『ラ・メゾン 小説家と娼婦』世界16ヵ国ベストセラーが原作の衝撃作
フランスからベルリンに移り住んだ27才の小説家エマ（アナ・ジラルド）は、作家としての好奇心と野心から、娼婦たちの裏側に惹かれてゆく。そして、大胆にも彼女たちの実情を理解するために、有名な高級娼館“ラ・メゾン”に娼婦として潜入する。危険と隣り合わせの女性たちの日常、そして孤独や恋愛の尽きない悩み…。そこでの日々は、エマにとって新たな発見に溢れていた。そして2週間のつもりが、いつしか2年もの月日が流れてゆく。果たして、エマがその先に見るものとはー。
実際に娼館で働いた体験を小説にする大胆すぎる取材方法にフェミニストたちから激しく批判も浴びた小説『La Maison』。しかし同時に、アンダーグラウンドで生きる女性たちのリアルな姿が大きな共感を呼び、世界16ヵ国で大ベストセラーになった。
映画版の監督には、原作者からの強い希望で、『ワンダーボーイ』（19）で熱い注目を浴び、『マダムのおかしな晩餐会』(18)、『THE INFORMER 三秒間の死角』(19)などで女優としても活躍する気鋭の女性監督アニッサ・ボンヌフォンが起用。
本作の公開にあたって「女性が自分の身体をコントロールする権利、つまりはセクシュアリティをコントロールする権利が今、問われている、この映画の舞台が売春であるならば、真のテーマは女性のセクシュアリティと欲望である。だからこそ、『ラ・メゾン 小説家と娼婦』のような映画は、今日、強い共感を呼んでいるのだと思います」とコメントを寄せている。
アナ・ジラルドがインタビューで役作りや作品を語る
主人公が＜自らの意思で娼婦＞になることを選ぶ。原作『La Maison』を読んだ際「大きな衝撃」を受けたというのは、主人公を演じるアナ・ジラルド。
一見、センセーショナルな話題が先行しがちなテーマだが、本作の脚本も手がけたアニッサ・ボンヌフォン監督は本作を通して「ある娼婦の状況や、この職業のさまざまな側面を超えて、恥じることなく＜女性であること＞の自由を語りたかった」とその想いを代弁する。
「たとえそれが美しくなく、道徳的でないとしても。そこがこの脚本で最初から強く印象に残っている点です。資質もあれば欠点もある女性が、理解されなくてもプロジェクトに取り組み、遂行する物語です」と語り、「（娼婦となる主人公）エマは誰かを救うためにいるのではなく、ただ冒険に乗り出します。一般的には、我々はキャラクターが他の人を救うことを望みますが、現実には女性には多様性があり、多面的な存在です。エマは＜受け入れるか、拒否するか＞と言っているのですが、それを自分なりの解釈で示したかったんです」とその想いを述べる。
娼婦というのは、精神的にも肉体的にもハードな役柄。この役を引き受けた日、家族や友人からは「企画と監督にはとても魅力を感じるが、このキャラクターにはある種特別な大胆さが必要だ」と意見を言われたという。そして「もし、身近な人から『よくもまあ、こんなキャラクターを演じようとしたね』とか言われたときに、当初の自分の決断を肯定しなければと努めていたのです」と述べ、そのため、「監督の作品に、完全に、迷いなくコミットするため、準備のために6ヶ月間彼女と一緒に働いた」という。
結果的に「チームの人たちは、この映画へのアプローチ、そして脚本、監督に本当に熱心でした。自分の決断は間違っていなかったーと安心すると同時に、他人の目を気にしないことを学びました」と振り返った。
自分に嘘をつかないという真摯な姿勢で、結果的に、しばしば他人を惑わせてしまうエマ。そのため「エマという役は、自分自身と本当に向き合って生きるということがどういうことなのか教えてくれました」とアナ・ジラルドは言い、実は「わたしが話す文章はすべて、確認を求める、クエスチョンマークで終わっていました。それに対してエマは、自分の言っていること、考えていることの確認や承認を必要としない、完全な＜ストップ＞で文章を終わらせています。彼女は完璧に自分自身であり、他人の考えから自由である。この役を演じることは、本当に驚きがあり楽しかったです」と興味深い事実を明かした。
最後に、娼館で働く女性たちの関係について「わたしの俳優としてのキャリアとエマの人生には、思いがけない共通点がある」と言う。
「娼館＜ラ・メゾン＞の女性たちと同じように、女優同士でもセックスの話はほとんどせず、家族、愛、仕事について話をします。結局、わたしたちの人生で何をするかということが、わたしたちを表しているわけではないのです。しかし、彼女たちがお互いを理解し、支え合う世界でもあります。彼女たちは複雑な人生を分かち合い、姉妹のように語り合う。わたしたち女優たちもまた、この共通点を持っています」と、働くステージは違っても、あくまでもシンプルで、自然で、誠実なものという普遍的な事実を語った。
『ラ・メゾン 小説家と娼婦』は12月29日(金）より新宿バルト９、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。
