2021年のバロンドールで指摘された問題が2023年も
サッカー界の年間最優秀選手に賞を贈る式典「バロンドール」が10月30日に開催され、男子はアルゼンチン代表のリオネル・メッシが、女子はスペイン代表のアイタナ・ボンマティが受賞した。
男子の方では、メッシが史上最多受賞回数を8回に更新したことや、2位のノルウェー代表アーリング・ハーランドが優勝すべきだったのではといったことで論争になったが、女子の方では、大会側の根本的な問題が海外のファンやスポーツメディアで論争を呼んでいる。
バロンドール2023が開催された10月30日は、女子選手にとって代表チームの試合期間中。賞にノミネートされていた人気女子選手の多くが代表チームの試合のため、式典に参加できなかった。
イングランド女子代表からノミネートされたメアリー・アープス、ミリー・ブライト、レイチェル・デーリー、ジョージア・スタンウェイも代表チームとしてベルギー戦があったため参加を断念。
スタンウェイは記者会見で、ノミネーションを嬉しい「功績」であるとしながらも、「参加できなかったことは残念です。選手間でも、将来的には試合の前日の開催でなければという話をしました」とコメント。この事態はフラストレーションの溜まることだったかという質問には、「はい」と答え、「人生に一度しかないかもしれないような機会です。このような賞に選ばれる機会はまたとないかもしれない」と続け、「もう少しうまくプランニングしてもらえれば、女子選手の多くもその場にいられたかと思います」と付け加えた。
また、イギリス代表のサリナ・ヴィーフマン監督も、「このような式典では(女子)選手たちも参加できるような計画をたててくれることを願います」と思いを明かした。
このような結果は“偶然そうなった”という言葉で済まされそうだが、これほどトップレベルのイベントで“偶然”は済まされない。年に一度の一大イベントに、リオネル・メッシや、アーリング・ハーランド、キリアン・エムバペなどの受賞候補が誰もいないなんてことがあってはならない。だから、このような式典は選手たちのスケジュールも考えて企画されるのだ。つまり、主催者側に“女子選手のスケジュール”は頭になかったか、あったとしても別のことが優先されたということ。
バロンドールでは2021年にも同じ事態が起きており、当時、英The Telegraphのスポーツ記者トム・ギャリーが『バロンドール授賞式の日程は、女子サッカーが後回しにされたままであることを証明している』という記事を執筆していた。同記者は今年、Xで「これは2年前にも書いたことですが、今でも同じ問題が起きています。バロンドール授賞式が女子の国際大会の真っ最中に開催されることは、主催者が女子の受賞に無関心であることを示しています」と綴った。
なぜノバク・ジョコビッチ? 女子バロンドールの受賞シーンも物議
バロンドールの式典では、もう一つ物議を醸したことがある。それが、女子のバロンドールを授与したのが、テニス界のスーパースターであるノバク・ジョコビッチだったこと。
スポーツ界には多くの功績を残した女子選手がいるにもかかわらず、なぜここでジョコビッチが起用されたのかと疑問視する声が噴出。女子スポーツへの理解や敬意よりも、開催側が思い描くスター選手をステージに上げることが優先されたように見えると批判されており、米ESPNは次のように報じた。
「スポーツにおける女性のイメージを高めることに生涯を費やしてきたセリーナ・ウィリアムズや、選手としてのキャリアが終わってもなお女子スポーツに伝説的な影響を与え続けてきたビリー・ジーン・キングだったら、眉をひそめることもなかったでしょう。もし男子選手でなければならないとしたら、フェミニストとして声を挙げているアンディ・マレーはどうでしょうか? スペインの偉大なラファエル・ナダルなら、少なくともボンマティと関係があったでしょう」。