あの「究極のディス発言」の裏側
最新主演作『アナイアレイション -全滅領域-』のプロモーションで米Buzz Feedとのインタビューに応じたナタリー。
セクハラ撲滅運動「#Times’ Up(タイムズ・アップ)」の抗議の一環として来場者たちがこぞって黒いドレスを身に着けた1月のゴールデン・グローブ賞で、男性ばかりが優遇される映画界への皮肉を込めて「Here are the all-male nominee(候補者はこちらの男性の方々です)」と最優秀監督賞の候補たちを紹介し、究極のディス発言だと称賛された彼女は、大きな反響を呼んだあのフレーズを言うことに決めた経緯について、こう説明した。
「監督賞のプレゼンターを依頼されたとき、当時一緒に仕事をしていた女性たちに相談したの。私としては、本来ノミネートされるべき人が含まれていないようで違和感を感じたから。それで、候補者たちに無礼にならない方法で、人々の注目を集める術は無いかと考えたわ。ノミネートされた男性監督たちが、それぞれ素晴らしい仕事をしたことは確かだし、彼らが悪いわけではない。ただ、なぜ一定のグループに属していない人々の功績がきちんと評価されないのだろうと疑問に思ったの。そうしたら、知人の女性の1人があのフレーズを言ったらどうかと助言してくれたわ。私としても、あのフレーズなら真実を伝えられると思ったの」。
あの発言にはナタリー1人の考えだけでなく、彼女とともに女性の権利向上や待遇改善を目指す女性たちの想いが込められていたということのよう。
映画界の大物たちの「タブー」に触れる
さらに、フェミニズム運動に熱心なナタリーに対し、インタビューアーは、昨今ハリウッドで批判の矛先となっている名監督たちのセクハラ・性的虐待疑惑に関しても質問。
過去に13歳の少女への強姦をはじめとする6つの罪に問われ、逃亡の末に2009年にスイスで身柄を拘束されたロマン・ポランスキー監督の釈放を求める嘆願書が出回った際、当時100名以上の映画関係者たちが署名をしたことに流されて、自身もあまりよく考えずに署名してしまったというナタリー。
このことについて「ものすごく後悔してる」と語ったナタリーは、「尊敬している人物から『私は署名したけど、あなたもしてくれない?』と言われて、つい署名してしまったの。あれは間違いだった」と反省の言葉を口に。このときの経験から「間違いを犯してしまった人に対する共感を学んだ」とも話している。
さらに、当時7歳だった養女への性的虐待疑惑が再び注目を浴びているウディ・アレン監督について、彼の作品への出演経験があるナタリーに対し、インタビューアーは「彼のキャリアは、もう“タイムズ・アップ(時間切れ)”だと思いますか? 」と質問。
これに対し、ナタリーは語気を強め「論点はそこじゃないと思うの。それよりも、『なぜ、優秀な女性監督のエレイン・メイやノーラ・エフロンが毎年映画を作らせてもらえなかったの?』、『女性版のビル・コスビー(※)なんていないよね?』、『どうしてアジア人女性はハリウッド映画に出られないの?』ということを話し合うべきだと思う」と反論。
※複数の女性たちから性的暴行被害で訴えられながらもエンタメ界の第一線で活躍し続けたコメディアン兼テレビプロデューサー。
「誰かのキャリアがもう終わりかどうかを話すのではなく、これまで、女性や非白人、障害を持つ人々、LGBTコミュニティにチャンスが与えられなかったことで、私たちが失ってきた莫大な芸術的損失について話し合うべきよ。私たちの文化にぽっかり空いてしまった穴について話しましょうよ。『これまで500本もの映画を作って来た人物が、今後はもう映画を作れなくなるなんて悲しいね』なんて会話はしたくない。しかも、それを決めるのは私じゃない。私はそんなことに困惑してるわけじゃないもの」と持論を展開した。
今回のインタビューで、かなり突っ込んだ答えにくい質問にも誠意を持って自分なりの考えを話したナタリー。
自分自身の過去の判断ミスを認めて反省し、疑惑の渦中にある個人だけにフォーカスするのでなく、もっと視野を広げて大きな問題について議論すべきだとした彼女の意見は世間の高い評価を得ている。