ジョージ・クルーニーが全米各地で起きている人種差別への抗議デモに関してエッセイを寄稿。黒人への人種差別こそが「アメリカが抱える最大のパンデミック」だと語る真意とは?(フロントロウ編集部)

ジョージ・クルーニーがエッセイを寄稿

 映画『オーシャンズ11』や『ゼロ・グラビティ』などで知られ、2018年から国連のピース・メッセンジャーとしても活動している俳優のジョージ・クルーニーが、アメリカ各地で激化する人種差別に対する抗議デモを受け、米Daily Beastにエッセイを寄せた。

 『America’s Greatest Pandemic Is Anti-Black Racism(アメリカの最大のパンデミックは黒人に対する人種差別だ)』と題したエッセイの序盤で、「#Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命にも価値がある)」を掲げた抗議運動が、これまで以上に活性化するきっかけとなったアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイド氏の白人警官による制圧死に言及したジョージは、今回のような事件が近代史上幾度となく発生し、そのたびに人々が戦ってきたことを過去の事件や被害者たちの名前を挙げてリマインド。

 「こういった抗議運動がいつになったら鎮静化するのかはわからない。私たちにできるのは、誰も殺されないよう願い、祈ることだ。しかし、私たちは、結局のところ、ほんの少しの変化しか得られないこともわかっている」と綴った。

画像: ジョージ・クルーニーがエッセイを寄稿

 続けて、オハイオ州クリーブランドの法廷で1年間、数々の裁判を見届けた結果、今も黒人に対する差別が根強く残り、黒人の検挙数がほかの国々と比べて圧倒的に多く、厳罰を与える傾向も強いという事実を確証せざるを得なかったという女性ジャーナリスト、サラ・ケイニグの「この国の刑事司法制度の骨組みのすべての関節は人種差別という円滑油が塗られています」といった言葉を引用。

 奴隷制が認められていた時代からアメリカという国に蔓延る人種差別を、現在世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス(Covid-19)と対比させ、こう記した。

「これ(黒人に対する人種差別)は私たちのパンデミックです。私たちみんなに感染し、400年を経てもなお、未だにワクチンが見つかっていません。もはや私たちはワクチンを探すことすらやめてしまい、個人レベルで手当てをしようとしているようにも見える。でも、それが上手くいっているわけでは決してありません」

 「私たちが、今再び目にしているストリートでの怒りや苛立ちは、アメリカが奴隷制という最初の罪からいかに成長できていないかを思い知らされるものです。人間を売り買いするのをやめたという事実は、名誉の印でもなんでもない」とも指摘したジョージは、乗り越えることが到底難しそうに見える人種差別問題を解決するためには、「警察や刑事司法制度を組織的に変革しなければなりません」と、投票という手段を通じて国民一人ひとりが働きかけていくしかないと結論づけた。

 その際、ジョージはこんなコメントもつけ加えている。「この問題を生み出したのは私たちなのだから、私たちには、それを解決することもできるということを忘れないでください」。


新型コロナウイルスよりも人種差別のほうが危険

 世界で最も新型コロナウイルスの感染者数および死者数が多いアメリカで、なぜ、これまで数カ月にわたって徹底してきたソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)や外出自粛のルールを一旦保留し、感染者数が激増することを覚悟してまで、連日人々が集まり、抗議活動を行なっているのかと疑問に思う人も少なくないだろう。

 しかも、その背景には貧困やヘルスケアの問題といった様々な要因が絡み合っているが、ニューヨーク市の保健当局が4月半ばに行なった報告によると「アフリカ系黒人の新型コロナウイルス感染による死者は、白人の2倍となっている」というデータもある。

画像1: 新型コロナウイルスよりも人種差別のほうが危険

 デモは感染の可能性が低めな屋外で起こっており、参加者の大半はマスクを着用して行進や座り込みといった抗議活動を行なっているが、ハーバード大学の公衆衛生研究家のマーク・シュライム博士をはじめとする複数の専門家は、デモ勃発から2週間後を目途にアメリカ国内で感染者数が激増することは間違いないだろうと米The Atlanticにコメントしている。

 そんな反動を差し置いても、警察という国家権力や差別主義に対して声を上げなければならないと感じる人が多いのは、ジョージが言うように、それだけ、長きにわたってまかり通ってきた人種差別こそがアメリカが抱える史上最悪の疫病であり、今こそ、それを正すべき時が来たと信じているからなのかもしれない。

画像2: 新型コロナウイルスよりも人種差別のほうが危険

 ブルックリンで行なわれた抗議デモに参加したある匿名の30代の人物は、米R29にこう語っている。「パンデミック禍でリスクを冒してでも守りたいと思うものがあるとすれば、自分の命と有色人種の人々の命です。警察は黒人の命にとってCovid-19よりもずっと危険。その事実は警察が存在し続ける限り、変わりません」。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.