念願のステージで“無言のメッセージ”
シンガーのテイラー・スウィフトは、米現地時間の11月24日に開催されたアメリカン・ミュージック・アワード(以下AMA)で計6冠を獲得。
そのなかには、ここ10年間で最も偉大な功績を残したアーティストに贈られる特別賞「アーティスト・オブ・ザ・ディケイド」も含まれており、テイラーはその栄誉を記念して、過去の楽曲を含む全5曲のメドレーを披露した。
テイラーは、前所属レーベルのビッグマシン・レコーズを買収し、彼女がデビューから2018年までに発表した楽曲の原盤権を手にすることとなった、ジャスティン・ビーバーの“恩師”こと敏腕音楽マネージャーのスクーター・ブラウンとのバトルの真っ最中。
AMAでの念願のメドレーは、テイラーが、ビッグマシーン・レコーズから、過去の楽曲を演奏することを阻止されたと告発し、一大騒動に発展したという経緯を踏まえてのパフォーマンスだったため、世界中から大きな注目を集めた。
楽曲やミュージックビデオなど、世に送り出す作品に、いつも何らかのヒントやメッセージを潜ませることで知られるテイラー。
今回のステージでも、ファーストソングとなった「The Man(ザ・マン)」のパフォーマンスの際に、自身が2018年末のレーベル移籍前にリリースした過去のアルバムのタイトルがプリントされた白シャツを脱ぎ捨てるという演出を取り入れて、新たなチャプターへの船出を表現した。
「7人」の子供たち
自身が“もし男だったら”という仮定して書いた「ザ・マン」で、「もし私が男だったら、もっと楽に成功を手にできたかもしれない」、「男だったら、頑張りはちゃんと認めてもらえる」と歌うテイラー。
彼女は、この曲のパフォーマンスに、自分と同じ衣装を着た7人の少女ダンサーたちを登場させたのだが、この「7」という数字にも、じつは、テイラーのある思惑が秘められていた。
テイラーのファンならすぐにピンと来るかもしれないが、「7」とは、彼女がこれまでのキャリアの中でリリースしたアルバムの数。
テイラーは、自分が生み出した作品を子供に例え、最後には、彼女たちを大切そうにぎゅっと抱きしめて見せた。
この一致に気づいたあるファンがTumblrに「『7人の子供=7つのアルバム』っていう意味なんだね! テイラーにとってこれまでリリースしたアルバムは、我が子のような存在なんだ」と投稿すると、テイラーは、この投稿にすかさず「いいね」して、この説が正しい解釈であることを証明していた。
ほかにもある! テイラーからの暗黙のメッセージ
シャツに文字をプリントするというアイディアは、テイラーが尊敬し、最新アルバム『ラヴァー』の収録曲「ス―ン・ユール・ゲット・ベター」でコラボを果たした女性カントリー・トリオのディクシー・チックスのドキュメンタリー映画『Dixie Chicks: Shut Up and Sing(ディクシー・チックス:シャット・アップ・アンド・シング)』(2006年米公開)のポスターをオマージュしたものという説が。これについても、テイラーはファンの予想投稿に「いいね」をしている。
さらに、テイラーがラストソングに選んだ「ラヴァー」を披露した際に弾いていたピンク色のピアノにも、アルバムタイトルに加えて、「Delicate(デリケート)」、「Eyes Open(アイズ・オープン)」、「アワーズ(Ours)」といった過去の楽曲のタイトルをフェミニンな筆記体で記した文字装飾が随所に散りばめられていた。
くわえて、この説については、ファンの憶測の粋を出ないが、テイラーがアルバム『Red』の収録曲「I Knew You Were Trouble(アイ・ニュー・ユー・ワー・トラブル)」を披露した際の背景にあった大きな炎のシンボルが、古巣であるビッグマシーン・レコーズのロゴと激似だという見方もある。
この日、テイラーが受賞スピーチ内でも、激化するスクーターやビッグマシーン・レコーズのスコット・ボーチェッタCEOとの紛争について触れるのではないかと注目が集まったが、テイラーは、「私がステージに立てたのは、みんなのおかげ」と、10年間の功績が称えられたのは、ファンたちが応援し続けてくれるおかげだと、あくまでも、作品への愛とファンたちへの感謝の気持ちを口に。
アーティスト・オブ・ザイヤー賞(年間最優秀アーティスト賞)の受賞スピーチでも、「この1年は人生で一番大変だったけど、素晴らしい年だった」と話すのみにとどまり、スクーターとスコットをディスるような発言はしなかった。(フロントロウ編集部)