐待者になる可能性があります。受け入れるのは難しいことですが、受け入れなければならない。被害者(女性、子ども、男性、少年)を応援すると言うのであれば、私たちはこのような姿勢を貫かなければなりません。

 残念ながら、私に対してはとても素敵だった『素晴らしい男性たち』が、私生活では虐待者だったことが証明された経験がたくさんあります。私自身もその経験でもあります。

 被害者を信じましょう。名乗り出るのは簡単ではありません。有罪判決を得るのも簡単ではありません」

俳優たちが『被害者の経験』に焦点を当てるよう求める

画像: 俳優たちが『被害者の経験』に焦点を当てるよう求める

 そんなクリスティーナが、再びインスタグラムで発言。日本時間9月13日に、俳優のリア・レミニが、レイプ加害者の処遇ばかりに焦点を当てるのではなく、加害が被害者にどのような影響を与えたかといった被害者の経験も注目されるべきだと主張した投稿に、以下のようにコメントした。

 「ありがとう。私たちは皆、行為そのもの、そしてそれが引き起こした取り返しのつかない驚くべき損害に焦点を当て、サバイバーたちを支援すべきです。常にそうすべきなのです。レイプは死に似ています。前の自分を失うから。平穏は失われる。人々はこのことを理解する必要があります。その傷は永遠につきまとうのです」

ダニー・マスターソン、レイプ事件の被害者3名の意見陳述

 ダニー・マスターソンのレイプ加害事件の裁判に提出された被害者の意見陳述書より、一部を抜粋して紹介する。

被害者1

 「(被害後)私は極度の自殺願望を持つようになりましたが、娘や両親への愛や心配が強すぎて、彼らをそのように傷つけることはできなかった。私はアパートのベッドで一人嗚咽し、生まれてこのかた一度もしたこともないのに神への祈りを捧げ、あなたが本当にいるなら、お願いだから私を起こさないでと懇願しました。涙が顔を伝い、枕を濡らしながら、時には何時間も泣き続け、深い眠りにつき、数時間後に起きて失望するのでした」

被害者2

 「あなたは私をレイプしたとき、私から盗みました。レイプとは心を盗む行為です。あなたは私の人生に傷をつけた。あなたは私の自己価値の重要な部分を盗み、喜ぶ能力をにぶらせた。あなたは私に、自分のあらゆる部分に敵対させるようにした。何よりも最悪だったのは、あの夜あなたが私に押し付けた憎しみ、羞恥心、恐怖のプリズムの中で人生を送ることになったため、その後何年もの間、他人を信頼する能力や、危険や善意を適切に見分ける能力が変形してしまったことです。あなたは私のコミュニティーの中で、私の親しい友人たちが人間性を保証するような知人だった。みんな『ダニーは素晴らしい人だ』と言っていました」

被害者3

 「つねに自分の体を犯罪現場と見なすようになり、壊れていて変形している自己評価と同じように見えてほしくないという恐怖と羞恥心のせいで、助けを求めることができなくなりました。レイプされたとき、最も汚れる部分は表面的ではありません。細胞レベルで傷つくのです。正直なところ、レイプされたことの影響は、いまだにうまく言葉では表現できません。ただ、症状だけは知っている。私は不眠症に苦しみました。24時間起きたままということもよくありました。暗闇が嫌いです。私は誰の隣でも眠ることができません。私のとてもやさしい夫の隣であっても。こんなにも善良で、品行方正で、優しく、いつも忍耐強く、決して疑うことをしない夫を持てるなんて信じられません。結婚して14年間、彼が私に危害を加える可能性を感じたことは一度もないです。それなのに、私はベッドで彼の隣で眠ることができません」

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