感動の涙活映画『ブラック・ビューティー』
Disney+ (ディズニープラス)オリジナル映画『ブラック・ビューティー』は、イギリス人作家アンナ・シュウエルが1877年に発売して大ベストセラーとなった小説『黒馬物語』を原作とした映画。
映画の主人公である馬のブラック・ビューティー(声:ケイト・ウィンスレット)は、アメリカ西部の雄大な自然の中で暮らしていた野生馬。しかしある日、人間に捕らえられて家族と引き離されてしまう。野生にいるべきブラック・ビューティーは気性が荒く、人間のことは信用しない。そんな時に厩舎に、17歳の少女ジョー・グリーン(マッケンジー・フォイ)が現れる。厩舎を管理していたジョン・マンリー(イアン・グレン)の姪であるジョーは、ブラック・ビューティーと同じく、両親を失ったばかりだった。同じ傷を持つブラック・ビューティーとジョーは心を通わせるのだけれど、現実が両者を引き離す。しかしブラック・ビューティーが何人の主人を渡り歩いても、どれだけの年数が経っても、ジョーとの硬い絆が壊れることはない。その生涯を通して、ブラック・ビューティーは、喜び、悲しみ、裏切り、さらに愛の力を学ぶことになる。
原作である『黒馬物語』が発売された1870年代当時、馬は人間や荷物を運ぶ“道具”とされていた。その実情を変えたかったアンナ・シュウエルは、当時としては革新的だった、動物の視点から物語を伝えるという方法で小説を書き、これが大ベストセラーに。本の大ヒットのおかげで、欧米では動物愛護への関心が高まり、イギリスでは、馬の首に異常をきたす止め手綱の使用禁止に力を貸すなど、動物保護条例の制定に大きく影響したと言われている。
人々の考え方を変えるために革新的なストーリーテリングの方法を取り、思いやりや、相手の境遇への理解を説いたアンナ・シュウエルの小説は、いつの時代にも読む者をインスパイアする名作として愛されており、欧米では幼い頃に読む1冊として知られている。
そんな幸せなメッセージや背景がつまった映画『ブラック・ビューティー』は、12月18日よりディズニープラスで配信される。ぜひ、年末の涙活映画としておすすめしたい。
アシュリー・エイビス監督にインタビュー
1800年代の名作を2020年の視聴者に伝えるために脚本・演出でこだわった所はありますか?
原作者のアンナ・シュウエルは当時の馬たちの扱いに心を痛め、思いやりや愛を持って馬を見てもらおうとしました。彼女の意思を現代に引き継ぐために、映画では、現代のアメリカ西部に生息する野生の馬たちが置かれている問題にスポットライトを当てるべく、ブラック・ビューティーはマスタング(※)という設定にしました。さらに原作では、ブラック・ビューティーは雄馬でジョー・グリーンは少年でしたが、映画ではそれぞれ女性です。女性をメインにした作品が多く出てきている現代においてもしっくりきましたし、女の子と雌馬の絆にはパワーがあると感じました。
※マスタング:スペインの兵士がアメリカに連れてきた小型のアラビア馬が野生化したもの。
ケイト・ウィンスレットをブラック・ビューティーの声に起用した理由を教えてください。
ケイトの映画を見て育った私としては、彼女の声には、彼女の知性、深み、強さ、人間性が表れているとずっと思っていたんです。だから脚本を書いていた時に頭の中で聞こえていたのは彼女の声だった。1ページの手紙に作品にかける私の情熱を書いて彼女に送ったんですが、そのオファーを承諾してもらえた日は、天にも登る気持ちでしたね。ケイトの声は制作の最終段階で収録したから、それまでは、ケイトの声色に似た代役や私自身の声を使って制作を進めました。ご想像のとおり、私がやったものはひどかったですよ(笑)。ケイトの声がブラック・ビューティーに吹き込まれた時には、まさにぴったりハマる感覚があり、彼女以上にふさわしい人はいなかったと思います。
ジョー・グリーン役には『インターステラー』などで知られるマッケンジー・フォイを起用されましたね?
ジョー役はトリッキーなところがあったんです。というのも、物語の始まりではジョーは17歳ですが、その後、ブラック・ビューティーと離ればなれになってしまい、再会した頃には20代半ばになっているのですから。人としてぐっと成長する多感な時期ですが、別の役者を起用するほど年齢は離れていない。だから、10代のジョーと20代のジョーを演じ分けられる俳優でなくてはいけなかった。そんななかマッケンジーの映画を見た時に、この映画のプロデューサーでもある夫に「この子!この子がジョーだよ!」って言ったんです。その後、小さなカフェでマッケンジーと彼女の母親とミーティングをして、映画や原作の意味について語り合い、マッケンジーもぜひ出演したいと言ってくれました。
原作の言葉の中で、映画の制作に強く影響した一節はありますか?
“It is good people who make good places(良い環境を作り出すのは良い人間である)”という一節が小説にあるんですが、これこそ、この作品を体現しているメッセージだと思って映画にも使いました。時代や国など関係なく共感できる、ユニバーサルなメッセージだと思っています。
映画の撮影をきっかけに野生馬を支援する団体を設立して、馬を保護馬として迎え入れたと聞きましたがその経緯を聞かせていただけますか?
この映画のリサーチをしているなかで、アメリカの野生馬が直面している問題を知ったのです。アメリカ西部には8万頭以上の野生馬が生息しているのですが、公有地をめぐる闘いのせいで捕らえられたり土地を追われたりしています。捕らわれた馬たちの中には、日除けも無いような場所にずっと置き去りにされる馬もいます。(馬を土地から追い払うために)ヘリコプターを低空飛行させてひどい時には何キロにもわたって馬を追う行為は肉体的にも精神的にも馬を追い詰めます。元々乗馬を愛していた私としては、馬たちが置かれている状況を改善するために、The Wild Beauty Foundationを設立しました。現時点で、20頭の馬を保護しています。『ブラック・ビューティー』からは、ジョー役のマッケンジー(・フォイ)とジョン役のイアン(・グレン)がアンバサダーに就任してくれました。私たちは、エンターテイメントや、ワークショップなどを通して、教育、レスキュー、保護をしていきたいと思っています。残酷さや政治を押し出すのではなく、ポジティブなアプローチを取りたいのです。馬への思いやりを持ってもらえる『ブラック・ビューティー』のような作品を通してね。
原作の発売から150年近く経った現代にも、原作が動物愛護運動につながっているなんて素晴らしい話ですね。
本当にそう。著者のアンナ・シュウエルもこの映画を、きっと誇りに思ってくれていると信じています。日本の皆さんにもぜひ、この優しさの物語を見て頂けたらと思っています。
<作品情報>
映画『ブラック・ビューティー』
Disney+ (ディズニープラス)独占配信
12月18日配信スタート
(フロントロウ編集部)