FRONTROW

マーゴット・ロビーの新作は、スクリーンではなくスマートグラスで“体験”する

FRONTROW Editorial Dept.
BY FRONTROW Editorial Dept.
マーゴット・ロビーの新作は、スクリーンではなくスマートグラスで“体験”する
写真:MDE/ Splash News

 今年9月のヴェネチア国際映画祭で、マーゴット・ロビーが関わった新作が世界初公開される。ただし、その作品に彼女の姿は映らない。装着するのはスマートグラス。鑑賞者が向かうのは、ガラパゴス諸島だ。(フロントロウ編集部)

声で案内する“最後の楽園”

 マーゴット・ロビーがナレーションを務めるのは、体験型作品『Galapagos: The Last Eden(原題)』だ。ガラパゴス諸島の自然を、鑑賞者が実際に歩き回っているかのように体験できるイマーシブ(没入型)作品で、Atlantic StudiosがGoogleと共同でAndroid XR向けに製作している。監督を務めるのは、自然史ドキュメンタリーの分野で長年実績を積んできた英国のプロデューサー、アンソニー・ゲフィン(Anthony Geffen)だ。

 つまりこれは、劇場のスクリーンで見る映画ではない。鑑賞者はスマートグラスを装着し、ダーウィンが進化論の着想を得るきっかけとなった島々を巡る。マーゴットの声が、その体験を案内するナレーションとして流れる。姿を見せるのではなく、声で作品の世界へと導く役割を担う。

 7月15日に発表されたラインナップによると、この作品は第83回ヴェネチア国際映画祭の「ヴェネチア・イマーシブ」部門のコンペティション作品として世界初公開される。会場となるのは、リド島から水上バスで約3分のラザレット・ヴェッキオ島だ。

10周年の部門に集まった、意外な顔ぶれ

 ヴェネチア・イマーシブは、映画祭の中でもXR(クロスリアリティ)作品を扱う部門で、今年10周年を迎える。米Deadlineによると、今年は26カ国から68作品が選出され、そのうち30作品がコンペティション部門に選ばれた。

 名前を並べてみると、この部門が“実験の場”にとどまらなくなっていることがよくわかる。『猿の惑星』シリーズなどで知られるアンディ・サーキスとジョシュ・ネルソン・ユセフが監督し、デイジー・リドリーとキャスリーン・ターナーが声を担当する『Nevatars(原題)』。モーリタニア出身のアブデラマン・シサコが監督し、オマール・シーが声の出演と製作を務める『Artou(原題)』。気候変動によって移住を余儀なくされるソロモン諸島の住民を追った『Solwata(原題)』では、マーク・ラファロがナレーションと製作総指揮を務め、フランスの画家ピエール・スーラージュに捧げた作品ではイザベル・ユペールが声を担当する。インドでは、『スラムドッグ$ミリオネア』などで知られる作曲家A.R.ラフマーンが製作に回った作品も選ばれている。

 さらに、今年1月に没後10年を迎えたデヴィッド・ボウイの未公開写真をもとにした音と映像の作品『Bowie: Unseen Unheard(原題)』も選ばれている。ボウイの公式フォトグラファーを務めたデニス・オレーガンが撮影した写真が素材になっているという。ハリウッドの主演級から巨匠、ロックのアイコンまでが、そろってスマートグラス向けの企画に名を連ねている状況は、数年前には考えにくかった。

 背景にあるのは、鑑賞のかたちそのものの変化だ。今年は、『Galapagos: The Last Eden』と『Nevatars』が次世代のスマートグラスを使った作品として選出されており、イマーシブな物語表現の進化を象徴している。ヘッドセットを装着して椅子に座るという、従来のVR体験のイメージとは大きく異なる。声の演技が持つ意味も、当然変わってくる。画面の外から状況を説明する語りではなく、体験する空間に寄り添う声として届くからだ。

出演にとどまらないマーゴットの現在

 マーゴットにとって、こうした「表に立たない関わり方」は珍しくなくなってきた。夫のトム・アッカーリーらと共同設立した製作会社ラッキーチャップでは、『バービー』の記録的ヒット以降も作品の企画・製作を続けており、8月5日からPrime Videoで配信されるドラマ『スターリング・ポイント あの夏、あの島で』にも製作総指揮として参加している。俳優として出演する作品とは別に、製作者として名前を連ねる機会も増えている。

 その一方で、俳優としての現場も動き出している。ブラッドリー・クーパーが監督・脚本・出演を務める『オーシャンズ11』の前日譚で主演の一人を務め、7月下旬からフランスで撮影に入る予定だ。夏はフランスで新作を撮影し、秋にはヴェネチアで自身がナレーションを務めた作品が披露される。並べてみると、ずいぶん振れ幅の大きい1年になりそうだ。

 ヴェネチア・イマーシブの審査委員長は、エミー賞受賞歴を持つアーティストで、フィリックス&ポール・スタジオの共同創設者でもあるポール・ラファエル。審査員には、イランの監督・アニメーター・ビジュアルアーティストであるネガール・モテヴァリメイダンシャーと、ベルギーの監督・脚本家ケイト・ヴートが名を連ねた。授与されるのは、ヴェネチア・イマーシブ・グランプリ、審査員特別賞、アチーブメント賞の3賞で、ガラパゴス諸島を巡る体験型作品が受賞作に名を連ねるかどうかは、9月の結果発表を待つことになる。

MORE

FEATURE

RECOMMEND