炎上するクリス・プラットを即座に擁護したマーベル仲間に白い目
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品の1つである『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで主人公のスターロードことピーター・クィルを演じるクリス・プラットは、ある映画監督のツイートが発端で過熱した「ハリウッドに不要なクリスは誰?」論争が発端となり、ネット上でこき下ろされている。
事の発端となった「不要なクリスは誰?」論争
映画『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンスや映画『マイティ・ソー』のクリス・ヘムズワース、映画『スター・トレック』のクリス・パイン、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットなど、ハリウッドには「クリス」というファーストネームを持つ人気俳優が多数いる。
そんななか、先ほど名前が挙がった4人のうち「一番イケてなくて不要なクリスは誰か」と、ほんの軽い気持ちで、映画監督のエイミー・バーグがツイッターでフォロワーにたずねたところ、マーベル作品のほかに映画『ジュラシック・ワールド』の主演俳優としても知られるクリス・プラットが“最もイケていないクリス”の座に輝いてしまった。
お調子者の明るいキャラクターでファンからの人気も高いクリスだが、つい最近、自身のインスタグラムで11月に行なわれる大統領選を茶化すような言動をしたことがたたったようで、「ハリウッドを代表するクリスの中から除外されるべきだ」といった、厳しい意見を口にする人が相次いだ。
クリスが、昨今、問題視される“キャンセル・カルチャー”の標的となったことに対し、MCU作品でアイアンマンを演じたロバート・ダウニー・Jr.がクリスを擁護するコメントを出したのを皮切りに、ハルクを演じるマーク・ラファロ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を手がけるジェームズ・ガン監督、そして同作でガモーラを演じるゾーイ・サルダナもそれぞれSNSでコメントを出して、クリスに助け船。
しかし、この行動がまた別の議論を呼び起こしている。
「キャンセル・カルチャー」って?
著名人や企業によって“問題”だとされる発言や行動があったときに、その問題の原因究明や解決を議論するのではなく、SNSを中心に集団で批判してその人や団体を「抹殺(キャンセル)」しようとする風潮。
白人男性しか擁護しないのはなぜ?「ダブルス・タンダード」が指摘
クリスの危機を救おうと助け船を出した複数のマーベル俳優&監督を、仲間意識を感じる素晴らしい行動だと称える声もあるが、その一方で、なぜクリスだけ特別扱いをするのかという疑問も浮上している。
これまでにキャンセル・カルチャーの標的にされそうになったマーベル俳優は、クリスだけではない。
映画『キャプテン・マーベル』に主演するブリー・ラーソンは、同作が公開される以前の2018年に参加した、映画界で働く女性を称えるアワード、Women in Film Crystal + Lucy Awardsで、ハリウッドでは、まだまだ白人男性が優遇されていることを指摘し、もっと有色人種や女性にフォーカスした多様性に富んだ作品も作られるべきだとスピーチ。
しかし、これが一部で“白人男性嫌悪”だと受け取られ、彼女が主演する『キャプテン・マーベル』のボイコットを呼びかける運動がSNSで勃発した。
トム・ホランドが主演する『スパイダーマン』シリーズで、MJことミシェル・ジョーンズを演じるアフリカ系アメリカ人の血を引く俳優のゼンデイヤは、コミック版や過去に公開された映画では“赤毛の白人の女性”として描かれたメリー・ジェーンをベースとした同キャラクターに抜擢されたことが発表された際、「黒人がこの役を演じるのは許せない」と、一部のコミック・ファンからバッシングを受けた。
『マイティ・ソー』シリーズで女戦士のヴァルキリー(ブリュンヒルデ)を演じるアフリカ系アメリカ人俳優のテッサ・トンプソンが同役にキャスティングされたときにも、コミック版では「金髪の白人女性」として描かれたヴァルキリーを彼女が演じることに対して批判が。SNSでは、白人至上主義者のマーベルファンたちによる人種差別的なコメントが相次いだ。
キャンセルされそうになったのは、女性キャストたちだけにとどまらない。
2019年公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、本作をもってキャプテン・アメリカ役を卒業したクリス・エヴァンスに代わり、それ以降のMCU作品では、アフリカ系アメリカ人俳優のアンソニー・マッキー演じるファルコンことサム・ウィルソンが、2代目キャプテン・アメリカの役割を継承することが明かされた際にも、アンソニーの人種を理由に一定数のファンから不満が噴出。
原作コミックの展開に沿っているにもかかわらず、白人俳優のセバスチャン・スタンが演じるウィンター・ソルジャーことバッキ―・バーンズが、キャプテン・アメリカの座を引き継ぐべきだと訴える人々が現れた。
これらのキャストたちが、一部の人々から人種差別的、性差別的な理不尽な糾弾を浴びた際、制作陣のなかには、擁護や反論を行なった人物もいた。しかし、今回クリスのために救いの手を差し伸べたキャスト仲間や監督は、とくに何もアクションを起こさずに静観していた。
そんな背景を知る人々は、女性や有色人種といった社会的に弱い立場に属しているキャストたちは、窮地に立たされてもほぼ放置されるのに、白人男性であるクリスが矢面に立たされた時にだけ、マーベルの仲間たちが“アッセンブル”して守ろうとするのは、まさに「ダブルス・タンダード(二重基準)」(※)なのではないかと納得がいっていないというわけ。
※類似した状況において、対象とするものによって不公平に価値判断の基準を変えること。
クリスの場合は、平たく言えばネット上での“人気投票”を発端に、彼が傾倒するキリスト教系の教会に以前から同性愛嫌悪のウワサがあることや、多くのセレブたちが自分の影響力を活用して11月の大統領選挙に向けて政治参加を促しているのを尻目に、それを茶化すような行動に出たことがバッシングを受けているおもな理由。前述のキャストたちとは違い、MCU作品とはまったく関係のないところで炎上している。
クリスへの誹謗中傷は過剰であり、確かに目に余るものがあるが、MCUの仲間を守ろうと立ち上がるなら、個人的な理由で炎上した彼だけでなく、作品に直接関連のある理由で個人攻撃を受けた仲間たちも擁護すべきだという意見も聞こえる。
バイデン大統領候補を応援するイベントに参加
ちなみに、「共和党=トランプ大統領支持者なのではないか」ともウワサされるクリスを擁護するコメントを出したロバート、マーク、ゾーイは、11月の大統領選では、民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏に投票する意向を表明している。
彼らは、10月20日、ブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンやキャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンス、アントマン役のポール・ラッド、ウォーマシン役のドン・チードルとともに、『アベンジャーズ』シリーズでメガホンをとったルッソ兄弟企画によるZoomイベント『Voters Assemble(投票者よ、集結せよ)』に参加。
同イベントは、有権者たちに投票を呼びかけるとともに、ジョー・バイデン大統領候補の選挙活動を支援する資金を集める目的で開催されたもの。
How will I ever be able to top yesterday’s birthday?
— Kamala Harris (@KamalaHarris) October 21, 2020
A big thank you to @DonCheadle, @ChrisEvans, @MarkRuffalo, @RobertDowneyJr, @zoesaldana, @Russo_Brothers, Scarlett Johansson, Paul Rudd, and all of our grassroots supporters for making it so special. pic.twitter.com/NVuc6f8QY2
奇しくも民主党副大統領候補のカマラ・ハリス氏の56歳のバースデーと重なった『Voters Assemble』には、ハリス氏と夫で弁護士のダグラス・エムホフ氏も参加し、『アベンジャーズ』シリーズの大ファンだというハリス氏が、同シリーズ最強の敵サノスとトランプ大統領を重ね合わせる場面もあった。
そろって『Voters Assemble』に参加したロバートとマーク、ゾーイが、その数日前に勃発したクリスの炎上騒動にあえて口を挟んだ背景には、同イベントへの注目度をアップするという目的があったという可能性も考えられるが、果たして?
ちなみに誹謗中傷が殺到したことに関して、クリス本人は反応していないが、彼の妻でアーノルドシュワルツェネガーの長女のキャサリン・シュワルツェネッガーが「これって、今、本当に私たちに必要なこと?世界ではもっと大変なことがたくさん起きていて、人々がさまざまな苦しみを抱えているのに。誰かに意地悪をするなんて、時代遅れ。別に4人とも愛す余裕を持ったっていいじゃない。粗悪さやいじめよりも愛のほうがずっと必要。そっちのほうをやってみない?」と批判するコメントをしている。
(フロントロウ編集部)