静かな夜の始まりにふさわしい楽曲が届いた。UKロックシーンの中核を担うウルフ・アリスが、最新シングル「ザ・ソファ」を7月11日にリリース。これは、8月に控えるニュー・アルバム『ザ・クリアリング』に収録される一曲であり、新章の幕開けを告げる決定的なステートメントとなっている。

ギター・ロックの印象が強い彼らが今作で選んだのは、ピアノを主軸とした静謐なバラード。喪失、変化、そして年齢を重ねることの意味を、エリー・ロウゼルの透き通るボーカルが丁寧に紡いでいく。プロデューサーには、グラミー賞常連のグレッグ・カースティンが名を連ね、サウンドの深みと繊細さにさらに磨きをかけた。

エリー自身が「過去に執着しない心の変化」について語るこの曲は、ツアーの喧騒から家庭の静けさへと移り変わる心象風景を映し出す。人生のリアルとは、意外とソファの上にあるのかもしれない。

そして、この詩的なバラードの世界をより豊かに広げるのがミュージックビデオの存在だ。映像監督にはフィオナ・ジェーン・バージェスを迎え、エリーがソファに腰掛けたままノース・ロンドンの幻想的な夏を旅する様子を描く。フェス後の高揚と静寂が交差するその風景は、まさに“ブリティッシュ・サマーの幸福感”そのもの。

前作「ブルーム・ベイビー・ブルーム」との流れを受け、進化を続けるウルフ・アリス。音楽の形を変えながらも、その本質はどこまでも誠実だ。