2020年のゴールデン・グローブ、監督賞に女性はゼロ
2020年1月6日に開催される映画の祭典、ゴールデン・グローブ賞。アカデミー賞の前哨戦として最も注目されるこの授賞式のノミネート作品が発表された。
77回目となる今年はNetflixによるオリジナル作品が非常に多いことで話題となっている。特に映画『マリッジ・ストーリー』は最多の6部門にノミネート。5部門にノミネートしたマーティン・スコセッシ監督の映画『アイリッシュマン』や、4部門にノミネートしたドラマ『ザ・クラウン』もネットフリックス作品。
また、それ以外にもクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』やトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』など、日本でも大ヒットを記録した作品も選出されている。
そんななか、海外のエンタメファンを賑わせているのは、今回の監督賞に女性監督が一人もいないこと。
2019年は、映画『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督作品の『若草物語』やルル・ワン監督作品『フェアウェル』、映画『キミに逢えたら!』のローリーン・スカファリア監督の『ハスラーズ』、オリヴィア・ワイルド監督作品『ブックスマート』など、「アカデミー賞有力候補」とも言われていた作品が多かった。
さらに、2020年のゴールデン・グローブ賞では、監督賞のみならず、ドラマ部門とミュージカル/コメディ部門といった主要部門での女性監督作品のノミネートもなし。
全部門における女性監督作品のノミネートは、外国語映画賞部門でルル・ワン監督の『フェアウェル』とセリーヌ・シアマ監督『ポートレイト・オブ・ア・レディ・オン・ファイア』の2作と、アニメ映画賞部門でジェニファー・リー監督の『アナと雪の女王2』の3作品にとどまった。
映画賞は女性監督をスルーする歴史がある
ゴールデン・グローブ賞76年の歴史をとっても、監督賞にノミネートされた女性監督は5人だけ。2018年にはプレゼンテーターを務めたナタリー・ポートマンが、この状況についてスピーチで注意喚起して話題を集めた。
ゴールデン・グローブ賞にこれまでノミネートされた女性監督の映画は、バーブラ・ストライサンドの映画『愛のイエントル』(1983)、『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』(1991)、ジェーン・カンピオンの映画『ピアノ・レッスン』(1993年)、ソフィア・コッポラの映画『ロスト・イン・トランスレーション』、エイヴァ・デュヴァーネイの映画『グローリー/明日への行進』(2014)、キャスリン・ビグローの映画『ハート・ロッカー』(2008)、『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)の7作品のみで、実際に賞に輝いたのはバーブラ・ストライサンドの映画『愛のイエントル』。
この状況は91年の歴史を持つアカデミー賞も同様。これまでに累計355人が監督賞にノミネートされてきたが、その中で女性監督はグレタ・カーウィグ、ソフィア・コッポラ、キャスリン・ビグロー、リナ・ウェルトミューラー、ジェーン・カンピオンの5名のみ。たったの1.41%の女性しかノミネートされておらず、みごと受賞したのはキャスリンが監督を務めた2009年の『ハート・ロッカー』しかない。
女性監督の活躍が進まないハリウッド
女性監督のノミネートが少ない理由のひとつとして、そもそも、ハリウッドの大作映画が女性監督を起用しないことが挙げられる。
サンディエゴ州立大学のテレビと映画の女性研究センターが毎年実施している調査によると、興行収入が年間のトップ250に入る映画の中で女性監督による作品はわずか8%しかなく、この20年でほぼ横ばい。マーティン・スコセッシやM・ナイト・シャラマン、ウディ・アレンなど有名監督を多数輩出したニューヨーク大学芸術学部の映画/テレビ制作の生徒の約半数が女性であることを考えると、女性監督はいるのに大作への起用が一向に進んでいないことがわかる。
また、たとえ女性監督の数が少なかったとしても、2019年は、グレタ・ガーウィグ監督作品の『若草物語』やローリーン・スカファリア監督の『ハスラーズ』、オリヴィア・ワイルド監督作品『ブックスマート』など、評価の高かった作品が多かったにもかかわらず、作品賞・監督賞には完全にスルーされてしまったのは事実。
毎年のように女性監督の活躍の無視が問題視されながらも、2020年度の授賞式でもノミネーションに変化が見られなかったゴールデン・グローブ賞。この問題に授賞式で触れる人は現れるか?また、この様子を見てアカデミー賞では違う動きはあるのか?2020年の賞レースは、このような社会問題をどのように反映させていくかにも注目される。(フロントロウ編集部)