欧米でアジア系を標的にしたヘイトクライムが急増していることをうけて、多くのセレブや企業が人種差別反対を訴えている。(フロントロウ編集部)

コロナ禍でアジア系に対する「ヘイト犯罪」が増加

 全世界で250万人超が亡くなっている新型コロナウイルスの最初の感染者が確認されたのが中国だたったことが原因で、1年前ほど前からアメリカをはじめとする欧米諸国でアジア系を標的にした嫌がらせや暴行事件などのヘイトクライムが急増している。

 コロナ前から人種差別や外国人嫌悪(ゼノフォビア)の問題は存在したが、コロナ禍でアジア系の人々にあからさまに敵意を示したり、暴力行為に及んだりする輩が目立つように。アジア及び太平洋諸島系を標的にしたヘイト犯罪の撲滅を目指す市民活動団体Stop AAPI Hateによると、昨年3月から12月のあいだに、アメリカ国内とカナダのブリティッシュコロンビア州で報告があったアジア系に対するヘイト行為の件数は2,800件超に上るという。

画像: コロナ禍でアジア系に対する「ヘイト犯罪」が増加

  最近では高齢者を狙った卑劣な犯行も増えており、今年1月、サンフランシスコ市内を歩いていたタイ出身の84歳の男性が19歳の少年に襲われ、数日後に亡くなるという痛ましい事件があった。同様の事件は全米各地で発生していて、「外に出るのが怖い」と口にする人もいるほどだ。また、アメリカだけでなく、フランスなどのヨーロッパの国々でもアジア系に対する差別も増加傾向にあり、差別行為や攻撃を促す内容の投稿がSNS上で拡散されていることが問題になったこともある。

セレブや企業が続々と声をあげる

 アジア系に対する人種差別やヘイトクライムは、欧米ではニュースとして取り上げられる機会も少ないことから、昨年から今年にかけて多くのセレブや企業がSNSなどを通じて、もっとこの問題に目を向けるよう声をあげている。

カーディ・B

 「みんなに言っておきたいことがある。外国人嫌悪はやめよう。くだらないジョークを言うのもダメ。誰かにクレイジーな怒りを抱くのはやめよう。アジア系の人たちがやられるのをたくさん見た。人生のこの瞬間に一度でいいからみんなひとつの人種になろう。だって、最終的に神の目から見たらみんな同じなんだから」


マーク・ラファロ

 新型コロナウイルスを「チャイナウイルス(中国ウイルス)」と呼んだドナルド・トランプ元米大統領に対して、「ウイルスをある特定の人種のせいにすると、(その人種の人たちに対する)敵対心を煽ることになる。非科学的な政治的発言をすることによって、信奉者のなかから暴力的な行動に出る者も出てくる。排除的で外国人嫌いの人が出てくる。もっとうまくやれよ」


ラナ・コンドル

 「あなた(トランプ元米大統領)の人種差別的な言動がアジア系アメリカ人コミュニティにどのような影響を与えているのか、あなたはまったく理解していない。あなたは私たちのコミュニティを危険にさらしていることを、理解することさえできない。(中略)私たちは家を出ることを恐れない。あなたの外国人嫌悪のせいで誰かが暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることを恐れて、家から出るのを躊躇したりしない」


ベラ・ハディッド

 「まじで泣きたい。これは私が今まで見たなかで最も心をかき乱す動画だった。この動画が示しているのは、新型コロナに感染もしていないし、それが蔓延した責任を負う必要もない人たちが直面している現実。差別以外のなにものでもない。自分を戒めなさい。これはめちゃくちゃ。この男性に会ってハグをしたい。本当に最悪」

画像: ©︎Bella Hadid/Instagram

©︎Bella Hadid/Instagram


クリッシー・テイゲン

 「知ってる人も多いと思うけど、新型コロナウイルスが流行して以降、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライムが急激に増えている。余談だけど、あのクソ野郎が『チャイナウイルス(中国ウイルス)』と呼んだことがその一因」


オリヴィア・マン

 「アジア系に対するヘイトクライムが増加したことを受けて、私はこの数日間、言葉を失っていました。人種差別主義者たちや、言葉や身体的な暴力によって、私たちのコミュニティは外へ出ることが恐ろしくなってしまっているのです。これらのヘイトクライムはコロナ以降に増加したもので、私たちが助けを求めているのに、仲間のアメリカ人たちに私たちのために怒りを抱いて欲しいと求めているのに、メインストリームのメディアに対して取り上げてほしいと求めているのに、今も増加し続けています。(中略)この国では、マイノリティとして存在しているだけで、何かに反抗しているように見られてしまいます。私たちは、それを終わらせるための支援を必要としています。私たちはこの国で安全を感じるための支援を必要としています。私たちはこの国で無事でいられるための支援を必要としています」


ジェンマ・チャン

 「アジア系に対するヘイトをやめよう。一緒に声をあげてくれたみなさん、ありがとう。たとえニュースに無視されても、何かを目撃したら決して黙殺しないで。あらゆる形態の人種差別に反対するために団結しましょう」


オークワフィナ

 「旧正月は私のお気に入りの祝日だったけど、今年の旧正月は違う。最近のアジア系アメリカ人コミュニティや年長者に対する一連の攻撃に、私は悲しみと不安を感じ、打ちのめされている。丑年である今年、私は社会的及び人種的正義のために素晴らしい仕事をしているいくつかの組織に、この赤い封筒を贈ります。今は分裂よりも団結のために戦う時。憎しみよりも共感と理解を」

 セレブだけでなく、ナイキ(Nike)をはじめとする有名ブランドや、ESPNやHBOといった大手ケーブルテレビ放送局のあいだでも支援の輪が広がっている。

ナイキ

 「私たちの心はアジアのコミュニティとともにあります。私たちは、より包括的な未来を創造するために、パートナーと一体となって立ち上がります」


コンバース

 「私たちのなかのひとりに対する憎しみは、私たち全員に対する憎しみです。私たちはアジアのコミュニティやチームメイトと一体となって立ち上がります」


HBO

 「私たちの物語は、多様な声と視点がなければ存在しません。私たちは、最近増加しているアジア系を標的にしたヘイトクライムと、すべての人種差別主義者の行為を非難するために、AAPIコミュニティと一緒に立ち上がります」

 また、昨年アメリカを中心に、黒人に対する人種差別撤廃を訴える抗議運動「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命にも価値がある)」 (以下BLL)が活発化したことが記憶に新しいが、およそ半世紀前に黒人への差別の撤廃を訴える公民権運動を率いた、キング牧師の名で知られるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの末娘であるベニース・キングも、「憎しみは人を傷つけます。人種差別は人を傷つけます。私たちは、どのような形であれ暴力を誘うような慣行、レトリック、政策を避けなければなりません。多くの人がヘイトを見て見ぬふりをしたがために、米国で高まっている非人道性と不公平に直面するアジアの人々とともに私は立ち上がる」とツイートしている。

(フロントロウ編集部)

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