
『きっと、星のせいじゃない。』は、末期のガン患者である少女ヘイゼルと、骨肉腫という骨のガンを患っていたガスという少年の切ない恋愛を描く物語。ベストセラー小説『さよならを待つふたりのために』をもとにした本作は、全世界で約300億円以上を稼ぐ大ヒットとなった。
そんな物語には、衝撃の2つのエンディングが存在したという。
※ネタバレあり!この先、実際の本編の結末に関する記述があるのでご注意下さい。
実際の映画では、急に容体が悪化したガスが亡くなり、ヘイゼルは彼のお葬式へ。そこで生前にガスがヘイゼルのために残していた手紙を受け取り、そのメッセージを通して彼からの愛を改めて実感する、という涙を誘うエンディングとなっている。

『きっと、星のせいじゃない。』の1シーン。ヘイゼル役をシェイリーン・ウッドリー、ガス役はアンセル・エルゴートが演じている。
では、他の2つの結末はどんなものだったのか?
1. 麻薬密売組織のボスに撃たれて主人公が死ぬ
なぜか主人公のヘイゼルと、彼女が大ファンであり、作中で知り合うことになる小説家ピーター・ヴァン・ホーテンが、メキシコの麻薬王を追い詰め殺害しようとする。その結果、2人は撃たれて殺されてしまう。
これはジョンが映画公開時にニュース番組WOIOのインタヴューで語っていたもので、実際にこの内容で40ページも書いていたのだとか。結局、あまりいいアイディアではないということからボツに。

左から原作者のジョン・グリーン、アンセル・エルゴート、シェイリーン・ウッドリー、ナット・ウルフ。
このアイディアには、『きっと、星のせいじゃない。』に出演し、ジョンと共にインタヴューを受けていた俳優ナット・ウルフも、「僕は(小説の)専門家とかではないんだけど、ジョンが(実際に使われた)エンディングを選んでくれてよかったよ」と、思わずコメントしていた。
2. トロッコ問題で誰かが犠牲に?
もう1つのエンディングは哲学者フィリッパ・フットが提起した「トロッコ問題」に関連づけられたものだと、ジョンがエンタメ系サイトNerdistのPodcastで説明している。

『きっと、星のせいじゃない。』プレミアにて。左から2番目は、小説家ピーター・ヴァン・ホーテン役のウィレム・デフォー。
トロッコ問題とは、簡単に言えば、「5人の命を救う代わりに、1人の命が犠牲になるとしても、トロッコのルートを変えるか?」というもの。
トロッコ問題とは
制御が効かなくなったトロッコをそのままにしておくと、線路で仕事をしている5人の作業員がトロッコに轢かれて死ぬ。しかし線路の分岐器を用いて進路を変えれば、トロッコを別のルートに進ませることが出来るため、5人は助かる。
ただし、進路を変えた先には作業員1人がおり、故意に1人の人間を殺すことに。
そのままにしておけば5人が死ぬ。ただし1人を殺せば、5人は助かる。さて、あなたはどうする?という思考実験。
ジョンはこのアイディアを小説に使おうと考えたそうで、「小説家のピーターが、トロッコ問題の調査のために『きっと、星のせいじゃない。』のキャラクターのうちの1人を線路に結び付けるというエンディングだったんだ。哲学的に、とても興味深いアイディアに思えたんだよね」と、コメント。
しかし彼の編集者が、「この本はトロッコ問題に関するお話じゃないと思うわ」と却下したため、このアイディアもお蔵入りになったんだそう。

まさかの結末を迎えているかもしれなかった2人。
どちらも映画や原作小説を読んだ人にとっては衝撃すぎる結末。この作品のファンは、出演者のナットが言う通り、あの切ないエンディングが選ばれて良かった!と、思ったはず。