『GoT』で話される架空の言語
その確立した世界観と映像、ストーリーから熱烈なファンを多く持つドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』では、その世界の中でだけ話される、現実には存在しない言語もある。
架空の言語であるドスラク語やヴァリリア語は、言語学者のデヴィッド・ピーターソンが作り出し、その言葉が話されるシーンの撮影の数ヵ月前から準備が必要。そして、その言葉を話すデナーリス・ターガリエンを演じたエミリア・クラークなどは、そこからさらに時間をかけて記憶していた。
エミリア・クラークに無茶ぶり
しかし、シーズン5の第5話では、ドラマのショーランナーであるデイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスから、ある無茶ぶりがあったという。ジェレミー・ポデスワ監督は米EWのインタビューで、「撮影を見ていたショーランナーの2人が来て、『このシーンはヴァリリア語だったら素晴らしいんじゃないかな?』って言ったんだ」と明かす。
そのシーンでは、当初エミリアのセリフは英語だったそう。それをいきなり、架空の言語に変換して、長セリフを言う…? さすがに無理なのではないかと感じる提案をされた監督は、とりあえずエミリアに相談。するとエミリアは快諾したうえに、なんと10分で準備を終わらせた!
「そういったことには通常ものすごく準備がかかるし、考えることも多いし、エミリアは(撮影シーンで)あの男を火にかける前に長いセリフがあった。僕はエミリアの元へ行って、『これは難しい頼みなのは分かってるんだけれど、これをヴァリリア語でやる方法を見つけ出せるかな?』って言ったら、彼女は『うん、分かった。たぶんできると思うよ』って。僕は『本当に?』って感じだったよ。そして彼女は席を外して、デナーリスがこれまでに言った言葉をまとめて、意味が通じるようにしたんだ。彼女は10分で戻ってきて、セリフが出来上がってた」
『GoT』監督も絶賛
言語学者がやっているようなことを自分でこなし、10分で準備を終え、撮影に臨んだエミリア。そのシーンは、監督の胸にも残っているよう。
「難題に挑戦して、見事な対応をしたエミリアには賛辞を送りたい。すべてのテイク、すべてのイントネーション、すべての彼女の表現法、彼女が言っていることは完璧に理解できた。字幕も彼女のしていることに対して正しくみえた。あの時には彼女はすでに言語を機能させられるほどよく知っていたんだよ。じつはあれはヴァリリア語を完璧に追っているわけではないんだ。でも誰も気づかなったでしょう。彼女は素晴らしいことをした」
ちなみに、この時は余裕しゃくしゃくで乗り越えたエミリアだけれど、最終章の名シーンである赤の王城レッド・キープで大軍を前にスピーチするシーンでは、さすがに撮影の前の日に緊張して眠れなかったことを明かしている。とはいえ、その時の撮影も1発OKという実力を発揮していた。(フロントロウ編集部)