俳優一家に生まれたホアキン・フェニックス
映画『ジョーカー』は、ベネチア国際映画祭では最高賞である金獅子賞を受賞するなど、多くの国際映画祭で非常に高い評価を受けている。そんな本作で主演を務めたホアキン・フェニックスが、これまでの映画界への貢献を評価され、トロント国際映画祭で特別賞のTribute Actor Awardを受賞した。
ホアキンがその受賞スピーチで、滅多に語らない今は亡き兄リヴァー・フェニックスとの思い出を明かし、映画ファンを涙させている。
『スタンド・バイ・ミー』や『マイ・プライベート・アイダホ』での存在感溢れる演技により名声を極めていたリヴァーは、1993年、23歳で薬物による心不全で死去。当時リヴァーは、俳優仲間のジョニー・デップが共同所有していたハリウッドのナイトクラブThe Viper Roomにおり、その傍らには当時19歳になったばかりのホアキンも。リヴァーが自分の目の前で倒れ、動揺したまま911に電話したホアキンの音声が多くのメディアに流出した過去もあり、ホアキンは兄の死についてカメラの前で口を開くことを避けてきた。
家族への愛が溢れたホアキン・フェニックス
そんな事件から、今年で26年。ホアキンが、ついにリヴァーとの思い出を語った。
「私が15歳か16歳のころ、兄のリヴァーが『レイジング・ブル』という映画のビデオテープを持って帰ってきて、私を座らせ、見させました。そしてその翌日、彼は私を起こしに来て、もう1度それを見させました。そして彼はこう言いました。『お前はまた演技を始めるんだ。これがお前がしていくことだ』。兄は私に質問したわけでもなく、そう言い聞かせてきました。私はあの時の兄に感謝しています。なぜなら、演技が私に信じられないほど素晴らしい人生を与えてくれたからです」
今回ホアキンが主演を務めた『ジョーカー』はDCコミックス映画でありながら、DCコミックス映画が共有してきた1つの世界観であるDCユニバースに属さない1作であり、トッド・フィリップス監督は「コミックスは全く参考にしなかったんだ。それに関してみんなは怒るだろうね」と語ったほど。
ストーリーは、1人の男性アーサーがジョーカーになっていく過程を描き、これまでの正体不明というイメージのジョーカーではなく、「人間として」のジョーカーが描かれる。ジョーカーになっていく、現代社会を生きる1人の男性を演じたホアキンは、映画制作をとおして自分自身の人生について思い返すことも多かったよう。
兄リヴァーだけでなく家族への思いが溢れた様子のホアキンは、こうも話した。
「この映画のクリップを見ていた時、私は家族のことを思い出していました。私の姉レイン、妹のリバティー、そしてサマー。彼らはいまだに私の親友です。彼らとは話したり会ったりしませんが」
家族を親友と呼びながらも、話したりはしていないという彼らしいジョークを最後に入れて、会場の笑いを誘ったホアキン。
じつは、若くして亡くなり伝説的俳優として語り継がれる兄リヴァーに対し、演技力に定評があるにもかかわらず、これまでオスカーを受賞出来ていないホアキン。ホアキン自身はオスカーに批判的なコメントを送ったこともあるけれど、そのような背景から、ホアキンは兄リヴァーを超えられないとする失礼な批評家も。しかし今回、映画界全体への貢献を評価するTribute Actor Awardを受賞したことは、ホアキンの中でもかなり重要なことだったようで、自分の人生に影響を与えた人に対して個別にメッセージを送ったり、キャリアについて語ったりと、ホアキンが自分をオープンにしたスピーチとなった。
ホアキンは最後に、2019年7月に婚約したパートナーのルーニー・マーラへ「愛してる」と伝えてスピーチを終えた。(フロントロウ編集部)