『ワンハリ』が3冠で圧勝!
第77回ゴールデン・グローブ賞が無事終了した。例年通り、数多くのセレブが一堂に会する華やかな祭典となった。
ハリウッドで開催されるアワードの視聴率は年々減少傾向にあると言われているなか、2020年のゴールデン・グローブ賞は2019年と比べるとわずか2%の減少に留めることができた。とはいえ、ここ8年で最も低い記録となった。
アカデミー賞の前哨戦として最も注目度の高いアワードを制したのは、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。1969年のハリウッドを舞台に、シャロン・テート殺人事件を下敷きにした本作は、ミュージカル/コメディ部門で作品賞、脚本賞(クエンティン・タランティーノ)、助演男優賞(ブラッド・ピット)の3冠を達成。
みごと助演男優賞に輝いたブラッドは、1996年の『12モンキーズ』以来24年ぶりにゴールデン・グローブを持ち帰ることとなった。
予想外の受賞作品『1917』
会場を最も驚かせたのは、サム・メンデス監督による第1次世界大戦を舞台にした戦争映画『1917 命をかけた伝令』の、ドラマ部門作品賞の受賞だった。
同じ部門には、マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』やトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』、ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』、フェルナンド・メイレレス監督の『2人のローマ教皇』など注目作品が多く、激戦が予想されていた。
そんななか、選考期間中(2019年1月1日~12月31日)で12月25日という1番最後の上映作品だった『1917 命をかけた伝令』が、全ての作品を追い上げてナンバーワンに。
配信作品は不発に
さらに会場を驚かせたのは、映画とドラマで34ものノミネートを果たしたNetflix作品がほとんどの賞を逃してしまったこと。
2020年のゴールデン・グローブ賞はNetflix作品が優勢かと思われていたのにもかかわらず、トロフィーを持ち帰ったのは映画『マリッジ・ストーリー』のローラ・ダーンが獲得した助演女優賞と、ドラマ『ザ・クラウン』のオリヴィア・コールマンが獲得した主演女優賞の2つのみ。
さらに、多くの評論家によって受賞が期待されていた映画『ルディ・レイ・ムーア』のエディ・マーフィーも受賞を逃す結果になった。
同じく、Amazonプライムビデオの『マーベラス・ミセス・メイゼル』やHuluの『キャッチ=22』、AppleTV+の『ザ・モーニングショー』などの配信作品もトロフィーを手にすることなく終了。
一方、Amazonプライムビデオのドラマ『フリーバッグ』は、評論家や観客の予想どおり、コメディ/ミュージカル部門で作品賞、主演女優賞を獲得。
制作・脚本・主演を担当したマルチな才能のフィービー・ウォーラー=ブリッジは、『フリーバッグ』の成功後、アマゾン・スタジオと大型契約を結んだということもあり、今後も目を離せない存在に。
また、Hulu作品もドラマ『ラミ―』で主演のラミ―・ユセフがミュージカル/コメディ部門男優賞を受賞、同じくHuluのドラマ『ジ・アクト』でもパトリシア・アークエットがリミテッドシリーズ/テレビムービー部門助演女優賞を受賞するなど、底力を見せつけた。
テレビドラマではHBOが躍進
アメリカの放送局HBOが制作したドラマの『チェルノブイリ』は、リミテッドシリーズ/テレビムービー部門の作品賞と、助演男優賞の二冠を達成。
同じくHBOの『サクセッション』もテレビドラマ部門の作品賞と男優賞を獲得した。
『バリー』や『ビッグ・リトル・ライズ』などのノミネート作品は惜しくも受賞を逃したが、この2作品の受賞で、HBOはドラマ11部門のうち、4部門の栄冠に輝くこととなった。
また、ラッセル・クロウが主演男優賞を受賞した米Showtimeの『ザ・ラウデスト・ボイス』、ミシェル・ウィリアムズがリミテッドシリーズ/テレビムービー部門 主演女優賞を受賞した米FXの『Fosse/Verdon』など、ドラマ部門は配信以外の作品も盛り上がりを見せている。
演技賞はおおかた予想通りの結果に
波乱を巻き起こした作品賞とは対照的に、演技における賞はおおかた予想を裏切らない結果になった。
主演男優賞を受賞した映画『ジョーカー』のホアキン・フェニックスは、その軽妙なスピーチで観客を魅了し、SNSでは一時トレンドのトップにも浮上。米DeadlineによるとTwitterでのツイート数は、司会のリッキー・ジャーヴェイスに次ぐ2番目の人気となった。
レネー・ゼルウィガーは6年間の休業を経たブランクがあるにもかかわらず見事映画『ジュディ 虹の彼方に』で主演女優賞を受賞。同賞受賞は2003年の映画『シカゴ』以来17年ぶりとなった。
今回のゴールデン・グローブ賞で輝かしいことの1つには、アジア系アメリカ人俳優、オークワフィナのコメディ/ミュージカル部門での主演女優賞受賞も挙げられる。アジア系の俳優がゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を獲得するのは史上初の快挙。
そんななか、1人だけ観客や批評家を驚かせた予想外の受賞となったのは、コメディ/ミュージカル部門で主演男優賞を受賞し、映画『ロケットマン』のタロン・エジャトン。
同部門の有力候補には久々に映画界にカムバックした映画『ルディ・レイ・ムーア』のエディ・マーフィーや映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のレオナルド・ディカプリオなどのツワモノぞろいだったため、タロンの受賞は非常に大きな驚きをもたらした。
イギリスの作品がハリウッドを乗っ取る勢い
第77回のゴールデン・グローブ賞におけるイギリス映画・ドラマ作品の受賞率は、なんと全体の40%にものぼった。ドラマ『フリーバッグ』や映画『ロケットマン』、映画『1917』など高評価のものが多い。
近年、イギリスとアメリカの作品の境界線は非常にぼやけたものになりつつある。たとえば、今回作品賞を受賞した『チェルノブイリ』は、アメリカの放送局HBOに委託されたイギリスのシスター・ピクチャーズが制作している。
イギリスとアメリカの作品の境界線がぼやけてきたことに関しては賛否両論あり、最も危惧されているのは“両者が同じ市場になってしまう”ということだと、『フリーバッグ』制作&共同監督のジャック・ウィリアムは米Deadlineに明かした。
今回の結果がいかにアカデミー賞に影響してくるのか。見逃せないビッグアワードのアカデミー賞は、2020年2月10日にハリウッドで開催される。(フロントロウ編集部)