リル・ナズ・Xがカミングアウトの裏話を明かす
昨年、異色のカントリーラップソング「オールド・タウン・ロード(Old Town Road)」が、全米シングルチャートで驚異の19週連続でナンバーワンを獲得し、さらに今年のグラミー賞で初ノミネートにして2部門で受賞を果たしたリル・ナズ・Xが、同性愛者であることを一生秘密にするつもりだったことを英The Guardianのインタビューで明かした。
昨年6月、プライド月間の最終日に同性愛者であることを公表したリル・ナズは、自身の性的指向を一生秘密にするつもりだったが、アーティスト「リル・ナズ・X」になったことがきっかけでカミングアウトすることを決意したという。
「正直に言うと、秘密を抱えたまま死ぬつもりだった。でも、リル・ナズ・Xになってすべてが変わった。
今は100%、LGBTQ+コミュニティを代表する存在になりたいと思っている。100%乗り気じゃない人がカミングアウトすることには反対だ。とくに中高生にはとても難しいことだと思う。
僕にとっては簡単なことだった。(カミングアウトした時)僕はすでに自立していたからね。家から追い出される心配もなかったし、(学校に通っていないから)いじめられるようなこともなかった」
こう語ったリル・ナズは、さらにカミングアウト後の家族の反応について、「家族にも知られちゃったけど、面と向かって何かを聞かれたり、その話題になったりしたことはない。物静かな家族なんだ。だから、『彼氏できた?』とか聞かれることもない」と、とくに“何もなかった”ことを明かした。
彼のようなセレブがカミングアウトするのは今どき珍しいことではないが、黒人社会ではいまだにLGBTQ+の人たちへの差別が根強く残っており、ヒップホップ界はショービズ界のなかでもLGBTQ+への風当たりが強く厳しい世界だと言われている。状況は変わりつつあるものの、「黒人」でなおかつ「ラッパー」のリル・ナズが、自身のキャリアがやっと好調の波に乗りはじめたタイミングで自身のセクシャリティを公表したことは、ショービズ界だけでなく社会全体に大きな衝撃と影響を与えた。
同性愛者であることを公表して以降、インタビューやSNSを通じて積極的に自身のセクシャリティについて発言しているリル・ナズは、ヘイト(ディスや嫌悪コメント)に対して、あえてジョークを交えて返信するなど、独自の方法で彼が言う“LGBTQ+コミュニティを代表する存在”を体現している。(フロントロウ編集部)