Photo:ゲッティーイメージズ,スプラッシュ/アフロ,ニュースコム,Instagram
家族のカタチや在り方が多様化するなか、昨今、あらためて注目を集めているのが、血のつながりにとらわれず、子供を迎える「養子縁組制度」や「里親制度」。これらの制度に対してオープンな海外では、養子縁組で親になったセレブや、養子として迎えられたきょうだいを持つセレブ、そして、自分自身が養子として迎え入れられたというセレブもたくさんいる。(フロントロウ編集部)

里親となり、養子を迎え入れたセレブたち

 養子縁組で子供を迎えて親になり、育児に取り組んでいるセレブたちは意外にも多い。子どもがまだ赤ちゃんや幼い頃に引き取る場合もあれば、10代を超えてから、安心して暮らせる環境を提供するために、家族に迎えるというケースも。

ヒュー・ジャックマン

 映画『グレイテスト・ショーマン』や『X-MEN』シリーズのウルヴァリン役で知られるオーストラリア人俳優のヒュー・ジャックマンは、妻のデボラ・リー・ファーネスが2度の流産を経験し、自然に子供を授かることができないことがわかったため、養子縁組を決意。現在20歳の長男のオスカーと15歳の長女のアヴァをそれぞれ赤ちゃんの頃に養子として迎え入れた。

画像: ヒュー・ジャックマン

 オスカーもアヴァも有色人種の血を引くミックス。ヒューとデボラは、ミックスの子供たちがもっとも養子として引き取られにくいという当時の現状を認識したうえで、率先してミックスの子供を家族に迎えることを選択した。

 ヒューは、2011年に応じた豪Herald Sunとのインタビューで、「僕は、子供たちのことを“養子”だとは特別視していない。彼らは僕らの子供。デボラと僕は運命というものを信じている。なるべきようになったと思っている」と、自分たちにとっては、養子縁組で家族を育むことが運命だったと信じていると語っている。


シーア

 「シャンデリア(Chandelier)」などのヒット曲で知られる覆面シンガーのシーアは、2020年5月に、当時18歳だった少年2人を養子として迎え入れたことを公表。男の子たちは里親制度の年齢を越えてしまっていたため、シーアは、養子縁組をして、法的に彼ら家族として迎え入れる決断をした。

画像: シーア

 シーアが少年たちの母親になることを決めたのは、その前年に米HBOで放送されたドキュメンタリー番組『Foster(原題)』で特集されていた児童養護施設に住む、当時16歳だった現息子の生活ぶりを見て心を動かされたことがきっかけ。番組を観てすぐに動き出したシーアは、当初、この少年だけを引き取るつもりだったが、彼と一緒にグループホームで暮らしていた友人の少年も一緒に家族に迎え入れ、一気に2人のティーンエイジャーのシングルマザーとなった。

 今年7月には、19歳となった息子に赤ちゃんが2人誕生し、シーアは、なんと孫を持つおばあちゃんに! Apple Musicのラジオ番組でその事を明かした際には、“孫に何と呼んでもらおうかな”と期待に胸を膨らませていた。


デニス・オヘア

 人気ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』などへの出演で知られる俳優のデニス・オヘアは、夫で同じく俳優のヒューゴ・レッドウッドとの間に、養子縁組で迎え入れた息子のデクラン君がいる。

画像: ヒューゴ・レッドウッドとデニス・オヘア。

ヒューゴ・レッドウッドとデニス・オヘア。

 20年来のパートナーであるデニスとヒューゴは、デクラン君が生後2週間の頃に里親となり、一緒に暮らし始めたが、デクラン君が3歳になった頃、養子縁組の手続きを完了して正式にデクラン君の両親に。

 手続きには時間がかかったものの、デニスは、「デクランを抱きしめた時、僕は親になりました。彼は僕の息子です」と、2015年に米Tylenol社が行なったキャンペーン「#HowWeFamily」でコメント。愛情をたっぷりと受け、すくすくと育つデクラン君の成長記録をヒューゴとともにインスタグラムで公開したりしている。

 そのほかにも、有名どころでは、アフリカのマラウィ共和国から4人の養子を迎え入れたシンガーのマドンナや、実子のほかに3人の養子がいる元夫婦のアンジェリーナ・ジョリー&ブラッドピット、婚姻期間中に2人の養子を迎え入れた元夫妻のトム・クルーズ&ニコール・キッドマン、それぞれ養子縁組により迎えた2人の子供のシングルマザーであるサンドラ・ブロックやシャーリーズ・セロンなども、養親となることで家庭を築いたことで知られる。

画像: シングルマザーであり養親のセレブたち。左から:マドンナ、サンドラ・ブロック、シャーリーズ・セロン。

シングルマザーであり養親のセレブたち。左から:マドンナ、サンドラ・ブロック、シャーリーズ・セロン。

画像: 左:アンジェリーナ・ジョリー&ブラッド・ピット、右:トム・クルーズ&ニコール・キッドマン

左:アンジェリーナ・ジョリー&ブラッド・ピット、右:トム・クルーズ&ニコール・キッドマン


養子縁組で迎えられたきょうだいがいるセレブたち

 実子がいても、養子縁組をして家族の規模を拡大する家庭はある。親が養子縁組をしたことで、きょうだいができたセレブたちも。

ジャック・クエイド

 Amazonプライムビデオで配信中のドラマ『ザ・ボーイズ』でメインキャラクターの1人ヒューイ―・キャンベルを演じる俳優のジャック・クエイドは、映画『ニューヨークの恋人』のメグ・ライアンと映画『オーロラの彼方へ』のデニス・クエイドを両親にもつ2世セレブ。

画像: ジャック・クエイド

 メグとデニスは2001年に離婚したが、メグはその後、中国からデイジー・トゥルーと名づけた当時2歳だった女の子を養子に迎え入れ、ジャックには14歳の頃に妹ができた。

画像: ジャックの母メグ・ライアンと父のデニス・クエイド

ジャックの母メグ・ライアンと父のデニス・クエイド

 ジャックはデイジーに関して多くは語らないものの、インスタグラムでデイジーと一緒にハロウィンのトリック・オア・トリートに出かけたり、ディズニーランドに出かけたりと楽しそうに過ごす写真を公開したこともあり、年の離れたデイジーをとても可愛がっている様子。

2015年の母の日にメグが撮影したジャックとデイジーのきょうだいショット。

 メグは、デイジーを娘として迎えたことについて、2007年の米Red Bookとのインタビューで、「デイジーと家族になる事は偶然なんかじゃなかったなかったと信じてる。彼女は私が持つべき娘だった。誰かを救おうというつもりで決めた事じゃないし、私は、ただ、赤ちゃんが欲しくて、誰かと繋がりたかった。そんななかで、デイジーと私は(養子縁組という)この方法で出会ったというだけ。私たちは切っても切り離せない関係」と語っている。


キャサリン・ハイグル

 ドラマ『グレイズ・アナトミー』でブレイクした俳優のキャサリン・ハイグルには、両親が韓国から養子に迎えた3歳年上の姉メグがいる。

画像: キャサリン・ハイグル

 メグと一緒に育ったことをとても幸運に感じているキャサリンは、自分も「自分が生まれ育った家族と似た家族を作りたい」という思いから、2009年に姉の出身地と同じ韓国から夫でカントリーシンガーのジョシュ・ケリーとともに、ナーレイと名づけた女の子を養子に。

 さらに、その3年後にはアメリカ国内で生まれた養女アデレードを迎えた。その後、2016年には実子で長男のジョシュアが誕生し、6人家族となった。


養子として家族に加わったセレブたち

 家庭の事情により、生みの親のもとではなく、血のつながらない育ての親のもとで育ったセレブたちは、紹介しきれないほどたくさん。

 映画史に名を残す俳優のマリリン・モンローやApple社の共同創設者である故スティーブ・ジョブズ、アカデミー賞受賞俳優のフランシス・マクドーマンド、ミュージカル界の大スターであるクリスティン・チェノウェス、リアリティスター兼ファッションデザイナーのニコール・リッチー、ドラマ『glee/グリー』のジェナ・アウシュコウィッツ、グラミー賞受賞DJのスクリレックス、元NFL選手のコリン・キャパニックといった、様々な分野で成功を収めているセレブたちも、みんな養子としてのバックグラウンドを持つ。

画像: 上段左から:マリリン・モンロー、スティーブ・ジョブズ、フランシス・マクド―マンド、クリスティン・チェノウェス。下段左から:ニコール・リッチー、ジェナ・アシュコウィッツ、スクリレックス、コリン・キャパニック。

上段左から:マリリン・モンロー、スティーブ・ジョブズ、フランシス・マクド―マンド、クリスティン・チェノウェス。下段左から:ニコール・リッチー、ジェナ・アシュコウィッツ、スクリレックス、コリン・キャパニック。


養子縁組や里親制度で家族になれるのはセレブだけじゃない

 養子縁組や里親制度によって家庭を築く、もしくは家族を拡大するという選択肢は、決して、裕福な海外セレブだけに与えられた特権ではない。

画像1: 養子縁組や里親制度で家族になれるのはセレブだけじゃない

 日本でも、何らかの理由により、生みの親の元で育つことができない子供たちに家庭のあたたかさを知り、安心した環境で過ごしてもらうための制度は整っており、受け入れ側の事情に合わせて、さまざまな迎え入れ方がある。

<養育里親>
18歳未満の子どもを、家庭に戻るまでの間や自立するまでの間、養育。期間は1年以内の短期~それ以上の長期の場合も。

<養子縁組里親>
養子縁組を結ぶことを前提として子供を引き取り、縁組が成立するまでの間、里親として一緒に生活する。

<季節・週末里親>
週末や長期休暇などに、数日から1週間ほど子どもを養育。平日は子どもとの時間が取れない人や、最初から長期で養育するのが不安な人などに向いている。

【厚生労働省による令和2年度「里親月間」資料『広げよう里親の輪』より引用】

 さらに、正式に養育里親となった場合には、子どもを育てるために必要な生活費、教育費、医療費などが支給される(※1)ので、経済的な負担を理由に養子を迎えることを諦めなくてもよい。

 家庭の事情により、生みの親のもとで育つことができない子どもは日本全体で約4万5,000人。そのうち8割以上が乳児院や児童養護施設で生活を送っており、里親家庭やファミリーホーム(※2)で暮らす子どもは約2割の6,800人ほど(※3)

 欧米ではこの割合はほぼ逆で、7割が里親家庭で生活している(※4)ことと比べると、まだまだ低いが、その背景にある一因には、日本における里親制度の認知度の低さがある。

画像2: 養子縁組や里親制度で家族になれるのはセレブだけじゃない

 日本では、毎年10月が養子縁組や里親制度への関心を高め、知識を深める「里親月間」に指定されており、東京都では10月だけでなく、11月も「里親月間」。この機会に、里親や養子縁組制度について学んでみては。

※1:養子縁組里親、季節・週末里親は対象外。※2:子供の養育に必要な資格を持つ者の住宅で5~6人の子供を養育している施設 ※3:厚生労働省『広げよう里親の輪』からの引用データ。※4 日本財団ジャーナルによるデータ

(フロントロウ編集部)

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