「マーベル蔑視発言」で考えさせられたこと
マーティン・スコセッシ監督が、世界の歴代興行収入ランキングのトップを占めるマーベル映画を「シネマではない」と口にしたことで、物議を醸しているマーベル映画はシネマか論争。
スコセッシ監督は、「MCU作品を見ようとしたけれど、ほとんど見ていない」「あれはシネマだとは思いません。正直、マーベル映画はテーマパークのような感じで、感情的・心理的体験を他の人に伝えようとしている人間の映画ではありません」と発言した。
これに対して、マーベル映画の出演者である、ロバート・ダウニー・Jr.、サミュエル・L・ジャクソンなどの名だたるMCUメンバーがコメントし、ほかにもジェームズ・ガン監督や、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長もそれぞれの意見を示して、マーベル映画を擁護した。
彼らに続き、MCU映画でキャプテン・アメリカを演じたクリス・エヴァンスと、2020年に単独映画『ブラック・ウィドウ』の公開を控える、ブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンが、ついに米Varietyでその心情を打ち明けた。
スカーレット・ヨハンソン
スカーレットは、「ここ数日でよく聞かれるのは、非常に尊敬される監督たちが、映画について、とくにマーベル・ユニバースや興行成績を獲得するアクション映画に関して発言していることについて。“卑劣”だとか“シネマの死”という言葉を使っていて、最初はなんだか古風な考え方ねって思った」と、監督の名前こそ出さなかったものの、マーベル映画はシネマか論争について意見を求められていたと告白。そのうえで、自分の考えをこう口にした。
「(どういう意図での発言なのか)誰かに説明してもらわなくちゃいけなかったわ。すごくがっかりするし悲しいことだと思ったけど、『彼らが言っているのは、実際の劇場では、多種多様な映画や小規模な映画、自主映画を公開する余裕はないってことなんだ。劇場は興行成績の良い映画に奪われてしまったから、そういう作品のためのスペースはないんだ』って言われて、人々がどのようにして作品を見ているのか考えさせられた。今やコンテンツを視聴する方法が変わって、いわゆるシネマ的な経験が、私たちのライフスタイルがどんどん変わっていくなかで、目覚ましい変化を遂げている」
ストリーミングサービスやSNSの普及で進化する暮らしのなかで、“映画”の在り方も変化している。映画館に行かなくても新作映画が見られる、新鋭プロダクションによる斬新な作品がリリースされる、昔にはなかった作品が続々世に送り出されていることに対して、スカーレットは「今の私たちがいろんな方法で見ているものって、昔は作られるチャンスすらなかったものなんじゃないかな」と語った。
クリス・エヴァンス
スカーレットの考えに同感したクリスは、大御所監督のマーベル蔑視発言は、「オリジナルのコンテンツ(=シネマ)はこうであるべきという証明だと思う」とし、「オリジナルなものはオリジナルなものにインスパイアされ、新しいものは常にクリエイティブという車輪を回していると思う。テレビは素晴らしい例だと思う。今はどこのフィールドでも信じられないことがいろいろ起きている。少ないリスクで、興行成績に捉われなくていい。結果、もっと自由が生まれて、よりクリエイティブなものができあがる」と持論を展開した。
そのうえで、「僕は、みんなにチャンスがあると思っているんだ。まるで特定の音楽は音楽じゃないって言っているみたいだ。なんでそんなことするの?そんな決まりあるの?って。僕たちは同じチームじゃないか。同じチームだよ」と、シネマや映画という傘の下で、どんなジャンルの作品も分け隔てなく存在すべきだという意思をハッキリ伝えた。(フロントロウ編集部)