黒人コミュニティーへの結束を示すため、全米の音楽業界が「ブラック・アウト・チューズデー(Black Out Tuesday)」として6月2日にストライキを決行。ラッパーのジェイ・Zは、ジョージ・フロイドという黒人男性が白人警察官に殺害された件で、ミネソタ州の知事と会談したことを明らかにした。(フロントロウ編集部)

「ブラックアウト・チューズデー」を決行

 メジャー音楽レーベル3社をはじめとした全米の音楽業界は黒人コミュニティーへの結束を示すため、現地時間6月2日に「ブラックアウト・チューズデー」と銘打ってストライキを行なうことを発表した。

 これは、ここ数ヶ月間にわたって警察官によって黒人が殺害される事件が立て続けに起きたことをきっかけに、黒人の命にも価値があると訴える「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動が広がりをみせていることがきっかけとなって呼びかけられたもの。

 アメリカでは先週、ミネソタ州ミネアポリスで白人の警察官に首を押さえつけられた黒人男性のジョージ・フロイドが亡くなるという事件が発生したほか、今年2月にはアマード・アーベリーが非武装でジョギングしていたところを殺害され、3月にはブリオナ・テイラーが別の容疑者の住所と誤って自宅に侵入した警察官によって殺害される事件が発生した。

画像: 米現地時間5月31日にニューヨークで撮影。

米現地時間5月31日にニューヨークで撮影。

 ブラック・ライヴズ・マター運動が広がるなかで、音楽業界では「ジョージ・フロイドの死やブリオナ・テイラー、アマード・アーベリー、『警察の手にかけられた他の黒人市民』の死」を受け、業界として「黒人のコミュニティーをサポートするために集合的に取るべき行動について、正直で、内省的で、生産的な会話をするための1日」にするため、「The Show Must Be Paused(ショウは止まらなければならない)※」というスローガンのもとで、現地時間6月2日にストライキを行なおうと呼びかけられた。

※何があっても観客にエンターテイメントを提供しなければいけないという昔からショービズ界にある掟「show must go on(ショウは続けなければならない)」というフレーズにかかっている。

 ソニー・ミュージック、ワーナー・ミュージック、ユニバーサル・ミュージックの3大メジャーレーベルを筆頭に多くの企業や個人がこれに賛同し、現地時間6月2日に「ブラックアウト・チューズデー」と銘打ったストライキを決行している。

ソニー・ミュージック・グループ

6月2日の火曜日、ソニー・ミュージックは誇りを持って『ブラック・アウト・チューズデー』に参加します。我々は黒人のコミュニティーやアーティスト、従業員、同僚、コミュニティーのリーダーたちと結束し、人種間の不正や不平等に立ち向かいます。この日は、現在、そして未来において我々のコミュニティーに有意義な変化を起こすために行動する日になるでしょう。

ワーナー・ミュージック・グループ

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#blacklivesmatter #theshowmustbepaused

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6月2日の火曜日、ワーナー・レコーズを含むワーナー・ミュージック・グループは『ブラックアウト・チューズデー』を順守します。我々は従業員やアーティスト、世界的なコミュニティーをサポートします。ワーナー・ミュージック・グループにおける音楽事業は通常とは異なるものになります。わずか1日限りではありますが、本当の変化に向けて私たちは闘いを続けていきます。この日は会社として、変化に向けていかなる行動ができるかを振り返る日に使い、その後、数週間、数ヶ月かけて進めていきます。この一環として、我々はブラック・ライヴズ・マターや、人種間の不平等の撲滅に向け重要な活動を行なっている他の組織に寄付を行ないます。#BlackLivesMatter #TheShowMustBePaused

ユニバーサル・ミュージック

キング牧師の言葉を借りれば『沈黙が裏切りとなる時が来ている』。変化のために声を上げる責任を示す時が来ました。憎悪と暴力のための場所は、この世界のどこにもありません。偏見や先入観に直面しても、アーティストやソングライター、従業員が発言してきたことを私たちは誇りに思っています。Universal Music Groupでは、建設的な変化のための力となることを約束します。

レコーディング・アカデミー(グラミー賞の主催団体)

ジョージ・フロイドの死やブリオナ・テイラー、アマード・アーベリー、“警察の手にかけられた他の黒人市民”の死を受けて、音楽企業やアーティストは業界に対し、6月2日に『ブラックアウト・チューズデー』を順守することを呼びかけます。#TheShowMustBePaused

Apple Music

6月2日火曜日、Apple Musicはブラックアウト・チューズデーを順守します。私たちはこの日を振り返りのために使い、黒人のアーティストや黒人のクリエイター、黒人のコミュニティーを支援するための行動を計画するために使います。#TheShowMustBePaused #BlackLivesMatter

画像: 6月2日現在、Apple Musicのトップ画面には「私たちはどこにいてもブラックコミュニティと連帯しています」と書かれている。

6月2日現在、Apple Musicのトップ画面には「私たちはどこにいてもブラックコミュニティと連帯しています」と書かれている。

ゼイン・ロウ(ラジオDJ)

私は黒人や褐色の友人/同僚たちと結束します。ブラック・ライヴズ・マター。明日(6月2日)はラジオに出演しません。ブラックアウト・チューズデーに参加し、人種間の不平等に立ち向かうために耳を傾け、学び、解決策を模索します。#TheShowMustBePaused

リアーナ

何も買わない!売りもしない!

ブリトニー・スピアーズ

まずは明日、ブラックアウト・チューズデーに参加するつもり。私はソーシャル・メディアに投稿しないから、みんなにも同じことをしてほしい。私たちはデバイスから離れて、世の中をより良い場所にするために何ができるかに焦点を当てるべき。私たち全員のために!

ジェイ・Zは知事に直談判

 そんななか、ロック・ネイションというレーベルの代表でもあるラッパーのジェイ・Zは、ジョージ・フロイドの事件について、ミネソタ州のティム・ワルツ知事と会談したことを明らかにした。

画像: ジェイ・Zは知事に直談判

 ジェイ・Zはワルツ知事に対し、アフリカ系アメリカ人であるミネソタ州の司法長官キース・エリソン氏にジョージ・フロイドの事件を担当してもらえるよう直談判したという。

 ジェイ・Zが発表した声明の全訳はこちら。

 我々の真剣な話し合いの後で、州の司法長官であるキース・エリソンがジョージ・フロイドの事件を担当するように手配してくれたワルツ知事に感謝したい。今朝、ワルツ知事が私と話し合いの場を持ったことを発表した。父親であり、痛みを感じている1人の黒人男性としてだ。そう、私は人間で、父親で、心を痛めている黒人の男。そしてそれは、私だけではない。私は痛みを感じているこの国全体と共に、司法長官であるエリソン氏が正しい行ないをし、ジョージ・フロイドの殺害にかかわったすべての人々に対して法で可能な最大範囲の罰を与えてくれることを呼びかけたい。これは最初の一歩に過ぎない。私はこれから、迫害者たちよりも強く、正義のために闘うことを決心している。

 この国にいるあらゆる政治家や検察官、警察官に、正しい行ないをしてくれるよう呼びかけたい。我々を傷ついた人間、父親、ブラザー、シスター、母親として見る勇気を持ち、自分自身のことも見つめてほしい。

 ワルツ知事は米CBS Minnesotaのインタビューに対し、ジェイ・Zとの会談について、彼から「正義が遂行されなければならない」と伝えられたと明かした上で、会談中のジェイ・Zについて「世界的なセレブとしてのジェイ・Zではなく、かつて経験したことのある心からの痛みを抱えた父親であり、正直な黒人男性」としての彼を感じたとし、「素晴らしい人間だった」と語っている。(フロントロウ編集部)

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