撮影現場でチャドウィックが取った行動の意味
映画『42 〜世界を変えた男〜』や『マーシャル 法廷を変えた男』、そして『ブラックパンサー』などに出演した俳優のチャドウィック・ボーズマンが、2020年8月28日に、43歳の若さで逝去した。約4年間にわたって大腸がんと闘っていたチャドウィックだけれど、その事実は家族やごくごく親しい関係者数名のみにだけ知らされており、彼の死は全世界のファンだけでなく、彼と共演した俳優達にも衝撃を与えた。
チャドウィックが出演しており、2020年6月12日に配信が開始されたばかりのスパイク・リー監督によるNetflix映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』は、ベトナムが舞台であり、撮影はタイで行なわれた。この作品でチャドウィックと共演したクラーク・ピーターズが、英ニュース番組『Good Morning Britain(原題)』に出演し、チャドウィックの功績を称えた。そんななか、『ザ・ファイブ・ブラッズ』の撮影中にチャドウィックと撮ったセルフィーを見たクラークが、心に重く残っていたある後悔を告白した。
「後悔とともに、これは言わなくてはいけない。私は、あの環境であまり他人に対する思いやりが足りていなかった。しかし今になって多くのことを知った。私が言いたいのは、私の妻がチャドウィックはどんな感じだったかと聞いてきたことがあったんだ。私は彼と一緒に働くことをすごく楽しみにしていたからね。
私は、“彼は少しばかり気取っているかも”と言ったんだ。妻が“なぜ?”と言ったから、私は、“彼は、彼の機嫌を取るような人達に囲まれているんだよ。彼がセットから出ていけば、中国人の医者が彼の背中をマッサージしているし、彼のメイクアップアーティストは彼の足をマッサージしているし。そして彼の恋人も現場で彼の手を握ってる”と話した。私は、『ブラックパンサー』の人気は彼を調子に乗らせたのかなと思っていた。そんな考えを持ったことだけでも後悔している。彼らはチャドウィックをケアしていたんだ」
The beauties of filming. Always wanted to be Wired with this guy.@clarkepeters #da5bloods pic.twitter.com/zc3a7KWBFI
— Chadwick Boseman (@chadwickboseman) June 27, 2020
クラーク・ピーターズ(左)とチャドウィック・ボーズマン(右)
クラーク・ピーターズ、撮影を振り返って
当時を振り返りながら務めて冷静に話していたクラークだけれど、話し終わる頃には泣きそうになってしまい、声を詰まらせた。しかしハリウッドという世界で、クラークがそう誤解してしまっても仕方のないこと。話を聞いていた司会者の2人もクラークの話を理解し、彼をなぐさめたけれど、クラークはさらにこう続ける。
「気温104℉(約40℃)の中を走って…、撮影のために40ポンド(約18キロ)の装備を背中に背負って走って、あの若い男は…」
ここまで話したクラークは、もう涙を止めることが出来なかった。誰かが亡くなってから、明らかになる事実はある。仕方がないとはいえ、後悔は残る。『ザ・ファイブ・ブラッズ』のリー監督もクラークと同じく、チャドウィックが闘病中だとは全く気づかなかったと明かしている。(フロントロウ編集部)