キングが書き直した『ヘンゼルとグレーテル』、永作博美の声で配信開始


お菓子の家と邪悪な魔女の話を、ホラーの巨匠が書き直したらどうなるか。Audible(Amazonオーディブル)が9月9日、スティーヴン・キングによる『ヘンゼルとグレーテル』の配信を開始した。翻訳は歌人の穂村弘、朗読を務めるのは俳優の永作博美だ。(フロントロウ編集部)
センダックの絵と、キングの文章
もとになっているのは、絵本『かいじゅうたちのいるところ』の作者モーリス・センダックが生前に残した「ヘンゼルとグレーテル」の絵。そこにキングが新たに書き下ろした物語を組み合わせたのが本作で、児童文学とモダンホラーの両巨頭が時を越えて並ぶという、かなり異例の成り立ちをしている。
キング自身は、この題材との距離をこう説明している。「ぽかぽかと陽のあたる外側、暗くおそろしい内側、そして賢く勇敢な子どもたち。ある意味で私は、ヘンゼルとグレーテルのような子どもたちの物語を、これまでずっと書き続けてきたのです」。言われてみれば、『IT』も『シャイニング』も、恐怖の中心に置かれているのは大人ではなく子どもだった。
日本語版を訳した穂村は「すごい組み合わせ。こんな本が誕生したなんて。悪夢的な魅力を感じながら訳しました」とコメントしている。

永作博美「お子さんがこわがってしまわないか、ちょっと心配です」
Audible版で全編を読むのは永作博美。兄妹の生き生きとしたやりとりから、迫力ある継母や魔女まで、登場人物を演じ分けている。
永作は、原稿を最初に読んだ時の印象をこう語る。「スティーヴン・キングの“はじめに”を読んだときから、“私が知っている『ヘンゼルとグレーテル』とは流れている空気がちょっと違うな”と感じました。おどろおどろしさを増したこの物語に、新しい気持ちで出会えて、とても新鮮でした」。
朗読という表現についても、「生身での芝居に比べて、どこまでも想像力を膨らませて、思い切り演じることができるのが魅力です。とくに童話は善悪や明暗がはっきりしているので、私自身とても楽しみながら読ませてもらいました」と手応えを語っている。
そのうえで印象に残ったのは、兄妹の関係だったという。「改めて感じたのは、ヘンゼルとグレーテルがお互いを慕い、きちんと言葉で励まし合う姿のたくましさ。継母や魔女は、キングが描く迫力そのままに演じたので、お子さんがこわがってしまわないか、ちょっと心配です(笑)。でもそのドキドキも含めて、楽しんでいただけたらと思います」。

親子で聴くこともできる
本作はコラボ絵本のオーディオブック版で、絵本に収められた挿し絵は音声版には含まれない。裏を返せば、紙の絵本を手元でめくりながら朗読を流すという聴き方もできるということだ。子ども向けの読み聞かせとしても、大人がひとりで聴くホラー寄りのおとぎ話としても成立する。
キングは1974年の『キャリー』でデビューして以来、『IT』『グリーン・マイル』『ダーク・タワー』シリーズなど50作以上を発表し、『ブギーマン』のような映像化も重ねてきた作家。その筆が、誰もが知っている童話に向かった一作となる。















