LGBTQ+当事者同士でも差別をする
黒人差別が根深く残るアメリカでは、これまでに多くの非武装の黒人が白人警官によって殺害されてきた。命さえも軽く扱われていることに声をあげた黒人コミュニティによって、「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命にも価値がある)」をスローガンとしたムーブメントが各地で大規模発生している。
そんななか、Netflixの人気番組『クィア・アイ』で、ゲストの心のケアを担当するカラモ・ブラウンが、米ロイターのインタビューに登場した。「アメリカで、2人の黒人の息子を育てる移民の両親を持つ、黒人の男として育つなかでは、こういった会話は定期的にするものでした。友人や親族が警察に嫌がらせされたり、ひどい扱いを受けることは、定期的にあることです」。
そう話すカラモは、全員がゲイである『クィア・アイ』のメンバーの中で、唯一の黒人。ゲイを含むLGBTQ+コミュニティもこれまでに差別に対して闘ってきた歴史があるけれど、そのコミュニティの中でも、黒人差別は存在すると語った。
「LGBTコミュニティの中にも、非常に多くの人種差別がありますよ。自分がゲイだと苦しんだことがあるかもしれませんが、とはいえ白人の特権は存在します」
カラモが経験した黒人差別
LGBTQ+コミュニティにおける黒人差別の例として、カラモは、ゲイ専用のマッチングアプリGrindr(グラインダー)を挙げる。Black Lives Matterを受けてグラインダーは、自分が出会いたい相手を探す際に適用できていた人種のフィルターを、次のバージョンから無くすことを発表した。その際の白人の反応について、カラモはこう話す。
「白人でゲイの男性たちは、『これは違う。黒人やアジア人はいらないって言える権利があるべきだ』って感じでしたね。もしあなたが同性愛者として、それがなぜ間違いなのかを本質的に理解できないのであれば、自分自身を見直す必要があります」
インターセクショナリティ(intersectionality)って?
こういった、様々な種類の差別が絡み合うことを、「インターセクショナリティ(intersectionality)」という。
これは、差別はひとつではなく、様々な種類の差別は重なりあっていることを指していて、とくに黒人女性の立場を説明する際に使用される。その理由は、黒人女性であることは、黒人差別も、女性差別も受けることになるから。
ゲイの話がされる時には、「ゲイvs同性愛を認めない人々」という話にされがちだけれど、カラモが言うように、ゲイのなかにも「白人」、「黒人」、「アジア人」という区別があり、その間で対立が起こることはある。
絡まりあう差別にカラモがメッセージ
とはいえ社会の変化は少しずつといえど明らかで、現在39歳のカラモは今では2人の息子を育てている。また、2018年には長年のパートナーであった助監督のイアンと婚約。そんなカラモは2018年に、白人であるイアンとの関係を振り返った際に、インスタグラムでこうメッセージを送っている。
「この数年、人種が違う恋愛関係を認めない人々から、人種差別のコメントを数多く受け取りました。しかし無知は、愛と優しさが道を切り開いている時に勝つことはありません。私達が持っている幸せと幸福と同じものを、すべての人へ願います」
(フロントロウ編集部)