8月末に亡くなった俳優のチャドウィック・ボーズマンが、生前、ある映画の共演者にギャラの一部を譲っていたという知られざる逸話が明かされた。(フロントロウ編集部)

チャドウィック・ボーズマン、ハリウッドにおける男女間の賃金格差と向き合う

 約4年間に及ぶ大腸がんとの闘いの末、8月末に43歳の若さでこの世を去った俳優のチャドウィック・ボーズマン

 寡黙で、自らの社会貢献についてひけらかすような真似は絶対にしなかったチャドウィック。そんな彼のあまりにも早すぎる死を惜しみ、私生活でもヒーローさながらだった彼の逸話を口にする人が相次ぐなか、彼が人種間の不平等だけでなく、男女間の不平等にも立ち向かおうとしていたことがわかるエピソードをある共演者が打ち明けた。

画像: チャドウィック・ボーズマン、ハリウッドにおける男女間の賃金格差と向き合う

 その共演者とは、チャドウィックが主演だけでなくプロデューサーとして制作陣にも名を連ねたスリラー映画『21ブリッジス』(2019年米公開)で相棒役を演じた俳優のシエナ・ミラー

 以前から自身のファンだったという、チャドウィック本人からの熱烈なオファーを受けたことが、本作への出演を後押ししたと明かしたシエナは、チャドウィックが自分のギャラの一部を譲ってでも、彼女の出演を叶えようとしたと英Empireに語った。

画像: 2019年11月、ニューヨークで行なわれた『21ブリッジス』のフォトコールにて

2019年11月、ニューヨークで行なわれた『21ブリッジス』のフォトコールにて


ギャラの一部を譲る 

 『21ブリッジス』への出演の話が舞い込んだ当時、子育てと俳優業の両立について迷い、仕事復帰することにあまり気が進まなかったというシエナ。

 ハリウッドにおける男女間の賃金格差を踏まえたうえで、もしも自分が納得がいく報酬が得られるのであれば、出演すると映画スタジオと交渉したという。

 「『21ブリッジス』は大きな予算が投じられた作品で、ハリウッドにおける賃金格差についてはみんな知っているのはわかっていたけど、私はスタジオ側は合意しないだろうなという金額をあえて提示した。だって、娘がちょうど学校に行き始める時期で、いろいろと不都合だったから、『もし公正な報酬がもらえるならやります』って返事をしていたの。そうしたらチャドウィックが、私が提示した報酬に到達するように、彼のギャラの一部を寄付してくれた。彼は、その額こそが、私が受けるべき報酬だと言ったわ」。

画像: 2019年5月、ブルックリンで『21ブリッジス』を撮影するシエナとチャドウィック。

2019年5月、ブルックリンで『21ブリッジス』を撮影するシエナとチャドウィック。

 賃金格差を埋めてまで自身の出演を望んでくれたチャドウィックの男気や熱意に感銘を受け、「彼となら仕事をしたい」と出演を決めたというシエナ。

 「そんな事ってなかなか起きないでしょう。彼は『君は、受けるべき報酬を受けるだけ。君にはその価値があるんだから』って言ったの。あの街(ハリウッド)で生きるほかの男性が、あんなふうに寛大に敬意を示してくれる様子なんて想像すらできない」と、支払われるギャラの金額に男女間で大きく差があるのが当たり前だとされてきたハリウッドで、チャドウィックのように女性への敬意を表してくれた男性には出会ったことがないと語った。

画像: ギャラの一部を譲る

 チャドウィックが自分のためにしてくれた事を別の男性の俳優たちに伝えると、みんなバツが悪そうに口をつぐんでしまったとも明かしたシエナ。チャドウィックは、自分の行いについて、誰かに誇らしげに自慢したりすることはなく、あくまでも“当然のことをしたまで”といった様子だったという。

 チャドウィック亡き今、このエピソードを語った理由について、シエナは「彼がどんな人だったかを証明するような出来事だったから」と説明している。

米カリフォルニア州にあるディズニー・ランドの敷地内に登場したチャドウィックの姿を描いた壁画。

 チャドウィックのやり方は、控えめで慈悲深い彼らしい方法だが、ハリウッドには、もちろん、また違うやり方で、女性たちと一丸となって男女間の賃金格差に異論を唱える男性もいる。

 MCU(※)作品でドクター・ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチは、2018年に、今後は“女性と同じ賃金でなければ仕事を引き受けない”と宣言したほか、Netflixのドラマ『セルフメイドウーマン 〜マダム・C.J.ウォーカーの場合〜』の制作総指揮に名を連ねるNBA選手のレブロン・ジェームズは、同作に主演する俳優のオクタヴィア・スペンサーが平等な賃金を勝ち取れるようギャラアップのための交渉に介入したことで知られる。

※マーベル・シネマティック・ユニバースの略

(フロントロウ編集部)

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