脚本を一行ずつ、何週間も。ローズ・バーン『ワンオペレーション』の役作り


9月18日に公開されるA24製作の『ワンオペレーション』で、ローズ・バーンはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。その役をどう作ったのかを本人が語ったインタビューが解禁され、メイキング写真4点もあわせて公開された。(フロントロウ編集部)
「安全ベルトを締めて乗り込み、ふらふらになって降りてきた」
ローズ・バーンが演じるのは、育児も家事も仕事も一人で背負い、少しずつ限界へ追い込まれていくリンダだ。この役で彼女は第75回ベルリン国際映画祭の銀熊賞(主演俳優賞)と第83回ゴールデン・グローブ賞最優秀女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞し、第98回米アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた。
出演を決めた当時を、バーンはこう振り返る。「脚本は並外れたもので、まるでジェットコースターだった」。そして読み終えた時の感覚を「安全ベルトを締めて乗り込み、ふらふらになって降りてきたような感じ」と表現した。
監督・脚本のメアリー・ブロンスタインについては、「彼女の創造的なひらめきがとてもスリリングだった。でも同じくらい重要だったのは、あの物語が彼女にとって、とても個人的なものだったということ」と語っている。ブロンスタインは心理学の修士号を持ち、国立病院で子どもを対象としたプレイセラピーに携わった経験もある人物で、重病の娘とモーテルで暮らした自身の実体験をもとにこの脚本を書いた。
撮影が始まる前に、二人で何週間もかけたこと
クランクイン前、バーンとブロンスタイン監督は何週間にもわたって脚本を一行ずつ読み込み、リンダという人物を組み立てていった。
「普通、演劇でもない限り、ああいう創造的な贅沢はなかなか与えてもらえない。だから、とてもわくわくした」とバーンは言う。映画の現場では、それだけの時間を役づくりに割けることのほうが珍しい。

監督の側にも狙いがあった。「ローズには、本当にそこまで行って、何が現実的かなんて心配しないでほしかった」。ブロンスタインは本作について「ネオリアリズムでもナチュラリズムでもなく、演技はもっと高みを目指すべきだった」とも語っている。現実をそのまま写し取るのではなく、リンダの精神状態そのものを観客に体感させる方向へ、演技を押し上げていったということだ。
リンダ役にバーンを選んだ理由を、監督は「ローズはいつも、どのリストにも入っていた」と明かす。そのうえで「この映画のユーモアはとても独特で繊細だけれど、ローズは台詞をどう扱えばいいのかを理解していた。彼女は本当に素晴らしい才能の持ち主」と続けた。
小道具チームと何度も話し合った、栄養管とボタンと音
今回解禁されたメイキング写真4点には、赤い照明に沈んだ寝室のセットや、撮影の合間にソファへ並んで座る二人の姿が収められている。
リンダを追い詰めるのは、仕事と育児と夫との関係だけではない。鳴り続ける医療機器、娘につながれた栄養管、崩れ落ちる天井、そして至るところに現れる「穴」。日常にあるものが一つひとつ、彼女の精神を削っていく。

バーンはその細部にこだわった。「栄養管やボタン、音について、小道具チームと何度も会い、話し合った」と振り返り、「細部に注意を払うことは本当にわくわくしたし、演じるうえでも、とても役に立った」と語っている。役の内側については「ただもう逃げたいという、血迷ったような欲求だった」「彼女は必死に逃げ出したがっている」と分析し、追い込まれた話でありながら笑ってしまう瞬間があることについては「私はダーク・ユーモアの虜なの」と明かした。
日本の各界から届いたコメントは「スリラー」で一致した
インタビューとあわせて、本作を観た日本の著名人からのコメントも公開された。並べてみると、ジャンルの受け止め方が驚くほど揃っている。
振付演出家でエンタメ産業カウンセラーの竹中夏海は「私たちは知っている。ワンオペが一番のスリラーということ」とコメント。映画監督の天野千尋は「どこにも逃げられないリンダの途方も無い絶望を、めくるめくスリラーとしてわたしたちに追体験させる」と評した。物書きのSYOは「ワンオペに殺されかけた私たちの実録映画」と書き、精神科医の名越康文は「これは映像による、心の外科手術なのだろうか」と表現している。漫画家のおかざき真里が寄せたのは、ひと言だけだった。「これは私の物語だーーー。」
俳優の前田敦子は「ローズ・バーンの演技が本当に凄まじくて、ずっと目が離せなかった」「本当に圧倒されました」と、オスカーノミネートを果たしたバーンの仕事を称えた。
共演には、第98回アカデミー賞授賞式の司会を務めたコナン・オブライエンや、ラッパーのエイサップ・ロッキー、『パティ・ケイク$』のダニエル・マクドナルドが名を連ねる。プロデューサーには『ワン・バトル・アフター・アナザー』のサラ・マーフィやジョシュ・サフディが参加し、編集は『ヘレディタリー/継承』以降アリ・アスター作品を手がけてきたルシアン・ジョンストンが担当した。
『ワンオペレーション』は9月18日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開される。

















