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母親は「子どもの付属物」じゃない。ローズ・バーン『ワンオペレーション』

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母親は「子どもの付属物」じゃない。ローズ・バーン『ワンオペレーション』
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ベルリン国際映画祭の銀熊賞(主演俳優賞)、ゴールデン・グローブ賞の最優秀女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲り、米アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた映画『ワンオペレーション』(原題:If I Had Legs I’d Kick You)が、9月18日(金)にヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開される。その直前に、主演のローズ・バーンとメアリー・ブロンスタイン監督のオフィシャルインタビュー、そして撮影現場を映したメイキング映像が到着した。(フロントロウ編集部)

「これは家族の物語ではありません」

育児も家事も仕事も、本来は複数人で担うはずのものをたったひとりで背負う——そんな“ワンオペレーション”の極限を描く本作で、ブロンスタイン監督が最初に手放したのは「家族」という枠組みだった。

監督は本作について、「これは家族の物語ではありません。ひとりの人間の物語です」と語っている。母と娘が出てくる映画でありながら、中心に置かれているのは家族関係そのものではなく、リンダという一個人が壊れていく過程だ、という宣言でもある。

その視点は、リンダを演じたローズ・バーンにとっても新鮮なものだった。彼女は「精神的に追い詰められた女性を描く映画は、たくさんありました」と前置きしたうえで、「今回、それが女性監督の視点で描かれたことに、とてもワクワクしました」と振り返る。そして、こう続けた。

「母親を子どもの付属物ではなく、ひとりの人間として描く映画は初めてでした」

母親という役割の内側に、役割では説明しきれない人間がいる。そこを正面から見ようとしたことが、本作を“よくある母親の物語”から引き離している。

映画『ワンオペレーション』の撮影現場
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泣いた直後に笑わせる、という難題

本作のもうひとつの特徴が、息苦しい状況の合間に差し込まれる、独特のユーモアだ。観客は笑っていいのか泣いていいのか分からないまま、リンダの一日に巻き込まれていく。

バーンはリンダについて「こんな役に挑めるなんて、願ってもない機会でした。彼女に強く共感しました」と語る一方で、演技の難しさにも触れている。「泣いた直後に笑わせる——その逆も、成立させるのは難しい」。感情の振れ幅がそのまま演技の難度になる役だったということだ。

ブロンスタイン監督は、その緩急を構造として説明する。「ひとつ問題が起きると、また次の問題が起きる。そこで緊張がふっと解け、観客もようやく笑える」。つまり、笑いは救いではなく、次の問題が来るまでの一瞬の隙間として置かれている。

そのリンダを託す相手として、監督にはバーン以外の選択肢がなかったという。「ローズは圧倒的な俳優です」「この役はどうしても彼女に演じてほしかった。彼女は本当に稀有な俳優で、完璧なコメディセンスを備えています」と、監督は絶賛している。バーンの役作りについては、脚本を一行ずつ読み込んでいった過程も明かされている。

メアリー・ブロンスタイン監督とローズ・バーン
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監督の実体験から生まれた“ワンオペ地獄”

本作を製作したのは、『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』などを送り出してきたA24。監督・脚本のメアリー・ブロンスタインは本作が長編2作目で、心理学の修士号を持ち、国立病院で子どもを対象としたプレイセラピーに携わった経験もある。脚本は、重病の娘とモーテルで暮らした彼女自身の実体験をもとに書かれた。

主人公の視点に徹底的に寄り添う没入型の演出と、生々しい現実感とシュールな不条理が入り混じる映像表現によって、観客は終わりの見えないワンオペ地獄へと引き込まれていく。プロデューサーには『ワン・バトル・アフター・アナザー』『リコリス・ピザ』のサラ・マーフィや、『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』で監督・脚本を務めたジョシュ・サフディらが参加。編集は『ヘレディタリー/継承』以降アリ・アスター監督作を手がけてきたルシアン・ジョンストンが担当している。

共演陣も個性的だ。第98回アカデミー賞授賞式の司会も務めたコメディアンのコナン・オブライエンがセラピスト役で出演するほか、ラッパーでファッションアイコンでもあるエイサップ・ロッキー、『パティ・ケイク$』のダニエル・マクドナルドが名を連ねる。

観客を笑いと涙のどちらにも振り切らせない体験へ導くために、監督が大切にしたのは“信じること”だったという。「大切なのは、観客を信じること。一緒にこの体験へ飛び込んでもらうんです」。バーンも「観客の心に、何かが響くと信じています」とメッセージを送っている。

映画『ワンオペレーション』は、9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開。

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