Netflix作品がみごと圧勝!
新型コロナウイルス感染拡大によるパンデミックによりリモートで開催となった2021年のゴールデン・グローブ賞では、配信作品が大きな勝利を掴んだ。
特にNetflixは映画とドラマで42ものノミネートを記録し、その中で12部門を受賞。昨年は32ノミネートのうち2部門しか受賞しなかったことを考えると、大きな飛躍となった。なかでも最も受賞が多かったのは、ドラマ『ザ・クラウン』で4部門。
しかし、アワードで最多の6ノミネートとなったゲイリー・オールドマン主演のNetflix映画『Mank/マンク』は惜しくも受賞を逃し、それに続く5ノミネートの『シカゴ7裁判』は脚本賞のみの受賞に。
『ノマドランド』が受賞!女性監督作品が健闘
今年のドラマ部門の監督賞、作品賞では女性監督の作品が健闘。なんと、3人の女性が監督賞にノミネートされ、2つの女性監督作品がノミネートされた史上初の年となった。
見事栄冠に輝いたのは、クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』。ジャオ監督はアジア人女性として初めてドラマ部門の監督賞を受賞しただけでなく、78回目となるゴールデン・グローブ史上初めてドラマ部門の作品賞を受賞した女性監督に。
ちなみに2020年のゴールデン・グローブ賞では、監督賞のみならず、ドラマ部門やミュージカル/コメディ部門といった主要部門で女性監督の作品はノミネートなし。全体でも3部門のみのノミネートとなり強い批判を集めていた。
ちなみにゴールデン・グローブ賞78年の歴史の中で、監督賞にノミネートされた女性監督は5人で、作品賞にノミネートされた女性監督作品はたった7作品。そのなかで監督賞とミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞したのは1983年に公開されたバーブラ・ストライサンド監督の映画『愛のイエントル』のみとなっており、ゴールデン・グローブ賞のなかでも目玉となるドラマ部門で作品賞を受賞したのは、ジャオ監督が初めて。
人種的には多様性に富んだ受賞傾向
第78回ゴールデン・グローブ賞では、2021年の注目作品として、全ての主要な演技部門・監督賞でノミネートが期待されていたジョン・デヴィッド・ワシントンとゼンデイヤ主演の『マルコム&マリー』やスパイク・リー監督の『ザ・ファイブ・ブラッズ』、ロンドンに住む黒人女性がレイプを受けたトラウマに苦しむ姿を克明に描くドラマ『I May Destroy You』が一切ノミネートを受けなかったため、選考がおかしいという声が少なくなかった。じつは、これまで黒人が主人公を演じた作品が作品賞にノミネートされたことは一度もない。
一方で、映画部門の受賞結果だけを見ると、多様性に富んだ受賞傾向にあった。
アジア系女性として初の監督賞に輝いたクロエ・ジャオ監督以外にも、「ブルースの母」と称される実在の歌手マ・レイニーと彼女を取り巻く人々を描いた映画『マ・レイニーのブラックボトム』からは故チャドウィック・ボーズマンがドラマ部門主演男優賞に、伝説のR&Bシンガー、ビリー・ホリデイの人生を描いた『ユナイテッド・ステーツ vs ビリー・ホリデイ』のアンドラ・デイがドラマ部門主演女優賞に、1980年代のアメリカ南部の韓国人移民一家を描いた『ミナリ』が外国語映画賞に、ブラックパンサー党を描いた映画『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』からはダニエル・カルーヤがドラマ部門の助演男優賞に選ばれた。
また、ドラマ部門ではドラマ『クイーンズ・ギャンビット』よりラテン系にルーツを持つアニャ・テイラー=ジョイが主演女優賞を受賞。
しかし、LGBTQ+関連の作品からは映画『これからの人生』の主題歌「Io Si(Seen)」が選ばれただけで、演技賞や作品、監督賞からは受賞ゼロだった。
偏りのある体質への疑問
第78回ゴールデン・グローブ賞では、主催団体HFPAに接待疑惑や多様性の低さといった問題が浮上。『エミリー、パリへ行く』入選の裏で「接待疑惑」が発覚したり、選考を行うはずの会員87名の中に、1人も黒人がいないことが話題になったりと、根本的な体質を省みるべき案件が発生した。
授賞式では、司会者のティナ・フェイとエイミー・ポーラーがこの問題にオープニングから「多くの黒人俳優や黒人によるプロジェクトが(ノミネートで)無視されました」と言及。 「アワードというものがバカげているのはみんなが思っていることです」と語って笑いを誘いつつ、「それを変えなくてはいけません」というポジティブなメッセージも発信した。
(フロントロウ編集部)