【フロントロウ編集部】
2月25日、ハリウッドに、黄金に輝くカニエ・ウェストの等身大像が突如現れた。この「カニエ像」は、LAを拠点に活動するストリート・アーティストのプラスチック・ジーザスが、同じくアーティストであるジョシュア・「ジンジャー」・モンローと共同で制作した作品だという。
一体、何のためにこの像は作られたのか?
「俺は神」だと歌ったカニエ・ウェスト
「偽のアイドル(False Idol)」と名付けられたこの像。モチーフとなったのは、グラミー賞を受賞した人気ラッパーのカニエ・ウェスト。
カニエは2013年に発売したアルバムに自分のニックネームである「イージー」と、「ジーザズ」をかけた造語である『イーザス』というタイトルをつけており、さらにそのアルバムの中には「アイ・アム・ア・ゴッド(俺は神だ)」という曲も収録されている。
また、2006年には米Rolling Stone誌に「いばらの冠」を頭にかぶり、血を流したかのような、まるで「イエス・キリスト」のようないでたちで登場したこともある。
Rolling Stone誌の表紙を飾ったカニエ。そんなカニエを、そのまま神の像にしたのが、今回の「カニエ像」。
この像、米Rolling Stone誌の彼をモチーフにしたのか、頭にはいばらの冠をのせている。また、腕を十字に開き、腰に白い布を巻いた姿は「イエス」のよう。大ぶりのネックレスで首元を飾り、カニエがデザインしたアディダスのスニーカーを履いているところや、ムキムキの筋肉や表情は、カニエそっくりに作られている。
カニエ・ウェストの等身大像。
制作者の意図するものとは?
制作者の1人であるプラスチック・ジーザスは、「一見すると『偽のアイドル』というタイトルはカニエに対するものに思える。でも、本当は俺たちの社会を反映させたものなんだ」と、米メディアサイトCLAVE ONLINEにコメント。
そして、「カニエは天才だ。彼の作曲や制作活動はここ20年ものあいだ、違うレベルにある。でも、(アメリカの)文化や社会が、彼を、触る物をすべて金色に変えてしまうような、この神に似た姿をした像に仕立て上げたんだ。俺たちは(カニエに)ある種の期待をする。それで、彼のようなアーティストがその期待に応えられなくなるまで、俺たちはアーティストのことをはりつけにし続けるんだ」と、制作意図を説明した。
カニエ・ウェスト。
セレブやアーティストに過度な期待をして、「偽のアイドル」像を作り上げることが、逆にアーティストたちを苦しめているのではないか、というのがプラスチック・ジーザスの思いのよう。
そんな思いが込められたカニエの像は、その後27日にアートギャラリー「ウォール・スペース・LA」前に移動されており、現在も道行く人々にメッセージを訴えかけている。